レビュー『GUILTY GEAR -STRIVE-』(あるいは単なる好きな気持ちの発露)

GUILTY GEAR -STRIVE- スターターエディション 2022 - PS4

この項について

 ここではゲームレビューをやってみたい、というのではなく、GGSTについてどういうまとめの文章が書けるか、というのを試したい。試したい。勇気と知恵を。と『勇者ライディーン』のエンディング曲の言葉を借りて、言ってみます。
 そうです、試してみたいのです。自分がGGSTをどこまで語れるのかを。発売から1年以上経過しましたが、その間の蓄積でどのように語れるのか。つまり、そういう内容になります。推して知るべし!

ゲームの基本的な操作性ついて

 GGSTは所謂格ゲーですから、ど基礎のアクション操作性については重要です。ここがモサいと没入しにくくなりますし、そもそもの動かしている感が薄れるので、この“操作性”の悪い格ゲーは大体面白くないものです。個人的にはその例に当てはまるゲームはしたこと無い、と思います。意識せずに記憶から消している可能性はありますが。
 で、GGSTはどうか。これは全く問題ないといえます。特有の部分、空中ダッシュなどでは従来のGGシリーズとは感触が違いますが、そういうゲームなので、という言葉で納得できるかと思います。
 そういうゲーム固有の部分を抜きとすると、やはり動かしていて気持ちいいのは良い点です。そこは当然越えるのが昨今の格ゲーですが、それでも基本キビキビした操作感の中で、キャラクター固有の動きというアクセントがあるのは流石といえるでしょう。この基礎と応用のあいもりが絶妙です。
細かいところだと、打撃>ダッシュダッシュ投げがシームレスにこなせるようになったのが、気持ちよく行動を通せて楽しいところになっています。私のメインキャラではダッシュが無いので、サブキャラでも狙わないことが多いですが! 名残雪にダッシュ実装されたらやばいからしゃーない。

キャラクター性とその動作

 格ゲーの歴史はキャラクター性の歴史、そしてキャラの動作の歴史です。相手が自分と違う動き、あるいは自分が相手と違う動きなのが、初期からの格ゲーの要諦とも言えます。この辺を語り出すと長くなり過ぎるのでいずれ他に項をとって語りたい。その意志だけ残して、つまり格ゲーとは差異が肝だと完結させます。
 その差異については、GGシリーズは昔からキャラクター性と、それに対応するキャラの動作を突き詰めてやってきたシリーズです。2作目でアケデビュー作のGGXから顕著になっていく傾向ですが、それから20年以上経った現在において、その傾向は更に磨かれています。
 パワータイプからスピードタイプ、正攻法からトリッキー、近距離ラッシュ重視から遠距離重視まで、様々なキャラクターが様々な動きを魅せます。
 本当にキャラクター毎で操作感覚、動作か違います。なのでメインで使用するキャラクターを決めるのも中々に大変ながら、それをCPU戦などで遊びながら探るだけでも楽しめます。それくらいに、キャラクター性と動作が高いレベルでまとまっているのです。

キャラクター性と動作についての例示

 もう少し具体的な話をすると、筆者の持ちキャラである名残雪はGGSTからの新キャラゆえにそのキャラクター性と動作、操作感というのが尖っています。
 GGST、というかGGシリーズは機動力の印象が強いゲームです。ダッシュ、二段ジャンプ、空中ダッシュをほぼ全キャラが標準装備しているのですから、それは当然の印象でしょう。
 しかし、名残雪はダッシュも、二段ジャンプも、空中ダッシュもない! という機動力面でないないが尽くされているキャラなのです。これは同じ鈍重キャラの投げキャラ、ポチョムキンでも二段ジャンプはある点を考えると、如何に機動力がないか、というのが見えてくるかと思います。
 その機動力の無さを考えると、機動力万歳のゲームで何その縛りプレイキャラ、と思われても仕方ないのですが、ここに他のキャラクターにない前後に高速移動する必殺技の存在と、必殺技を必殺技でキャンセルできるの二つの要素があることで、普通に機動力があったらずっこいなこれは。という納得をさせられる、そういうキャラに仕上がっています。
 更に、この鈍いようでいて油断できない機動、というのがストーリーモードでも描写されており、あの動作がここの動きに、という納得も得られたりします。
 この、動作が生むキャラクター性と、キャラクター性が生む動作が複雑に絡まる感じ。これを提示出来るから、GGSTは名作格ゲーだと名言して差し支えないのです。

