感想 渡辺伊織 『ギンダラとキンメダイ』1巻

ギンダラとキンメダイ 1 (バンブーコミックス)

ギンダラとキンメダイ 1 (バンブーコミックス)

 大体の内容「古沢姉妹は仲良しで あまり似ていない」。学業運動ルックス人気と天から二物三物を与えられた姉、百萌。それらについては地味な能力しかない妹、菜々葉。そんな二人の健やかな日常。それが、『ギンダラとキンメダイ』なのです!
 この漫画、基本的に大変オードソックス。派手と地味の対比と実情、そしてその関係性を軸に二人の日常生活が続くのですが、それゆえに二人のキャラ立ちという物が重要になってくるものですが、その点においては大変滋味な漫画です。派手に変な性格とか、変な行動があるわけではなく、あくまで性格の違い、スペックの違い、生活態度の違いだけで勝負するという滋味さ。これがこの漫画の良い点として屹立しております。そういう意味では、初手で言いましたがオーソドックス、ではあるんですが、その描き方が素晴らしいんですね。家事以外はオールラウンダーな姉、家事以外はロースペックな妹、だから仲良しで、だから家庭では妹の方が存在感が強い。その対比で勝負してるんですよ。非常に基本的といえるのに、非常に奥床しい味わい。それがこの漫画の強みであります。その強みが強すぎて読んだ後でもあるんですが、菜々葉の方が姉だったっけ? みたいな気持ちになったりもします。それだけ力関係がしっかり分かる辺りがいいですね。まあ、滋味ですが地味なのは仕方ないですけども、それゆえに読み甲斐があるというか、某井の頭五郎めいて言うと「うん、これこれ!」とか「こういうのでいいんだ、こういうので」とか言える漫画です。オーソドックスでもしっかりとキャラを描くというのが出来ているからこその、「うん、これこれ!」であるのでしょうか。みんな違ってみんな良い。お互いに弱点を補ったり損なったりするのもまた、姉妹だから。そんな感じ。
 さておき。
 基本的に姉妹が普通に生活するだけという側面に、たまにぶっこまれるのが幼馴染トータ。菜々葉さんに惚れているという分かりやすい恋のキーマンですが、菜々葉さんは恋に対して理想がおかしくなっているので、トータが百萌の事を、と思っている節すらあり、そのせいで今後も付き合うけど、自分と付き合うとは全く思っていないせいで、トータに対する当たり方が大変ぞんざいだったりします。しかもトータが基本ツンデレのセオリーを貫くせいで更に気持ちは空回り、いい加減ちゃんと言った方が良いぞトータ! と思わせてくれます。その上、登場する場面も姉妹のそれに比べれば当然少ないので、尚更短いチャンスを生かせ、生かすんだ! という読者側の贔屓目が発動したりも。いいなあ、このどうしようもない関係性。こういう所も、この漫画の良さと言えると思います。でもホント、トータはいい目にあって欲しい。ついでに菜々葉さんもいい目にあって欲しい。そういう思いに囚われるものがあります。みんな良い子でみんないい。とかなんとか。