感想 雪本愁二 『サメガール』1~3巻

サメガール(1) (アフタヌーンコミックス)
サメガール(1) (アフタヌーンコミックス)

 大体の内容「「サメガール!」「そう。一味違うのね」」。海月夏蔵は、ある日出会ってしまう。そう、サメガールに! ということで、サメガールこと深田一花さんと夏蔵のアバンチュール。それが『サメガール』なのです。
 この漫画の基本としては、サメガールである一花さんに夏蔵が惹かれていく、そして同時に逆も作用する、という類の話ですが、そのクッションとして何故か巨大化した海洋生物が街を襲う! というのが入っています。それを倒すのが、サメガール! ということで、スーパーヒロイン系の軸がある。
 と思っていたか? 甘ぇ!
 一花さんが普通に女の子、ちょっと出自が普通じゃないけど、だけど、それでも巨大海洋生物は怖いし、でも戦える力があるなら戦うし、というムービングをしてきて、そこを見て、夏蔵が奮起する。というタイプの漫画となります。
 となると、当然一花さんが可愛いことと、戦う一花さんを支えるんだ! とする夏蔵がかっこいいことの二律が立たないことには話になりません。そこは最低ラインとして引かれるラインと言えるでしょう。
 そのラインを越えるか? と言う問いには笑顔でサムズアップ! 素地としてきっちりと立ち上がっていると断言してもよいでしょう。
 一花さんは可愛いです。1巻目はほぼ一花さんの可愛いで話が駆動するので、当然です。可愛くなければ漫画じゃない! までは言いませんが、一花さんが、巨大海洋生物は怖いし気持ち悪いけど、それでも倒すんだ!
 とするところでの、そこまでかっこいいで積み重ねたものが可愛いに一転する一話目は、だから仕上がりが完璧だといっていいでしょう。
 サメガールという謎の存在である以外は普通に可愛いのです。
 それゆえに、使命にかける意気込みとか、それでも怖い物は怖い! とするところで揺さぶりをかけ、最後に夏蔵の力添えもあって勝利する、という流れは、ベターですがベター、だからこそだろうがっ! とコミックマスターJも納得のものとなっております。
 その後、色々と話を彩るキャラも出てきて、それが更にベターな関係な一花さんと夏蔵を輝かせる形にもなっていて、出来るな!! という台詞も出てこようものです。
 一花さんが全体的に可愛いのは、この漫画の基軸なので当然ですが、対する夏蔵はというと、こいつもこいつで、巨大海洋生物を倒せる力はない、けど一花さんの助けようとする様は、やはりベターゆえにしっかりと効いてきます。ややふわっとした面構えなのに、なんでこんなにかっこいいんだろうこいつ。ってくらいにかっこいい奴なんですよ、夏蔵は。
 その辺は、イルカボーイの追加でサメガールとの恋のさや当てみたいな感じになってくると更にそれが倍増してきます。イルカボーイも一途ですが、夏蔵も一途。どっちも一花さんが好きなんだ、というのがあって、夏蔵の方に加担したい気にはなる。イルカボーイもだが、夏蔵がガチ勢であるがゆえ……。
 この二本の軸、一花さん可愛いと夏蔵かっこいいが、お話の流れをぐるんと高回転させてきます。この二人のムービングが、更に他のキャラを巻き込んで、大きなうねりとなってくるのです。
 これが大きなうねりになっている、というのは、実際に一花さんの力がアップしている、という事実を見せることで実感させられます。
 一花さんの父親代わりの水鏡さんが、これは一花さんでは倒せない相手が出てくる、ということですぐにでも退避をさせようとやってきたのに、その脅威を一花さんはぶっ倒してしまいます。
 一花さんと夏蔵の二軸が出すうねりが、大きくなっている! というのが如実に感じられる場面でした。
 普通に強くなっている!
 愛かな?
 愛だよ!
 ということで、色んなキャラが出てくるものの、主軸である一花さんと夏蔵の関係性は常に意識を傾かせる仕上がりは、この漫画がそう言う作品だ、というのを深く印象付けます。
 ある意味では大変分かり易い作品ですが、ベターなものでもきっちり仕上げれば大変美味しいものになる、というのを見せつけられた感すらあります。4巻、はよ買いたいぜ!
 とかなんとか。