感想 伊藤勢 『陰陽頭賀茂保憲』

陰陽頭 賀茂保憲 (怪COMIC)

陰陽頭 賀茂保憲 (怪COMIC)

 大体の内容。「陰陽師賀茂保憲の中活躍!」。なんで大活躍じゃないのかと言うと、内容的に活躍してる場面があるにはあるけど、これ大活躍って言うと実際に動いた人達に悪いかなあ、という配慮が働いた為です。でも、一応活躍はしてますよ? という事で玉虫色に決着として中活躍と致しました。
 さておき。
 賀茂保憲についてほぼ全くノー理解で、伊藤勢漫画だからこの漫画に手を出す、というある意味ミーハー買いで手にした漫画でしたが、この漫画を見て賀茂保憲について分かった気になったらあかん、というのは火を見るよりも確定的に明らかであります。というか、ド最初の方が古語で解説入るから、普通の歴史物ノリでもしてるのか、伊藤勢漫画らしからぬな! と思ってたのにその後いきなりいつも以上に伊藤勢ノリ*1全開するもんでで軽く噴出するものがありました。一話目からエキノコックスとか言い出してる時点で、この漫画がどういうものか、という理解は容易いかと思います。というか、いいのかこの賀茂保憲解釈。というかいいのかこの平安時代。もう、伊藤勢世界の平安時代、ハイ平安時代という解釈した方が、いっそ通りがいいとさえ言える、そんな無茶さ。でも、そこまで振り切れているがゆえにいっそ清清しい物すら感じる。そんな漫画です。
 その味わいが最大限になるのは前後編に分かれた牛鬼編。牛鬼の正体とそこから導き出される解答も無茶だったり、ハイ平安時代としての陰陽寮が立ち上がったりした回で、迫り来る敵を、撃てよ撃てよ撃てよ!とばかりに大ボウガンからの怨念電気を牛鬼にぶっこむ辺りは無茶苦茶ながらだがそれがいい、という達観すら得られる一大無茶苦茶でした。怨念も牛鬼もあるんだよ! という当然のしゃっ面ぷりが凄いと言うか、そうされても特に違和感を覚えないまでにこの漫画読み進めて&伝奇に触れている自分のリテラシーが変と言うか。でも、こういう無茶さにも裏打ちみたいな物もあって、古文部分もしっかりしてるし、装飾町並みも理想的。でも、そこを立ててるから崩すんだよねえ! という塩梅。エキノコックスとかモスラっぽいのとか、そういう超怪異としての自然現象というのがあった、という時代なのかもなあと思わされます。うん、勘違い日本。だが、それがいい
 総じて、伊藤勢漫画として高らかな存在ではないかと思われますが、そうでなくても無理筋理解の伊藤勢味付けである平安時代賀茂保憲、というのを味わうのにもまた、いい塩梅ではなかろうかと思いました。まあ、地がしっかりしてるくせに無茶苦茶ですけどね!

*1:マジ顔しつつ身も蓋も無い事して場を荒らす。