感想 道満晴明 『花とアリス殺人事件』


花とアリス殺人事件 (ビッグコミックス)
(上記リンクはAmazonの物理書籍のページ)

 大体の内容「恋って不定形。あるいはがーるみーつがーる。」。転校生のアリスさん。与えられた席が去年あった殺人事件の被害者、ユダの席で、それは呪われている! と皆に引かれて、しかしアリスさんは動じることなく事態を打開していく。その過程で、花さんと出会って……。そんながーるみーつがーるなのが、『花とアリス殺人事件』なのです。
 原作ビタイチ知らないでのこの漫画の感想をつらつら書く訳ですが、全体的にこの話こんな素っ頓狂なんですか!? というのが第一印象。その印象に影響を与えているのは、多分陸奥さんが素っ頓狂の部類に入る人だからでしょうか。この漫画の駆動系として主に初期と終期に大きな出番が与えられる陸奥様ですが、どっちもお前それでいいのか? という立ち回りなので大変奇特な方であるなあ、と。
 初期はアリスさんより先にユダの席に座ってしまって呪われた! と学校でハブられる羽目になる、まではまあ想定の範囲内なんですが、そこから占いしてもらってやるしかない! となってユダの霊が乗り移ったぞフーハハハハハ! してしまう辺りノリが良い人なんだなあ。と呆け顔になりました。クラスメイトもユダの人となりを知らなかったのか、そのテンションが受け入れられて席替えされるという流れには不覚にもなんでやねん! ってベタなツッコミしてしまいました。それでもクラスメイトからは微妙にハブられているというのが更になんでやねんインシデントです。そこ、なんともならんかったんかい!
 終期は、花さんの呪い(あれは一種呪いですヨネ。)を解く為にひと肌脱ぐ辺りは案外姉御肌だなー、と。アリスさんの為に情報収集してた(陸奥様になった影響で出来たパシリの功績が大きいけど。)し、そういうの好きな人なのかもなあ、とも思いました。あるいは酔狂なのかもですな。
 さておき。
 陸奥様に気を取られると忘れそうになりますが、この漫画は『花とアリス殺人事件』なので、当然アリスさんと花さんがメインパーソナリティです。で、この子二人を中心に話を進めますと、アリスさんですよ。特に見栄えのする部分がある子ではないのですが、バイタリティが相当高いんですよ。原作の方でもここまでバイタリティが高いんでしょうか、ってくらいに飛んだり跳ねたり走ったり謎を解いたり。八面六臂とは彼女の為にある言葉、というと言い過ぎですが、それくらいには大活躍していました。これが世に言うもうあいつ一人で十分じゃないかな、というものか。そう感じられました。特に、花さんを呪いから解放するまでの過程がいいですよ。そこに地味ながらもじっくり時間をかけているのが好印象とそうなる、呪いが解ける蓋然性を感じるのです。あるいはがーるみーつがーるとしての積み上げ方が正しいとかなんとか。
 さておき。
 この漫画のもう一つの駆動系、ユダ殺人事件についてはこの漫画ではふわっとしつつも納得は出来る形で終結して行きます。でも、そこは実は重要ではなく、花さんに取り憑いたユダ殺人事件という呪いを解くことこそがこの漫画の終結点なのです。だからこそ、あのふわっとした感じになっているんだろうなあ、という印象があったりします。あまりにガチにミステリー色を強くしないのが良い塩梅に機能した、と言いましょうか。それゆえにがーるみーつがーるが際立つ格好なのですよ。そんな、がーるみーつがーるな一作でありました。