感想 みなぎ得一『√3=(ひとなみにおごれやおなご)』1巻

√3=(ひとなみにおごれやおなご)(1) (ダンガンコミックス)

√3=(ひとなみにおごれやおなご)(1) (ダンガンコミックス)

 大体の内容。「こっくりさんから始まる都市伝説。(帯より抜粋)」帯の言葉マジしっかりした内容要約。それと表紙絵でこの娘っこ達が関わるのか、まで挟んで見事なジョブです。ついでに背表紙の内容紹介も混ぜればパーフェクト。表紙装丁の、特に枠線の処理なども上手くて、更にカバー下の小ネタもちゃんとあるし、マジ惚れ惚れしますね……。という本の外見からみなぎ得一ファンにしたら既に満足度が高まる漫画、それが『√3=(ひとなみにおごれやおなご)』1巻なのです!
 という訳で、大まかな内容紹介については本屋で裏表紙、見てください!とシャクティ声出す感じでスルーしまして、この漫画について一端のにわかみなぎ得一ファンの言を垂れ流したいと思いますが、みなぎ得一作品世界の応用範囲の広さというのは異常であります。元々『足洗邸の住人たち。』でもバトルから日常話の振れ幅は大きかったですが、そちらとは『√3』は少々毛色が違う形で、女子学生(狐狸の類)が都市伝説を追う! というイマドキらしい内容にまで幅利かせております。その辺の、都市伝説や七不思議に対してのみなぎ得一特有の知識と妄想のない交ぜになった好き放題はいつも通りですが、あまりに濃度面、範囲面で強度なので、初めての人はわりと面食らうんじゃないか、とも思ったりも。話す内容も結構長ったらしいからなあ。しかし、その辺は孤狗理三人娘の一人、保由さんが知識担当としてつらつら喋るので、保由さんがやたら喋る=詳しい解説という理解をある程度持って臨めばある程度話半分に出来ますし、内容に直結する辺りはちゃんと短くまとまっているのでそこを重視すればOK。慣れてきたら長ったらしい部分を読んでみなぎ得一特有の知識と妄想(略)を楽しむようにするといいでしょう。
 このみなぎ得一特有(略)、というのはなかなか面白いんですよ。人の生きる世界と違う、ぼやけて怪しくてゆえに薫り高い世界としての狐狸妖怪や都市伝説、つまり<魔>の物達の話というのが、みなぎ作品と言えますが、それが知識と妄想がごっちゃ混ぜになって成り立っているのが特徴なんです。あれがこうだからこのような事になるかもしれないいやそうだそうしよう、って感じの増幅、あるいは大増幅で、あれやこれやと知識を妄想でデコっていく、あるいは妄想を知識でコラージュしていく感覚とでも言いましょうか。この巻だと一話目の夜の種族に対する談義などが特に如実にこの漫画の在り方を発していますので、読んでみてこういうのかー、と思っていただきたい。それで、これが妄想に傾き過ぎると内藤泰弘血界戦線』に、知識に傾き過ぎると久正人エリア51』に、それぞれ成ると考える事も可能だったり。その丁度中間という魔空空間こそ、この漫画、及びみなぎ得一漫画の神妙なる立ち位置であります。その為、妄想や知識のどちらかならそうだと分かるけど、どっちでもない、あるいはどっちもある、というのが非常に強い癖として立ち上がっているんですけれども。この辺を乗り切れるとみなぎ得一漫画は大変けれん味の効いた物として楽しめると思います。その入門としては、この巻では1話完結やら2話完結しかないですし、すっきりと軽くだけどしっかりみなぎ作品としてまとまっている本作は向いているかと。まだ手に入りやすいですし、Web連載だからぱっと見るのも楽ですしね!
 とかなんとか。