感想 櫻井エネルギー 『櫻井大エネルギー』


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櫻井大エネルギー (ワニマガジンコミックススペシャル)

 大体の内容「溢れ迸るエネルギー!」。テンション高めに馬鹿野郎、あるいはスペクトラルおおたわけ。それが『櫻井大エネルギー』の概要なのです。
 それだけだと当然「何言ってんだ! ふざけるな! そいつは俺が!」って橘さん*1台詞が出てくるでしょうから、もうちょっとちゃんと話をしましょう。著者、櫻井エネルギーCOMIC快楽天で描いた短編を一手にまとめた本だそうです。ビタイチ知らない名前でしたので追ってないからそうなのかー、しか言いようが無く。そしてCOMIC快楽天はエロ漫画誌ですがその割にガチエロスというのは少なく、でも絵柄の十分な肉感は見ているだけでエロいむっちりしたものでありまして、成程エロ漫画誌にも異端入れないと気が済まない奴がいるんじゃねーの。という納得をさせられるのでありますが、当然赫奕たる異端がまともなはずがなく、帯にあるように「狂ったくらいがちょうどいい!!!!」と言うくらいには上がり方が常軌を逸しておりますし、こんなにどこかアトモスフィアがおかしいのをよく掲載してたなあと言うくらいにはかっとんでおります。この漫画を買うきっかけであった文章で、道満晴明先生の短編集めいた味わいを感じる、というので購入に至ったのですが、道満先生の短編集、例えば『ニッケルオデオン』は清楚頭おかしいというべき静謐なアトモスフィアがあるのに対して、こちら『櫻井大エネルギー』は乱チキ頭おかしいとでもいうべきやみくもなパワがありまして、後エロスというか下ネタ方向も少ないけど逆によりパワのある頭のおかしさだ、というので大変いい物ではあると感じました(KONMAI感)さて、そんなちょっとぶっ壊れ気味の収録作から、とくにぶっ飛んでるのを、四点程、PICK UP!

俺は昨日の俺を越えてゆく

 曲がり角で彼と彼女がごっつんこ! そして発生大竜巻! という言葉にするとシンプルなのに全く相手に伝わらないだろうというのがひしひしと感じられる状態が起きるのが、『俺は昨日の俺を越えてゆく』です。本当に、彼と彼女が曲がり角でぶつかって、その影響で大竜巻が発生するんです。信じてください! 本当なんです! と切羽詰まった声をあげるくらい本当なんです。そして、その竜巻の中心である彼と彼女は痴話喧嘩してたりするんですよ。彼女の方が腕組めて嬉しかったりするんですよ。書けば書くほど何書いてるのか分からなくなる、この漫画を象徴する一作であります。

恋人は香辛料

 レトルトカレー狂いのゆかこさんが、学校に転入してきたレトルトカレーと恋人に。そしてその恋人の住む星へいき、大量殺戮(レトルトカレーを食う)するという話。すいません、また書いててビタイチ伝わらないのが手に取るように分かりますがやはりこれも本当のことなんです。そう言う漫画なのです。アニメじゃない! アニメじゃない! ホントのことさ! しかし、レトルトカレーが好き過ぎて彼氏とその星の人を食べてしまうって相手がレトルトカレーじゃないと相当ヤバい絵面だよなあ、とも思うんですが、そもそもレトルトカレーを大量殺戮という言の葉自体がぶち狂っているので、どの道ヤバいのでありました。レトルトカレーとの濡れ場もありますよ! と書くと更に何が何だかですね。でも、ほ(略)

例えばの話

 彼女との情事。しかし、その快楽の表現が何故か国。国がブラジルから日本に近くなるにつれ高まっているということに。なので彼女の言葉は国名として発せられるのでありました。本当に何書いてるのか分からんくなってきましたが、全て事実なのでどうしようもありません。途中、彼氏君が流石に国名はブラジル近くだと良く分かんない! というので地球儀を持ちだすんですが、それを持ってしたら彼女さんが生気の無い目に。というハードモードを発動させられ、結局日本までの道筋を感覚で感得するという方向に。更に彼氏君はそこからエロスな展開に持っていくはずなのに脳内映像がアースマラソンになってしまい、一番濡れ場方向が強い回のはずなのにあまりエロくないという滅茶苦茶な球でありました。何これ。

THE縁日

 縁日の屋台が、全て鼻を売っている。ただそれだけな内容ですが、何故鼻なのか。それもやたら堀の深い系民族の高鼻なのか。そういう部分が一々気になってしまうんですが、それ以前に鼻は花の間違いじゃないのかという思いに囚われていますね? 甘ェ! 本当に鼻です。鼻を売って、鼻を撃って、鼻を掬うんですよ。あまり長い回じゃないですが、そのワンセンテンスを強引なドリブルしてくる様はこの漫画の一つの境地として立ち上がっています。つまり、訳が分からないよ!
 
 こういう跳んだ漫画が勢揃いなのが、『櫻井大エネルギー』なのです。

*1:勿論『仮面ライダー剣』の