感想 あらゐけいいち 『日常』9巻

 大体の内容「誰も見た事のない黄金日常系のパワー……」。何が言いたいかよくわからないでしょうが、今回の『日常』9巻はそんな不可思議な言葉が自然と出てくるパワーに満ち満ちているのです。
 元々『日常』はパワーのある漫画というより変という感じの感覚で読んでいた漫画でした。独特のパワーは初期からもちろんありましたが、それは一側面だったかと記憶しています。独特に変な日常である、という印象でありました。それがいつの間にか、そして徐々に、変という部分を食い破り、全面的になんだかよくわからんがとにかく凄いパワーだ! というのが横溢する様態となりました。変というよりパワー! それが今の『日常』の土台であるのです。←勝手に断定
 そんなパワーを感じられるのは、この巻では「日常の150」と「日常の159」、そして「日常の163」です。一つずつ見ていきましょう。
 「日常の150」は握りっ屁で教室内に大混乱が巻き起こる、という内容。相当の破壊力らしく、嗅いだ人が悉く且つ大仰倒れ伏すというのを見せつけられます。どんだけの威力なんだよ! その為混乱も大きなものになりますが、しかしあわやつるし上げという段階で、嗅いだ人達がふらふらしつつも復活、大丈夫だ! と言いだして事なきを得るんですが、どう見ても大丈夫そうでないのに耐える皆の心意気が、なんだかとっても、ありがてぇじゃねえか……(CV稲田徹)。よくよく考えると握りっ屁が凄いだけでここまで大事感が満載になる辺りがとんでもないパワーです。
 「日常の159」はみさとさん妄想回。前にも妄想爆裂させる場面でとんでもない狂獣っぷりを見せたみさとさんの妄想ですが、今回も全く期待を裏切らない、そしていつの時代だよというかいつかこの時代来たっけ? ってレベルで時代錯誤な物が乱打乱撃。息もつかせないジェットコースターな時代錯誤がぶちかまされます。正直この回は何がしたかったのか、あるいはどういう理由でこうなったのか全く分からないまま終わってしまう為、読後の疲労感と徒労感と途方感が半端ではありませんでした。訳がわからないよ! ここもまたパワーに寄って読まされて、且つパワーによって成り立つ回であったと言えましょう。
 「日常の163」は麻衣ちゃん風邪回。視界がおかしくなって見舞いに来たゆっこ達が凄い絵になるというだけの回ですが、それをきちんとまとめるのは確かにパワー。ちゃんみおの夢幻の如く也回と同じタイプのパワーで、変な絵が突如ぶっこまれるがゆえの独特のパワー感が魅力です。熱でぼやけている、という表現を超えて訳がわからない辺りが流石と言えましょう。麻衣ちゃんがぶっ倒れるくらいだから、相当の物であるのがわかるだろう?
 さておき。
 そういうパワーが主体なこの巻ですが、テクニックの部分もちゃんとあります。それが「日常の157」。麻衣ちゃんが強風の中本を読むだけの回ですが、これはパワーで押し切るというより、テクニックで魅せる感じ。強引と言えばいつも通り強引な展開ですが、台詞無し、絵だけで状況を語り続ける様は、テクいという言葉がしっくりくる上手さであります。笑える、というのより魅せられる感じなんですよね。それがパワーというよりテクニックと評してしまいたくなる所以です。こういう手管もあるから、『日常』はやめられません。こういうテクがあるから、パワーも光るんだな、というのが最終的なこのに対する感想となりましょうか。でも、やっぱりパワー凄いよなあ。
 とかなんとか。