対戦は格ゲーの華

 格ゲーとして、対人戦はとても重要です。華と言っていいでしょう。
 特に、GGSTはキャラクターによってキャラクター性とその動作というのが極端なくらい違うので、対戦でも各々の個性のぶつかり合い、という形になります。
 そのせいもあって、対戦バランスがいいか、と言われると大変苦渋というか、辛い組み合わせは、あります! って顔になりますが、それでもキャラクター性がぶつかっていくという点を考慮すれば、ある程度はしょうがない、となります。
 いや、対戦バランスはある程度崩れている方が、むしろ格ゲーは楽しいまであります。それもそうで、やはりキャラクター性がどうしても悪い意味で噛み合う場合というのはありますが、それがまた対戦の独特の楽しさを生み出す要因の一つ――特性同士のぶつかり合い――でもあり、更にそのキャラクター性ゆえにそうなる、というので、ある意味で納得出来てしまうのです。
 逆に言うと、キャラクター性からしてこの悪く噛み合わないのはあり得ない、まであるのです。その差を、キャラクターを扱って崩していこう。こういう嚙み合わせの妙があるからこそ、どのキャラを使っても対戦が楽しいのです。苦渋したように、わりとそれどころではないキャラがいるのは否定しませんが、それでも使いたいと思わせるだけのキャラクター性があるのが、GGSTの優れたところです。

所謂ランクマの仕様から

 対戦で細かいとこですが、このランクマッチ、GGSTだとランクタワーの仕様が個人的にはドンピシャというか、今後このタイプのランクマッチがデフォにならぬか、まであります。
 基本的に、ランクマッチというのはポイントの増減で自分のランクが決まる、というのが通例ではありました。それに対して、GGSTはポイントをさくっと廃して、且つ階層を分けて適正階以下には降りれない仕様にしています。
 ポイントの廃止は、ポイントの増減で一喜一憂し過ぎる向きには大変よい施策です。このポイントに意識を持ってイカレ過ぎると、その数値が少なくてもですし、多い時でもかえってそのゲームに対するモチベーションが物凄く落ち込むものなのです。削り続けるポイントをみるとうぎゃ! うぎゃ! うぎゃああ! とボンガロテリー台詞が出てしまうくらいに精神も削れます。あるいは高い位置を崩したくないという意識になったりも。
 こういう、明確な数値は明確過ぎるがゆえにプレイヤーに圧を与えてしまう側面があるのです。
 その点に対してGGSTのランクタワーは主に直近の勝利数を見てランク、階層を上下します。全体的に勝ってるから上がるし、負けてるから下がる、というのが理解しやすい。この辺が大変技ありと言えるかと思います。
 また、適正階より下には行けない仕様なので、初狩りもほぼできない。下の方で数戦勝ちを重ねればあっと言う間に階層が上がってしまうので、また下でやる為には負けまくらないといけないけど、そうなると勝ちたがりな人ではほぼ負けまくるのは意味がない。なので初狩りはほぼない世界なのです。
 それと、階層の上下が勝敗だけだとあまりに上がり下がりし過ぎるのでは? という部分に、階層の強さ分布が決まってくると、安定する階層と言うのが出てくるので、案外腕前に見合った適正階に行きつく、という解があります。意外なほど、腕前通りに階層が安定するのです。
 なので、この安定階をさらに上にする、というモチベーションも持ちやすく、ランクマ疲れというのが少ない――ないとは言わない――仕様となっています。その延長線上の天上界チャレンジも含めて、ランクマ疲れを意識した施策だな、と言えるでしょう。

