感想 増田こうすけ 『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和』14巻

 大体の内容もなにもいつもの通りオムニバスだよ! 毎度当たり外れがしっかりあるという出来の面では分かりやすい面のあるギャグマンガ日和ですが、今回はかなりの当たり巻。いつも通り、漫画の道中の出来の良さがしっかり出ていて、いつものオチの弱さも余計に感じるけど、大変楽しめる巻となっております。今回はその当たりの中から五作をピックアップ!

第266幕「ぼくちゃん探偵の夢推理」

 大体の内容。夢の中に入れるぼくちゃんが、校長先生からの依頼で万年筆を捜す為、犯人と校長が見定めた教頭の夢の中に入っていくが……。
 夢の中というのでメルヒェンな映像とかあるのかと思ったら、そういう事は全然無く、むしろ夢って現実っぽいよね、という雰囲気の普通の絵面だったりしましたが、それがゆえに教頭の夢でのちょっとしたホラーとかリアルなだけに理不尽さがやたら夢らしい物がありました。夢の中だからって好き放題しても情報は集まらない辺りのテクニカルさが印象に残ったりも。ぼくちゃんの推理力というかあの情報で意味を繋ぎきれるってのはマジ切れ者だなー、とも。普通は結びつかないだろ。でも、なんでぼくちゃんは夢の中で腹パンする事にあそこまでこだわるんだろう……。

第267幕「手塚赤塚賞のパーティーに行こう」

 大体の内容。手塚赤塚賞が一般公開されたら大変な事になったよ!人多過ぎぃ!
 以前にあった銭湯回と同じ趣向の、人多過ぎるせいでぎゅうぎゅう詰めコメディ回であります。銭湯回が風呂に入るのが目的でしたが、今回はサインとビュッフェが目的という事と、舞台がホテルという事で趣は随分と異なっていましたし、行動の方向性も違っていました。映像は似通ってるというか、コピーも無しでこんな面倒な事良くやるよなという雰囲気でしたが、今回もその場が地獄である雰囲気はしっかり出ていたので大変楽しめました。というか、普通に入場制限しろよ! 絶対人死ぬだろ! というかコミケでもここまでじゃないわ!

第271幕「さるかに合戦」

 大体の内容。さるかに合戦に、新たなキャラクターがエントリーだ!
 昔話である、さるかに合戦にもう一人、屈強な男をぶち込んでそいつにひたすら猿を困らせる行動を取らせ続けるという、昔話改変し過ぎぃ!回。 これがもっと違うクラスタの漫画家さんが書いたら、どっかの淫夢的な方向性にならざるを得ない雰囲気というか、ホモホモしい雰囲気がもう少ししたら出てしまうんじゃないかというくらいにギリギリの所がありましたが、これは俺の脳が腐ってるからですね。屈強な男の行動はひたすら酷いというか、猿もそこまでされる謂れは無いだろう、と思ったりも。蟹父コロコロしてるとはいえ、ねえ。この話の具合だと報いには十分過ぎる罰だよなあ。

第281幕「アメリカンヒーロー」

 大体の内容。アメコミのヒーローになりたい、という男が、徐々に、徐々に……。
 じわじわとアメコミ調になっていく、という回なんですが、やってる事が妙にテクニカルだったのが印象的です。アメコミ擬音とかアメコミ調の絵になる、ならまだ分かるんですが台詞が縦書きから横書きになったり、コマ割りの違いでヒーローになりたい奴は左から、普通の友達は右から話始めるという無茶苦茶をぶっぱしておられました。そのせいで会話がかみ合わない! というのがじっくり2ページに渡ってやられるんですが、もう読んでる方も何がなんだか。実際に左から読むとヒーロー化してる奴の台詞が通じる辺りがもう本当に何がなんだか。でも、その何がなんだか感が面映い。そして愉快。細かく笑い所を入れていくという空白が堪えられないクラスタである増田せんせの面目躍如とも言える詰め込み具合も見れるのでした。

第284幕「バレンタインデー大作戦 〜作戦I〜」

 大体の内容。チョコをもらえないがゆえに、どんどん握力が強くなる!
 初っ端はバレンタインにチョコがもらえなかった男の悲哀と無様さという雰囲気で進んでいくんですが、話が進む毎に狂気の度合い、握力の度合いが強くなっていき、最終的にとんでもないモンスターが生まれかけるという、どうしてこうなるんだよ! 感の強い回でした。見切り発車感があるというか、あんまりちゃんと筋道を作りきって描いてない感じというか、つまり出たとこ勝負感満載なのに、異能ホラー的な要素のその仕上がりっぷりは異常に高く、握力で物を潰す時の擬音が「ワサッ」ってので、特に豪快な音ではなく、さっくりとやっているという様がなんともコワイ! ってんだから増田こうすけせんせはとんでもないですよ。それでもギャグ要素として成り立つ部分もあって、そこも含めて今までのギャグマンガ日和の中でも最高傑作級の一つとさせていただきます。
 とかなんとか。