ネタバレ?感想 鈴木コイチ 『ミツナリズム』2巻

ミツナリズム(2) (モーニングコミックス)
ミツナリズム(2) (モーニングコミックス)

 大体の内容「あっ、ここ普通の歴史物じゃしない辺りだ!」。と進研ゼミ顔するくらい、安土桃山時代の地味なところやあれなところをやっていく漫画。それが『ミツナリズム』2巻なのです。
 まず地味なところは、1巻でイントロした太閤検地のところ。石田三成がある村の検地をしようと立ち寄ったところで、という話でしたが、その村の領主の秘密に肉薄してしまい、という展開を見せます。そこらへんは年貢に対するベターな答え、といえるものであります。
 ただ、その秘密、隠し耕作地というのが大変時代に即したところが、やはり上手い。時代的に食糧生産の安定は難しい頃ですし、戦乱の中で上手く出し抜いていかないといけない。というのをちゃんと盛り込んでるとこが大変ようごぜます。そこに、現領主の父の話が挿話されて、納得度の高い秘密へと仕立て上げられていました。
 しかし、その秘密が秘密なだけに、バレたらやらねば……という状態であり、三成超ピンチ。そこかしこで小笑いを挟む余地があるくらいには、ですが、それでもその秘密はバレたらまずいもの。どうするのか。
 と思ったらそんなことはもうしなくていいのだ。民から搾り取るようなことをしない為に検地をするのだ、という検地の意義を伝え、事なきを。ここの納得度も高いのもいいですね。前領主と太閤検地の間には同じ思想が通っている、というのが中々、この時代において太閤検地ってとても大きなことだったんだなあ、と言うのを歴史の授業からうん十年して再確認させられました。
 でも、よくよく考えると、まだ若いとはいえそれなりの地位にある三成が手ずから、というのはあったんだろうか? という疑問もわいてきます。色々と手が足りなかった、といわれると成程、になる程度の疑念ですが。実際、今までやったことのない大規模なやつだから、手は足りないのは間違いないので、そう言われたらそーなのかー、するばかりです。
 さておき。
 1巻の感想*1でこっから先派手な戦闘無いのでは? などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。
 今回も一種戦乱要素があります。九州を攻める為に水軍を、というので、小西行長との出会いが、いきなり村上水軍の木っ端の襲撃で戦闘モードに。三成含む基本の四人ってこんなフットワーク軽かったの!? ってくらい速攻でバトります。そのちょっとしたバタバタも小気味よくて、こういうバタバタはいいなあ、と命が絡んでいるところでなごんでしまいました。そういう不思議な感じ、嫌いじゃない。
 で、その小西行長が、そうですキリシタンなのです。からの、キリスト教からみの話がこの巻のもう一つの顔。
 キリスト教宣教師が人身売買を! という、この時代のキリスト教のアレさ加減が爆裂する案件ですが、ここが中々に難しいあわいです。宣教師にもそれがいけない、という人もいるけど、これで育ててやるんだ! とする思想を持っているやつもいる。
 そういうのをきっちり出して、そして売買してたやつも軸線がちょっとずれているだけで、それが正しいことだと思っている、というので、単純に悪と言いきれないあわいもぶっこまれてきます。
 この辺、非常に難しい辺りです。宣教師が善、ということではない、キリスト教だからといって、よくない方面はしていた時もある、という球ですから。でも、人身売買していた宣教師は悪か、というとそれで良かったという人もいるかもしれない、となると、大変こんがらがります。
 たぶん、側面の違いで答えも違ってくる案件です。ちょっと難度の高いネタ。でもぶっこんでくる、という辺りがこの漫画、いいなあ、って思うところです。その上で、この件があっても南蛮貿易は維持する、事件は表沙汰にならない、という部分をきっちり残しているのもいいです。善悪という単純な二項対立ではない、というのが。
 さておき。
 個人的にすげえ好きなのは狩野永徳VS長谷川等伯の話。大阪城に使う襖絵の為に、狩野永徳になしつけてたら、長谷川等伯が出てきてバトルだ! となる話です。とりあえず長谷川等伯の図々しさと面の皮の厚さと期を見るに敏なとこが大変心地良かったです。一回こっきりの人物だけど、印象にズバンと残りました。アフロだしね! アフロは七難隠すっていいますもんね。
 ということで、九州を狙い始めた秀吉。色々画策して太閤にもなったしな! というので、じりじりと朝鮮出兵の足音も聞こえてまいりました。案外早いのか、まだ地味なイベントにクローズアップするのか。どっちにしろ、偉くなった三成、という辺りの話していくのかどうかでこの漫画の評価が変わってきそうです。どうなっていくのかねえ。
 とかなんとか。