感想  『ご注文はうさぎですか?』コミックアンソロジー1巻

 大体の内容も何もアンソロジーだよ! と言う事で色んな漫画家、イラストレーターの作品で構成されている、という普通のアンソロジーなのです。
 このアンソロジーで特筆すべき点は、クール教信者せんせの漫画でも、へーべーせんせの漫画でも、あfろせんせの漫画でも、msせんせの漫画でも、青田めいせんせの漫画でもありません。個人的にはその5人目的でしたし、実際それらは大変楽しめて、そしてごちうさってどこを押さえたらいいのか分かりやすいんだな、というのも知れて大変意義も深かったんですが、それらを押しのけて、それ単体だけで今回の感想を書こうと思わせるだけの力があったのが、くろば・Uせんせの『あたらしいこと』。これが全くの不意打ちだけど、素晴らしい出来栄え、あえて言うとワザマエ! だったのです。
 どういう漫画かというと、端的に言うとシャロ千夜にクローズアップされた漫画です。シャロさんがリゼさんにプレゼントをして、そのお返しをリゼさんがして、なんだけど誕生日のプレゼントとしてリゼさんと同じ物を千夜さんが持っていて、でも私が渡すよりもリゼさんから貰った方が、というのでもうせつねー! 原作中ではそこまで濃い百合エッセンスは出していないシャロ千夜ですが、その裏側をくろば・Uせんせが鋭く、切なく、美しく描いている漫画な訳ですよ。ほんとにもう、千夜さんに対する見方が一変する、市井で言われている鬼畜和菓子という言葉を一瞬で払しょく出来るものです。リゼさんが渡した方が、シャロさんは喜ぶから、というので押し隠した心とプレゼント、というのがほんと、堪えます。そこで表情を、泣いたり強がったりを見せない千夜さんがもうね。誕生日おめでとうの紙をプレゼントからするすると、それと同じプレゼントを選んだリゼさんから見えない位置で解いていくとことかも、もうね。そもそもリゼさんのプレゼントの質問に自分が買ったのを、送るのを選ぶとかも、もうね。なんだよこれ、せつねえー! でも、最後に良かったね、千夜さん。という終わり方で浄化されて、シャロ千夜ってこんなにいいんだなあ。と襟を正したくなりました。くろば・Uせんせ、出来ておる喃……。
 そんな思いで他の漫画の印象が薄れるくらいの出来の物があった、アンソロジーでした。