感想 久正人 『エリア51 4』

エリア51 4 (BUNCH COMICS)

エリア51 4 (BUNCH COMICS)

 大体の内容。「マッコイの宿敵登場!?」。今回は話としては3巻の脱獄話の続きと、本当は面倒臭いグリム童話の二本立てといえましょう。一応、クラーケン小話もありますが。とりあえず一つずつ見ていきましょう。
 前半二話はマッコイの宿敵となろう最初の蛇の登場回。帯にある十神会議が語るその出自の不明さとそれが出した被害、そしてマッコイを追い詰める呪言の恐ろしさが合わさって、大変気味の悪い敵としてキャラ立ちしてくれたと思います。最初の蛇、というので恐らく創世記絡みの、つまりアダムとイブに知恵の林檎を食べさせた蛇ではなかろうかと思われますが、十神会議の面々を見ると、どうにもエリア51にはキリスト教の神、天使などは居ない模様で、その辺が今後どういう展開になっていくのか、を地味に表しているように思われます。取り込み、または駆逐した神という事なのかなあ。とか、ゆえにエリア51に色んな者達が閉じ込められてるのかなあ、とか。
 この回の展開で、マッコイは本人居ない所で非常に微妙な立場に立たされるんですが、しかしそれを打ち破ったのは最初の蛇の呪言を退ける程の憎しみ、怒りの感情であったというのがなんともマッポーカリプス。あるいはハードボイルド。そこまでのものがある、という理由が今回きっちりと描かれたので、その怒りは妥当、いや正当なものであります。そこまでされて怒りが、憎しみが生まれないはずがない。そんな当然の権利を、マッコイが持っているのが分かって、良かったというと違うんですが、でも、知らないわけにはいかない事なので、それはしっかり受け止めたい所です。
 さておき。
 後半二話はちょっと色合いが違う童話混在話。そういう奴らも、この世界の範疇なんだな、と思うと中々面白いというか。まあ、都市伝説も妖怪も居るんだから、童話の住人がいるのもおかしくはないですけれども。
 で、今回のベースである『白雪姫』の実際の事情、がかなり酷いものが。グリム童話成立の頃から今まで、戦い続けているという超設定。ナンデ!? 戦闘継続中ナンデ!? 童話では終わってるのにナンデ!? というのが、グリムがずっーと続いてるのに耐えられなかったから、だから酷い。そんな捏造ありか。しかし、その捏造分をコメディタッチにしつつ、久せんせがきっちり日本の人魚伝説、浦島太郎などを絡めて二つの悲恋として描ききるという亜空の展開にしてくるんだからたまりません。何これ……、いい話過ぎる……。
 そんないい話が終わって描き下ろしが酷い。久せんせが描く萌え絵、というのが意外といけるけど、これ単に自分が久正人絵好きなだけだろうなあ。そんな想いに囚われたり。いや、でも可愛いだろあれ! 本体があれだけど。あれだからなあ。あれなんだよなあ。
 とかなんとか。