感想 ÖYSTER 『超可動ガール1/6』1巻

 大体の内容。「フィギュアが動くよ! やったね房伊田さん!」。そんな動くフィギュアと仲良くなったり婚姻届を突きつけられたりする漫画。それが『超可動ガール1/6』なのです! 婚姻届は一足飛び過ぎる気がしますが、そうは言ってもそうなったらどういう事するのか、という実感、感覚がそのフィギュアであるノーナさんの基底には無いらしい、作品世界の基底に影響されているというのと、そもそも婚姻届を持っていたのは房伊田さんが「この娘は俺の嫁!」状態にまで盛り上がった過去があったからなので、フィギュアがいきなりそういう事やりだしてアイエエエエ!?って事ではありません。でも、徐々に現実世界に馴染むぞ! していっているノーナさんなので、いつかえろい事OKになったりするんだろうか、と思うと、ÖYSTER漫画にしてはエロがあるものの、微エロ、お色気としての多目の成分となっているので、たぶんそんなに期待するのはいけないよ? とは理解しておくと宜しいかと思います。でも、何にも知らないフィギュア娘にエロい事を、って考えるだけで! ←考えるな馬鹿
 さておき。
 この漫画の導入は基本的に4話使ってという贅沢さが売りですが(誤解)、その一話一話も十分にまとまっており、どこかの漫画の受け売りで言うなら、面白い漫画はね、一話目で決まるのよ! というのがちゃんと成立する漫画として存在しております。一話目の完成度としては、この娘のフィギュアが動くんだよ! というのとメインはこのフィギュア娘だよ! というのとちょっとエロ混ぜるよ! というのと房伊田さんはかなりのオタだよ! という基本の部分はしっかり提示されています。その上でいきなりフィギュアが動いたせいで起きるバタバタ感は見事。そのまま2話目にスムーズにシームレスに移行した辺りも、あれ、これ一話こんなに長いの? と思ったくらいなので意外とやる人なんだなあ、と、最近になってÖYSTERてんてーを知って『男爵校長』シリーズとか『光の大社員』シリーズ読み始めたニュービーには大変教えられる物がありました。
 そこから一旦はノーナさんの設定に合わせていた房伊田さんのいい人っぷりが見られた、かと思ったら結局バレる展開に。ノーナさんの設定的な世界の話ではなく、やっぱりノーナさんが動くのはおかしい、フィギュアじゃん! というのに着陸したのがやたら感心しました。あのまま設定的な話を重視していくのかと思ってたので、不意打ち感がぱない。それはそうで、それだとノーナさん達が動く理由が結局超常現象としかいいようが無い。ノーナさんが勝手に動くなら、超常現象って言うしかないじゃない! とミズハスボイスで再生される事態です。それの方が良く分からない展開になるというのに、むしろ良く分からない展開をカモン!するÖYSTERてんてーの正気じゃなさが素晴らしい。そっちの方が、色々できるじゃない! という考えなのは、その後の展開で理解させられるんですが、それでも安牌な方向に向かわなかったのは凄いとしか言いようが無い。出来ておる喃……。
 さておき。
 ストーリー面は更に色々と含み、広がりを見せつつも、基本は房伊田さんがSOHOしてるのと、ノーナさんを周りに見せるわけにはいかないのとが噛みあって、お家でバタバタ感満載なのがこの漫画。大きな話というのにはなりそうもない雰囲気です。それがまたいいんですよ。この素晴らしいせせこましさ! と膝を打つ感じ。無理に広げる必要が無いと理解されて宜しいと思います。狭いからこそ出来る事があるんですよ! という事でしょうか。ちょっとせせこましい過ぎる感じもありますが、今後はどうなっても狭い感じは維持して欲しいとか思ってしまいます。欲張りですね?
 キャラ的な話をすると、ノーナさんが健気可愛いというのも、ミコトさんが普通に可愛いというのも、ベルノアさんが不憫可愛いというのもありますが、そこは見てれば楽しめるので皆買って見ればいいんですよと省きます。それより冠さんですよ。房伊田さんと同値のオタである冠さんですよ。
 房伊田さんがオタの正の面とすると、冠さんは負の面。本当は全部そうだとは言い切れない、どちらもオタとしての業のある感じではありますが、とにかくそういう分け方が出来る二人ですが、それだけに冠さんの台詞は中々舌鋒鋭い感じ。ノーナさんの出ていた作品を大disりする辺りは本当に最高潮でした。言い切っちゃうのか! って感じで、disなんですが胸がすくような部分もあったりしました。その分、房伊田さんの正の面が強く出る形になっているのも、グッド。対比するキャラとして良く見れる感じです。しかも、何やら意味ありげな部分もあり、その分余計に今後も出てきてくれるキャラになるのだな、と思うと、彼の舌鋒をまた聞けるかも、というのは嬉しいですね。そこまでこの漫画が維持されるかどうか不明ですが。出来れば、満足出来る部分まで続いて欲しい所です。どういう漫画として、続いていくのかは全く不明瞭ですが。超常現象の理屈が解明される日とか来るのかしらねえ。