新婚よそじのメシ事情 (バンブーコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)
大体の内容「新婚よそじのメシ事情」。内容が完全にタイトル通り、過不足なく、というので説明もそうだと言えば大変楽ですが、もうちょっとちゃんと説明すると、よそじにして結婚した小坂俊史先生が、結婚したがゆえに色々と食カルチャーショックを受けたり与えたりするのを徒然する漫画。それが『新婚よそじのメシ事情』なのです。
ネタバレするようなネタがある漫画ではないのですが、それでもとりあえず格納しまして、つらつらと語っていきたいと思います。
とはいえ、それ程鋭い話とかできないというか、そういう漫画じゃねーからこれ! とこくじんボイスで言いたくなるくらい、単なるメシ事情なのです。なにせ、初手の、結婚相手である王嶋環先生の新居初ご飯が豚肉の生姜焼きです。素晴らしく庶民派! という内容です。以後も推して知るべしです。とにかく派手さが無いのです。
だが、それがいい。
その豚肉の生姜焼きの回でも、小坂先生が想像していたバラ肉での生姜焼きではなく、ロース肉でのちょっとお上品な生姜焼きであっけにとられ、これなんか違う、とか言っていたら丼に乗せて豚丼、で終わるという起伏としてはとんでもなく緩い、勾配の無い部分が、しかしその回で一番勾配があるという、ある意味想像を絶する内容なんですが、でもそれがまたいいんですよ。そもそもメシの話に急勾配を求める方がどうかしているのでありまして、むしろこの緩さ、勾配の無さが現実感として大変納得できる、とまで言えましょう。以後もタコ焼き器でタコ焼きを作るけど上手く丸くならないとか、妻のカレーは肉がお高いとか、赤提灯、のん兵衛じゃないけどくぐってみようとか、帰省の為に買ったものを食いきらないととか、本当に日常的な内容を日常的に描き表しているのですが、それが大変いいのです。そこに、今までと違うことを、結婚相手としている、という成分が加わって、大変味わい深いのです。
特に新婚ラブラブという感じじゃなく、長年連れ添った夫婦って感じなのも、それを助長します。ラブラブなことをしている時もあると思うんですが、その辺は全く出さず、でも連れ添っているという事実がしっかりと。二人で色々やったり、今までの一人メシとは違う要素、例えば袋麺に野菜炒めが乗るとか、があるだけで、色んな夫婦がいるんだなあ。という納得をさせてくれます。人の数だけ夫婦がある。当然のことですが、それを妙な力を入れず、さらっと、しかし確実に魅せる様は流石に漫画家歴が長いだけはあるという、これまた納得をさせられます。
さておき。
小坂先生も王嶋先生も〆切であくせくする場面が多々ある、というのもこの漫画でのアクセントとして立ち上がります。〆切のせいで飯が貧相になったり、あるいはカレーを作り置きしたり、と、これまたリアリティラインがしっかりと構築されています。特に〆切カレーの回でのカレーに悲しい記憶が染みつくのが嫌だ! と平素の時に食べようとする辺りが哀愁というか、もののあわれを誘います。暖かい家族の象徴というべきカレー、というよくよく考えるとそうでもないだろ、な主張が、でもその時はそうだよなあ、と思わされる辺りはやはり流石です。で、オチが妻のカレーは肉が5千円。という、神戸の人間は恐ろしいのーっ! で〆る辺りもまた流石。この辺がふわふわしないできっちり落ちるの、本当に見事なテクニックと言えるかと。
ということで、巻数表示無いけど2巻待ってていいんですかねー! と書いて〆の言葉とさせていただきます。