ネタバレ?感想 杜康潤 『孔明のヨメ。』10巻

孔明のヨメ。 (10) (まんがタイムコミックス)
孔明のヨメ。 10巻 (まんがタイムコミックス)

 大体の内容。「思った以上に自然な成り行きの三顧の礼!」。今までの三顧の礼イベントの趣きをゼロにする、けど実際こういうことあるかもな。そういうなれそめが描かれるのが、『孔明のヨメ。』10巻なのです。
 今回の巻は、とうとう、そう、とうとうですよ、の、三顧の礼からの孔明士官の展開になっております。本当に、とうとう軍師孔明が現実のものとなりました。三国志の話だからそうなるのは至極当然なんですが、それでもそこまでこの漫画が続いて、そしてこの後もこの漫画が続いていくという事実が燦然としているのです。個人的には士官したら終わりだと区切りいいよな、という程度の覚悟しか持っていませんでした。しかし、現実は、この後も続いていくのが確定しているのです! 逆に言うと、どこまでこの漫画は続いていくのか、という問題さえ立ち上がってきます。色々な意味で先が分かるのに読めなくなってまいりました!
 という興奮はさておき。
 三顧の礼三国志の中ではかなりデカいイベントなのに、この漫画だと「あ、これで三顧になるんだ」という素っ気なさを爆発させてきます。相手が名も特に轟いていない若造相手なのに、劉備は三回も! というイベントですが、1回目、2回目共に単に居合わせていないというだけで、そしてしゃあない三回目に、というナチュラル具合です。言われないと三顧の礼だと気づかないレベルですよ。いいのかこれでこの名イベントを!
 という思いは、しかし劉備孔明の邂逅と、お互いのことを話していく流れの自然さの前に、「ウカツ! この流れで実際自然だったのだ!」という得心へと変わっていきます。お互いがお互いに響き合う様というのは、なんといいものなのか! そういう理解をさせてくれます。二人ともキュンキュンしてましたからね。語弊がありますが、大体間違ってないと思います。
 その三顧の礼イベント、それだけでは終わりません。曹操をどうする、という話から、孔明は自然とある答えを見つけます。それは三国鼎立! 三国志三国志として成立させる根幹思想! それを、ここで、今までの話をぐわっと整理したら出てきた、というのだから、もうどうしようかと。天才じゃねえか! いつかはそこに繋がる道筋だったとはいえ、ここでするっと出てくるのには参りました。しかし、このタイミング以外では出てくるか? と言われると、意外と出てこない気もしてくる。言い切ってしまうなら、あるいはここしかないのか。そういう理解になりました。好き勢のやり口は恐ろしいのー!
 さておき。
 個人的な好きを発させていただくと、劉備曹操のことをどう思っているか、というのが大変いい仕上がりだったかと。ああいう英傑で、国をまとめようとしているのは認める。だが、それは色々と切り捨てる動きだと。それで切り捨てられる方は堪ったもんじゃないだろと。
 この漫画、曹操を悪者としては描いてはいません。曹の姓は悪役に任ずるめいたところはありますが、ただの邪知暴虐ではない。それが国を平定する道だとして、信念があり、それに対して劉備も認める所はある。でも、それだけじゃねえだろ、というね。ここの劉備曹操の描きだし方は、おそらくここ最近の三国志ものとしては白眉の類。乱世の奸雄としてきっちり曹操を活写してきたし、劉備を仁君あることを描写してきた、そのどちらの重みにも傾き過ぎないで、きっちりとヘイコウを保つ。平行で並行。それがきっちりと積み重なっての、今回の巻となっている。などとも思ってしまうのです。
 だからこそ、私は思うのです。どうか、この漫画を最後まで、描いてほしいと。赤壁辺りで終わりという可能性もありますが、どうせならその終生まで見せて欲しい。そうしたら、どういう三国志漫画になるだろうか。そんなことを。
 とかなんとか書いて、感想終了! 嫁とのイチャイチャもあったんですが、どうしてもそっちに気が行ってしまいました!