ネタバレ?感想 木々津克久 『フランケン・ふらん Frantic』7巻

フランケン・ふらん Frantic 7 (7) (チャンピオンREDコミックス)
フランケン・ふらん Frantic 7 (7) (チャンピオンREDコミックス)

 大体の内容「今回はだいぶメディカルホラー方向」。いや、今までもメディカルではあったんですよ。ホラーというと微妙にあわいが違うという感じだったんですよ。しかし、今回の7巻はきっちりメディカルホラー叩きつけてきます。そういう意味では安定のメディカルホラーの巻だったのがFrantic7巻なのです。
 7巻になりました。前シリーズが8巻終了だったので、わりと分水嶺に来た、という味わいがありますが、どの道することは変わらんのだ、という感じで木々津先生は粛々とメディカルホラーと精神的グロを量産してきています。
 先触れに書いた通り、今回はメディカルとホラーが一体化している回が多くみられました。逆に言うと、精神的グロ方向が少なかった、という見方も可能ですが、少ないと言っても精神的グロ出待ち勢の言い分で、きっちり精神的グロはあります。なので精神的グロを求める人もご安心頂きたい。そんなやつ、俺以外おんの? ですが、まあそれはさておき。
 この巻の話で、最もクるのは、一番初めの第39話『シャークトゥース』。メディカル系の漫画でもあまり取り上げられない歯科方面の話で、人間の歯をサメの歯のように出来たら、という話から、想像するだにきつい展開へと向かっていきます。
 サメの歯というのは、生え変わりが出来る。ならそれを人間にもできるようにしたら、という発想はいいんですが、そもそもの歯、および神経関係の構造が人間とサメとでは全然違う。サメの歯には神経は通ってなくて、簡単に取れる。それと同じように人間の歯にしたらどうなるか、という結論が、歯がせりあがるにつれて歯の神経がむき出しになってしまう、という地獄でした。人間、歯の神経が直に外に出ていないからこそ、虫歯でも削って蓋すればなんとかなる訳ですが、その神経が、歯のあるところ全てむき出しに、というのを考えると想像するだにというか想像を絶します。しかも一過性ではなく、一度なったら永続的に、というのを考えれば、本当に地獄としかいいようない。あまりの嫌な質感の話だったので、ちゃんと歯医者に行かないとこういう施術されるんだぞ、って歯科医師会が啓蒙の為に活用するのもワンチャンあるのでは? までありました。歯医者ちゃんと行こうって思えるという、メディカルホラーとしてはある意味謎の仕上がりでした。
 他の話もエッジが効いています。いうて全部エッジが効いてますが、五感がちょっと鋭敏過ぎて生きにくい、という青年の五感を全て奪うというふらんやり過ぎ回や、ネアンデルタール人との交流、という時点で無茶なのに更に話が無茶過ぎる回、後毎度無茶苦茶を振りまいてとんずらする切谷さん回など、全部についてレビューしたい気持ちが湧きますが、流石に長くなるのでもう一つだけカカッと書いて終わりたいと思います。
 その回が、第42話『麗しのアドレア』。大学に行きたいということで首尾よく大学生活を送るアドレアさん。そこに群がる男たち。酷いことするんでしょ! エロ同人みたいに! かと思いきや、彼らは紳士協定を結び、アドレアさんとのつかず離れずの関係を楽しんでいました。そこにアドレアさん一人だと何かあったら、と沖田が送り込まれることで、その関係性にほころびが、というお話。
 この回はひたすらトンチキです。大学生なので色々出来るようになったモラトリアム空間の中、アドレアさんと色々当然したい、でも変に突き進むのも、という童貞精神が全開で紳士協定を結んだ男たちが、沖田の登場によってどんどんとやばくなっていく、までは想定内なんですが、最終的にアドレアさんに物理的に食べられたい、という展開に突き進んでいったのは流石に笑いました。今までのムーブからそこに派生したのが良く分るから困るし、こういうやつらじゃなかったらそもアドレアさんの取り巻きにはならなかっただろう、とも理解出来るのでマジで笑います。食べられたい(物理)って感情を、こいつらが持つのは異常なんだけど理解の範疇に入るんですよ。この回で積み立てられた色々がその感情を容易に理解させる。ある意味凄いストーリーテリング。積み重ねって大事。オチでの彼らの処遇もかわいそうですが、でもあいつらが勝手におかしくなったせいだからなあ。しょうがない。
 さておき。
 そういう訳で、話の方が素っ頓狂の極致みたいなのに、理路は分かるという無茶苦茶をかっつりしてきて、映像的グロも精神的グロもきっちり入れつつ、メディカルホラーとしてもいい門構え。それが『フランケン・ふらん Frantic』7巻の様相なのです。