ネタバレ?感想 飴色みそ 『成仏するにはまだ早い!』1巻

成仏するにはまだ早い! 1 (バンブー・コミックス)
成仏するにはまだ早い! (1) (バンブーコミックス)

 大体の内容「ふわふわした終末」。突如蔓延した未知のウィルスによって人類全滅して早一年。小春さんたちは呑気に暮らしていました。どうサバイブして? ノン! 既に死んで、霊体になっているから問題ないね! そんな中で繰り広げられる、ふわふわしたアフターアポカリプス。それが『成仏するにはまだ早い!』なのです。
 この漫画の他の終末系から際立っている部分は、そのふわふわしたところでしょう。飴色みそ先生といえばミラク者からすると『カラフル・マキアート!』ですが、あれも魔法少女物を極度にふわふわさせたおかげで、ひたすらふわふわした、とにかくふわふわ漫画だった訳ですが、そのふわふわしたのを、終末に導入したらどうなるのか? という思考実験の末に爆誕したとしか言いようがないのが、この『成仏するにはまだ早い!』な訳ですよ。人間世界は崩壊し一年。あまりに高速で死んだ為なのか、あるいはウィルスの影響か、とにかく霊体となってしまった人たちが、適当に暮らしている。飽きたら成仏も出来るし、今は暑いも寒いも腹減りも眠いもなにもないから、本当にお気楽にしている。そこに終末の悲壮さというのはなく、ただ終わらない幽霊生活が繰り広げられるという。ある意味楽園のような状態。なので、出る人出る人皆ふわふわしていて、アフターアポカリプスって案外こういうのかしら。という謎の納得さえさせられます。それぐらいふわっふわっなのです。
 でも、死体とかどうなってるの? 速攻死ぬにしても腐るだろう? それはえぐくない? という疑問はあって当然かと思います。そう考えていた時期が俺にもありました。しかし、ここで未知のウィルスの効果発動! なんか植物が生えてきて、グロさあんまりなく死体はなくなったよ! ついでに人間以外の動物には植物が生えるようになっているよ! という未知の有効活用をしてきます。便利な言葉だよ未知って! この未知のウィルス、水生生物にも効果があるらしく、更に効果発動して寄生種を大きくしたりもする、というますます便利な言葉だよ未知って! 感を爆裂させます。 また、花から動物が生まれたり、脈打つ植物などもあり、単に植物ってだけの話ではない、いいね? というしゃっつらをしている部分もきっちりと。そこが結構侮れないんですが、でも基本はふっわふわ。この落差が堪りません。
 さておき。
 基本的に、そういうアポカリプスの残滓について見る漫画でもありますが、本当のところは女子高校生4人組のふわふわした幽霊生活を眺める漫画です。死後一年が経過しているので、幽霊としての力の使い方も慣れまくっており、逆に慣れてない頃見てみたいなあ、という風に思っていたら、登場人物の1人、小春さんが霊力を上手く扱えない、という話でそこの辺りをフォローしてくる訳ですよ。そうしつつ、霊力の使用範囲とか、壁に対する概念を取っ払うと地面に潜ってしまうとか、小ネタながらきっちりと効かせてくる辺りが本当に出来ています。でも基本ふわっふわ。何度でも言いますがふわっふわなのです。
 このふわっふわなの、小春さん達幽霊カルテットが基本ゆるいから、というのがあるのですが、それ以上にもう死ぬことはない、という部分が終末世界なのに危機感が全くない部分に作用し、ふわふわさせてくるのだろう、と思います。特に食べる必要が無いけど、お焚き上げすれば食べれる、というお焚き上げ万能説を駆使して頑張って缶詰の中身食べようとする話とか、流石にお焚き上げレベルで焼くと食えねえや! とか本当にふわふわでした。世界は大したことになっているけど、この子らは、本当に大したことしてない。それがギャップ的に作用するせいで、ただ事ではないふわふわ感になっている。とか思ったり。
 さておき。
 4人娘ではやはり美冬さんがいいですね。全体的にふわふわした世界の中にあっても揺ぎないふわふわ感のあるお嬢様。色々抜けているのもよいです。でも、小春、夏希、千秋の三人は生前から友達だけど、美冬さんは死後に、なので思い出がない! からの偶然手に入った太陽光発電のデジカメで一緒の写真を、というとことか良かったですよ。あえて一人が生前からの友達じゃない、というのはナイステクです。ああ、デジカメ写真は当然のように心霊写真になります。どういう理屈か分かりませんが、まあ死後の写真写りなんて試した人がいないから理屈もくそもないんですが。
 さておき。
 人類は絶滅したといったな。あれは嘘だ。
 この巻最後に、もしかすると生存者か? という人が出てきます。これで、この漫画のふわふわ度が急転する可能性が出てきました。最後の人間かもしれないその人物は、なぜウィルス蔓延している中で生きているのか? とか気になる点もたくさんありますが、それ以上にその人物から小春さん達は見えているのか? という部分が気になります。そこがちゃんとしないと、相当変なことになるでしょうが、はてさて。
 ということで、ふわふわした終末というオンリーワンを見たい方は、ドネートだ!(I WAMT YOU)