感想 石見翔子 『しょーがくせいのあたまのなか』1巻


しょーがくせいのあたまのなか 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「これが今の小学生なのか!?」。などと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。という某アスパラガス声が聞こえてくるくらい、これが今の小学生とかではなく、しょーがくせいなのだ。そんな漫画が『しょーがくせいのあたまのなか』なのです。
 個人的な話で恐縮ですが、石見翔子先生というのが今まで良く分かっていませんでした。『かなめも』の萌え4コマのようでいて端々に噛み切れなかったり刺さったりする要素、というものへの知見が足りていなかったからですが、そんななので『かなめも』は微妙な感触しか持っていませんでした。そんな中で『かなめも』が終わり、この漫画『しょーがくせいのあたまのなか』が始まった訳ですよ。それが、新連載としての一発目で、わたくし、持っていかれました。あまりに持っていかれたおかげで、3キャラ感想というのを毎号分書いていたりします。今回はどうしてこうも持っていかれたのかについて書いていこうかと思います。
 まず、メイン三人のバランスが素晴らしくとがっているというのがあります。夢見がちでこの漫画において一番小学生というタームがしっくりくるけど、ちょっと気が多すぎるみゆちゃん。毒舌という言葉すらオブラートに包んだ感じな上に、小学生百合という個人的に耳慣れないジャンルをぶちかましてくるふたばちゃん。そしてうんどうばかと人物紹介に書かれているけど絶対にそんな範疇ではない、言うなればうんどうモンスターいちこちゃん。そんな三人が織りなすしょーがくせいライフ。と書くと大体感じがつかめるかと思います。基本的に先に名前の挙がった方から出番が多い傾向にありますが、ふたばちゃんは折々でいい百合ムーブを見せてくれますし、いちこちゃんはいちこちゃんです。それが絡まっているだけで、面白さの基本レートが高止まりという、はっきりとウルテクというやつを見せつけてくれます。よく拝みな! 石見翔子の妙技をな!
 次に、このメインの絡まりの横でサブキャラ群がみせる細かさもいいものです。特に三十路手前でわがままというかだらしなボディの担任の先生は特筆に値する駄目さです。重複表現するくらい、駄目駄目です。この人のムーブを見ると、しょーがくせいな他の面々がむしろまともに、しっかりものに見えるという悪魔的魔手ですらあります。先生、生徒と精神年齢同じかそれよりちょい下感すらあり、駄目な大人スキーには大業物として光るものがあると思います。
 しょーがくせいなクラスメイトも色々といるんですが、特に名前がしっかり例示されない面々なのです。とはいえ、大体こいつはこういうやつだな、というのが回を追うごとに提示され、ここ淡い恋とか、ここただのバカとか、分かってくる辺りが石見翔子テクニックというやつです。最小のコストで最大のゲインを! というのは言うは易し行うは難し。それをさらりとやってのけるのだから恐ろしいものです。
 最後に、いちこちゃんが大変可愛いことについて語りましょうか。いちこちゃんはこの漫画の一番のファンタジー要素です。序盤はそれ程でもない、トイレトライアルで自分との戦いをしてたりしますが、まだ常識の範疇でした。それが回を重ねるごとに、うんどうばかからうんどうモンスター、あるいは電波系わんぱくへとクラスチェンジしていきます。そこがいいんだ……(キッド・ホーラ顔で)。大人である先生すら軽く凌駕する運動能力と、どう考えてもこいつうんどう以外に頭になさ過ぎぃ! な知的能力が相まって、愛らしくなっております。人を選ぶ嗅覚というのも天性のものがあったりしますし、わりと餌でつられる辺りも分かり易いです。そして外人キャラという側面もありますが、これが単なる外人キャラではありません。これは2巻収録範囲で明かされることなので、2巻を振るえて待っていただきたい。
 さておき。
 まとめると、しょーがくせいが可愛いだけなんて誰が決めたんだ? というひできさいじょうの声で歌いたくなるくらい、色々考えているし色々考えてないしなしょーがくせいライフ。それが『しょーがくせいのあたまのなか』なのです。