感想 伊藤明弘 『ABLE』2巻


伊藤明弘 ABLE(2)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「ある銃で巻き込まれるお話」。<ケセラセラ>と書かれた紙と目印銃。それがあちらこちらと歴訪する。あちらではトンチキ殺人鬼、こちらでは復讐者。そしてそこから地球の裏での新たな、最初の銃と同じ目印のついた銃。それらが連なるお話とお話。それが『ABLE』の概要なのです。
 1巻(感想)では一話一話で仄かな繋がりがありつつもパンパンと様相の違う話を混ぜ込んでいた『ABLE』ですが、2巻はより線としてのストーリーが濃くなっております。最初に科捜研に持ち込まれた<ケセラセラ>を誤って持って帰ってしまった婦警さんのトンチキ殺人鬼との激闘から入りまして、その後銃は猫によって復讐者へと持ち込まれ、復讐が遂げられた後にその復讐者を撃退した女組長へ、。そして一人の老人にその銃は戻っていき、どうなるかと思ったら次の銃ですよ。そうやって散らかったような話にしつつ、繋がりはあるというさすがのテクニカルさを見せつけるのであります。
 さておき。
 この漫画の様相はストーリー面という部分もありますが、それ以前に1巻では台詞が極端になかったのが、徐々に増していくのです。婦警さんの辺りは言葉がほとんどないんですが、復讐者が捕まった辺りから増えだして、また日本の、地球の裏側へと話が戻ると、すっかり多弁になっていたりします。この辺の転調というのは、そういうのを入れないと訳が分からない、という部分への解答であるかと思います。正直、台詞無しで女組長の話の終盤の展開が何を意味するか分かるかと言うと、ちょっと自信がない私がいました。あってもちょっと混乱したくらいなので、たぶんそこへの配慮としての多弁だったかと邪推します。
 さらに邪推を進めるなら、地球の裏側に戻った展開でも、台詞があるのがここからは自然だ、という配慮というか妥協が始まったのかなあ、とも。あまりに状況が分からないままで、台詞もないで、では訳が分からんのは間違いない。だからこそ、喋る展開へと持っていった、というのが個人的な推察です。つまり、またこの多弁さを捨てて台詞をほとんど言わない展開に戻っていく可能性も、あるだろうという邪推です。この辺り、どうなるかはこの漫画がどうなるか、なのでかなり未明ではありますが。
 さておき。
 伊藤明弘先生、というと当然アクションです。漫画と言う止め絵の、静の世界でアクションという動をどう描くか、というものの一つの解答として、この漫画はあるかと思います。この巻だと展開的にはトンチキな殺人鬼との闘いが大変キレよく仕上がっています。というかメスの性能が良すぎぃ! ですが、その点について特に言及することなく、超切れるんだよ! というのをただそのままぶっこんでくる様が素晴らしい。説明したら「んなわけねー!」になるのを描いてみせて納得させるこの手管。そしてアクションとしてのキレの良さ。動から静への、静から動への転換の素敵さ。どれもかみ合って見事な仕事だと言わざるを得ません。本当にアクションとして、動きとして見れるんだよなあ。凄いなあ。とコナミ感をして、この項を閉じたいと思います。