好きな漫画の語り部 第5回 肉丸『ばっどがーる』

ばっどがーる 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

この項について

 好きな漫画について語ることの何がいけないって言うんだ! というテンションだけで漫画語りする項となっております。好きな漫画があるなら言及するのはオタのサガフロンティアですからね。好きな漫画を読む人が増えていく一助になれれば、これほど嬉しいことはない。話の合う相手も増える。勝ち、そして勝つ。
 という感じで、今回も好き漫画を語っていきます。
 今回は、今後の伸び代は確実に有る! んだけど、まだきららオタ以外で広まりが狭えな? 羞恥じゃねえ周知が必要だな? という、きららの実はかなりの優秀な逸品、肉丸『ばっとがーる』について、語ってまいりたいと思います。

『ばっとがーる』とは

 優谷優さんは私立藤ケ崎高校に通う一年生女子。長らくいい子ちゃんをしてきた彼女ですが、憧れの先輩、水鳥亜鳥さんにかまって欲しい、という理由で不良なることを決意。今のままじゃあ、単なる路傍の石! 尖らねば! という理屈です。
 で、尖ってみたものの生来のいい子ゆえに、ファッション不良ではなくがばがば不良という、不良の基本の意味の方になる状態になってしまいます。
 しかし、それが亜鳥さんの琴線に触れたッ! のか、亜鳥さんにかまってもらえるようになります。
 このままストレートにいい仲になるのか? などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。
 というのも亜鳥さんがちょっとおかしいのです。なんで仲良くなる為に犬耳と首輪持ってくるんですか? というある意味事案力を発揮してくるのです。

水鳥亜鳥の磁場

 そんな感じで亜鳥さんは結構変な人なんですが、基本的には善人で、風紀委員長もしている、そっち方面では品行方正といえる存在です。その亜鳥さんが折々で変なとこ出してく中で、その包容力と図太さが発露することが、そしてそれに優さんが翻弄されるのがこの漫画基本ベースであり基本の駆動系です。
 しかし何故なのか、亜鳥さんの周りには亜鳥さん厄介オタがひしめいています。独特の磁場を持っているというやつです。
 優さんもその磁場にとらわれた一人です。亜鳥さんが好き好き大好きハイパーボッ! になってしまって、奇態な行動をしてしまう厄介オタになっています。だけならまだいいんですが、亜鳥さんはそういう厄介オタを特に邪険にはせず、むしろ包容力と図太さで受け入れちゃうのです。
 普通に厄介オタというのは厄介がつくくらい厄介なわけですが、そこでそれに対しても包容力と図太さの両輪をもって天然のファンサービスをしてしまう亜鳥さん。なので、厄介オタは余計に厄介オタとして成長していってしまいます。
 それがよくわかるのはADCこと亜鳥様大好きクラブ。幼稚園に行って、幼児と戯れる回があったのですが、そこでものの数十分で亜鳥さんの磁場が発動したらしく、幼稚園児が亜鳥様! するクラブ、ADCを形成していました。
 そのうえで、優さんは顧問に任命されるんですが、その後の回で開かれるADC会議の場での幼稚園児の亜鳥さんラブの圧がひどく、幼児のすることじゃねえ、ってなります。日に五回拝むとか幼稚園児が言っていて流石にやばいです。厄介オタすぎます。
 他にも、2巻で登場する亜鳥さんの妹水花さんもやはり磁場にとらわれている厄介オタで、端々でこいつやべえな、なんですが亜鳥さんがいつもファンサしているのでどんどんやばくなっています。
 また亜鳥さんの友達の清木清さんもやっぱり亜鳥さんの磁場にとらわれてるけど、女の子の色んな感情の様が好き、という優さんとは方向性が違うタイプに厄介オタだったりします。登場人物の半分程度が亜鳥さん厄介オタ、という厄介オタの巣窟化しているのです。なんだこの漫画。