ストーリーモードもあるよ

 格ゲーのストーリー、というのは、その初期、スト2辺りは割と単純なものでした。勝って終わり、と言うシンプルな。
 しかし、その頃からは既に四半世紀を越えました。ゲームの表現力も作劇の練度も上がりました。それらの集大成がGGSTのストーリーモードです。
 これについては、思うところが色々あります。なにせ、PS時代、GG無印の頃から知って、追っているシリーズの、その話の一つの結末が今回のストーリーモードなのです。GG無印でやり出した話がまさかちゃんと決着するとは! レベルなのです。ある長いシリーズの話がちゃんと終わるという衝撃。某悪いアドルも終了してファンの方が感慨を持たれましたが、ここでも同じ形が巻き起こっていたのです。そりゃあ、思うところがあるのもしょうがないのです。無い方がおかしい。
 そのストーリーに対しては、ネタバレになるので、見てください! とシャクティ声しか出ません。特にCPU戦をすることもない、ただの3Dアニメ映画で、チャプターも分かれていて少しずつ見るのも問題ない形です。格ゲーに3Dアニメ映画が付いてくると言う豪華仕様、とすら言っていいでしょう。
 ただ、本当にソル=バッドガイの話が終わっているので、それに付き合ってない人にはこの感慨は分かりづらいかもしれません。一応、XrdとREVのストーリーはYoutubeに公式であるので、そこをカカッと確認してからだと、最低限ついていけるかと思います。どんとみすゆー! やりやりで!

他に細かいおすすめポイント

 GGST、最近の格ゲーなのでトレーニングモードが充実しております。現行格ゲーで最も優れている『ストリートファイター5』と比べると、フレーム表示がないので劣るとは言えますが、逆に言うとそこ以外は完璧と言える仕上がりです。
 この高いレベルのトレモは、分からないうちは出来ることが意味不明かもしれませんが、このゲームをやっていくにつれ、また対戦に踏み切っていくにつれ、その偉大さが分かってきます。マジで細かい所に手が届いているし、足りない所も自力で埋められます。
 こういうモードによくある基本動作の用例としてのミッションモードも、細かいとこをきちりと目配せした出来です。初心者の方はしばらくはこれとCPU戦をやるのもよいのでは? とも。これもいいものです。
 これまたよくあるコンボ用例、というのはお仕着せのはありません。ですがバージョンアップでコンボモードが追加されています。プレイヤーが作ったコンボを上げられて、それをもとに練習も可能なモードです。
 ほぼ制限なくあげられるので玉石混交なとこはありますが、ある程度コンボに対する知識がつけば検索機能で知りたいとこを引っ張ることは可能です。ここを集合知で、というのはかなりの英断と言えます。
 あと、本当に細かいんですが、ランクタワーなどで使うアバターの衣装を沢山の種類から変えられるのが大変いいなと。マジで色んな姿に出来るし、おまかせででたらめをやってごらん。みたいな無茶な姿を常用することも出来ます。これが結構楽しかったり。最初はこんなしょぼい絵面! とか思ってすみませんでした!

総評 格ゲー好きならばやろう。いいね?(ぐるぐる目)

 格ゲーとして大変いいものです。精緻なバランス、というタイプではないですが、それが逆に対戦物の妙味として立ち上がっている、というあばたもえくぼ状態になるくらいには、いい仕上がりなのです。
 格ゲージャンルが好きな方なら、結構! ますます好きになりますよ! と請け合える出来栄え。GGシリーズが嫌い、というダイレクトな方以外には大手を振ってオススメできます。
 GGシリーズは履修しているけど、最近の対戦にはついていけない、という方でもストーリーでソルの話が決着する、というだけでストーリーモード目的でもいいと言えます。本当に、それだけでもこのゲームに価値がある、とGGが好き過ぎてくるくるぱーな人な私は言っちゃいますよ。追加したもの無しならそこそこ安いですし、あるいはセールの時とか狙って、積極的ドネートだ! するといいかと思います。マジでソルの話はそれだけの価値がある。そう思えるのです。くるくるぱーなので。
 ということで、ダイレクトマーケティングしたので、今回はここまでとなります。したらな!