ネタバレ?感想 広江礼威&イダタツヒコ 『BLACK LAGOON 掃除屋ソーヤー解体!ゴアゴア娘』6巻

BLACK LAGOON 掃除屋ソーヤー 解体!ゴアゴア娘 (6) (サンデーGXコミックス)
BLACK LAGOON 掃除屋ソーヤー 解体!ゴアゴア娘 (6) (サンデーGXコミックス)

 大体の内容「珠玉のゴアゴア短編集!」。今回は一回一回が独立したゴアゴアな短編集の趣きなのが、ゴアゴア娘6巻なのです。
 ソーヤーの仕事とイダタツヒコ先生の結節の帰結として、この漫画は不可思議な話やどうしようもない話などが大乱舞するのですが、今回は特にイカレポンチなやつが乱舞する巻となりました。7つの内、ホラー2のトンチキ3のガチ2という謎の伝説的配合比により、一気に読むと訳の分からないアトモスフィアになること請け合いです。正直、何を読まされているんだろうという感じが強いというか、某テイオーボイスで「訳わかんないよー!」ってなるくらい、精神に対するアップダウンが激しくてマジモンの読む向精神薬の趣きすらあります。
 トンチキ話は本当にトンチキで、ソーヤーのとこに酔いどれレヴィが投げ込まれる事件(嘔吐物の話が濃すぎて混乱する)も大概ですが、個人的にはロットン・ザ・ウィザードの勘違いモードの話がてきめんにキました。ロットンは往時からバカだとは思ってましたが、やっぱりナルの入っている奴の妄想はレベルが違うというのを見せつけられます。ソーヤーに迫られるのオーケーというか、告られるもんだと思ってたのかお前。そういう間柄じゃねえだろ! 冷静になれ! という展開からオチの台無し加減が素晴らしいトンチキ回です。最後の掃除させられてるとこのなんか哀愁すらある感じは好きですが。ロットンはこういう扱いが出来るから便利よね……。
 ホラー回は一つはベタに見えてすっとスカしを入れてくるのでわりと込み入った感じので好きですが、もう一つの方の、レイスという厄タネをめぐる話というのが、結局そいつは……? という私のタイプのホラー要素でより好きです。偶に詩的という言葉が出てくるのがありますが、この回も行間を感じる、という意味での詩的回と言えるでしょう。まあ、話の大半はバカアウトローがべちゃくちゃしゃべっているんですが、少ない残りは多く語らず、魅せる形でやってくるので、ここら辺を詩的、と言いたいところです。最後のコマの静かな雄弁さたるやです。こういうの、ここで混ぜてくるからこの漫画好き……。
 さておき。
 ガチの話はどちらもガチ。片や復讐譚、片や性癖という、ベクトルが完全に違うんだけど、どちらも本気の本気なので、これがトンチキ話やホラーの合間に挟まってくるので混乱を助長します。復讐譚もかなりいい仕上がりですが、性癖の話はトンチキでもありつつある種のサイコホラーでもあり、この巻の属性を一番詰め込んだのがこの回、と言えるものです。
 話の筋としては傷跡フェチがソーヤーの傷跡に欲情して、としていたら使いっぱの傷女に……。というものですが、絵のパワーというか、ガチのフェチズム持ちの行動らしい画角というか、とにかくこいつガチなんやな、というのをその犯人とイダタツヒコ先生に見出してしまうレベルです。ぶっちゃけ、使えるレベルですよ!
 さておき。
 やはり、イダタツヒコ先生に対してソーヤーを割り振った人の考えは至高にして究極。イダタツヒコ先生の持つ属性と、ソーヤーの扱える属性がきっちりかみ合っているので、今回の巻のようなトンチキ構成でも一つの作品の枠内を逸脱せず、それでいて頭抜けておかしいというのをしでかしている。ある意味でロアナプラが魔窟なのが治安面だけではなくなっているのは流石にどうなのかとも思うんですが、でも面白いし、オーケーだよ! と勝手なことを言ってみます。広江先生ではこっちの方向性は流石に難しいだろうし、そもそもこれやってる時点でそっちはお任せだろうし、とにかく作品の幅を広げるのには正しく成立している、という漫画だと言えるでしょう。
 とかなんとか。