心のオアシス 瑠璃葉るら

 そんな厄介オタとそれにファンサを怠らない亜鳥さんが繰り出すごたごたがこの漫画の基本ですが、そんな亜鳥さん磁場全開の中にあって、数少ない亜鳥さんの磁場を受けなかった人がいます。それが、ルーさんこと瑠璃葉るらさん。
 ユーチューバー系の可愛い私! な人物ですが、そんなに亜鳥さんと絡むところがなく、なので磁場にはとらわれてはいません。しかし、それならどういうつながりでこの漫画に出てくるの? となるところです。これは、亜鳥さんではなく、優さんと絡むタイプの存在だ、といえばいいでしょうか。
 周りには可愛い可愛いされているルラさんですが、亜鳥さん厄介オタの優さんはルラさんにまったく興味なし。そんな状態、だからこそだろがっ、とルラさんは優さんにちょっとご執心してしまうのです。
 そうです、ここには優さんの磁場が存在していて、ルラさんはとらわれているのです。これによって、ルラさんはこの漫画の一員として存在できるようになっているのです。
 その磁場具合は実は亜鳥さんと引け劣らない、というのは、ルラさんが優さんに対する感情をこじらせていくのを見ると自然に理解できます。そんなにあった回数多くないのに、一気に優さんスキーになっていくルラさんによって、こっちは厄介オタにはならないけどわりと好きをこじらせるタイプの磁場なんだな、という理解をさせてくるのです。

磁場に囚われている人としての涼風涼

 涼さんとは、優さんの友達です。とりあえずかなり長い付き合いですが、この子も優さんの磁場に囚われています。
 どれくらいかというと、中学のクラブ活動は優さんと一緒に読書系のクラブに入っていたとされています。
 ちなみに、そのクラブは二人しかいなかったそうです。つまり、わかるな?
 さておき、涼さんも優さんの、優さんを好きでこじらせる磁場に囚われています。こんな子に付き合えるのは自分だけ、という自負があったりするんですよ。そこに、亜鳥さんが出てきたので、偶にジェラる、というとこがあったりします。
 それ以前にいきなり不良になる! とがばがば不良になっても付き合ってやっている時点で聖人の域です。あれは普通に距離取りたくなるやつですよ。でも、そうしない。付き合う。いい子です。しかしそういうとこが磁場の影響下、とも言えるでしょう。優さんの磁場も強いのです。

磁場と磁場のラブゲーム

 亜鳥さんの磁場に優さんは囚われていると、先述しましたが、ここに優さんの磁場という要素を加えると、では亜鳥さんは磁場に囚われているのか? となると思います。
 これについては亜鳥さんも優さんに対してわりと特別な、忠犬めいた存在に感じていることから見えてくるものがあります。それが本当に犬ムーブが好きなのか、というとなかなか込み入ってきます。亜鳥さん、優さんだけに見せる顔が多すぎるんですよ。
 忠犬とは、もっとも自分に懐いた犬である。そしてそれに忠の字を当てるということは、つまり相当入れ込んでいる、忠を受ける側として、その対象として信頼していると考えて差し支えないでしょう。
 つまり、優さんが亜鳥さんの磁場に囚われているように、亜鳥さんも優さんの磁場に囚われれている。そういうことも可能なのです。つまるところ、『ばっどがーる』の深層にあるのは、磁場と磁場のラブゲームなのです。

普通にドタバタ学園コメディでもある

 さておき、この漫画は学園コメディというベタ基礎があります。ここの切れ味も中々のもの。学園コメディでのきららメジャーである『ゆゆ式』の切れ過ぎて切られたのを感じないワザマエ! レベルの切れ味とは違い、コメディとしてがつがつ押す力業タイプ、に見えて、時折クレーバーに言葉遊びしたり、でもやっぱりバカなネタをしたりと、コメディ漫画として大変仕上がりが良いのです。その部分がしっかりあるので、今のきららにおける良質の学園コメディ4コマが読みたい、という方には、肉丸『ばっどがーる』と宇崎うそ『ななどなどなど』のどちらかをカカッとオススメ出来るものとなっているのです。あるいは両方かも。
 『ななどなどなど』についてもいつか言及したいですが、それはその時とします。そちらも良質ですわよ。と入っておきますが。

まとめ。そうねえ。

 学園コメディに、磁場という概念持っていきたくなるくらい、お互いに磁場を出している優谷優と水鳥亜鳥の変な磁場のラブゲーム。それが『ばっどがーる』と言えるでしょう。
 このラブゲームが、一体どういう結末を迎えるのか。亜鳥さんが卒業するその日までに、何が起こるのか。どんなちょっとしただけの騒動になるのか。その結末まで連載続いてほしいという自分のエゴをもって、この項を閉じたいと思います。末永く続いてくれい!