ネタバレ?感想 福田宏『ロックは淑女の嗜みでして』1と2巻

ロックは淑女の嗜みでして 1 (ヤングアニマルコミックス)
ロックは淑女の嗜みでして 1 (ヤングアニマルコミックス)

 大体の内容「口汚いお嬢様は好きですか?」
 元庶民ながら、母の再婚でお嬢様学校に通い、更にその中のトップお嬢様にならんとする鈴宮りりささんは、ある日偶然行った旧校舎でドラムをしばきあげる黒金音羽さんと出会う。
 この出会いにより、両者と近縁の人の運命が流転していくのが、『ロックは淑女の嗜みでして』なのです。
 この漫画、要素だけ見るとわりと近縁の漫画というのが目につきやすいですが、個人的には一番近いのは吉緒もこもこ丸まさお:大@nani『ゲーミングお嬢様』ではないかと思っていますが卿らはどうか。
 どこがか、というと、プレイ中の力の入り用、及びプレイ後に極端にテンション上がって煽りだすとこです。
 演奏中の真剣具合は、一曲やるだけで滝汗でるくらいにガチでやるとこが、格ゲーにだけはガチなのよ。というゲー嬢のそれと酷似しています。
 また、演奏が終わると人格が真剣になり過ぎた影響でハイになってるとこは、一試合して煽りだすゲー嬢の面々を彷彿とさせます。
 かなりこじつけですが、ロック女はゲー嬢の精神性に一番近いと、私は感じたのです。
 それはえも言われぬ妙な狂騒と、しかし確かにある熱さが、この漫画にある、という示唆になっています。
 勿論ゲー嬢みたいな頭おかしい漫画の近縁でも、近いだけなのであそこまでおかしくはない。むしろきちんと腑分けすればしっかり王道の漫画展開である。でもそれだけじゃない味わいがこの漫画らしさといえます。
 特に、鈴宮さんの家庭の事情は、鈴宮さんが母の為にお嬢様トップ狙ってたり、だけど鈴宮母のアトモスフィアがおかしいなど、主人公周りゆえきっちりしていながらも、黒鉄さんの方の事情は逆にマスキングしている。
 その謎としてあることをうまく活用して、話の展開を作っている辺りは上手い出来です。昔馴染みの登場とかで、最低2年は一人でドラムをしばき倒してた、という事情に何があるのか? と言うので、見事に引いてきます。
 それと黒鉄のハイになった後の言葉遣いの悪さはどこ由来? となったりもします。この辺の何がある感、良いものです。
 さておき。
 個人的にこの漫画がよいと思ったのは、ゲー嬢に近いのもありますが、鈴宮さんも黒鉄さんもわりと覚悟完了しているところです。
 今のところでは、親にバレたらヤバい! となっている鈴宮さんですが、ボーカルのいないインストバンドをすると決定し、演奏会のヘルプに入るとこがあるんですが、その演奏会で別口の歌手の人にインストゆえに舐められるという流れになります。
 そこで何を思うか、というと、これと戦うんだ、なのです。こう言う舐めてくる相手を黙らせないといけないんだ、と。
 ガチでインストバンドする、という覚悟がここで既にあるのです。バレたらヤバい! とか言ってましたが、この覚悟からして、バレてもなんだかんだで突き進むのが確定してないか? と思わされます。バレたら辞める人は、そこまでの覚悟しないよなあ、と。
 その辺はまだそう考えた本人も気づいてない。その辺の齟齬が、今後出てくるのかな? という感じです。
 自身のガチ具合に、鈴宮さんが気づくときは、結構この漫画の佳境な気がします。そこまでこの漫画が到達できるのか。見てみたいところです。
 さておき。
 キャラクターの話をしますが黒鉄さんはいいですね。黒ロンお嬢様は七難隠すって言いますもんね。
 そしてミステリアスな雰囲気に比さない、共に演奏することへのプリミティブな感情。さらに演奏後にキレる。口汚くなる。
 類型を絶妙に逸脱しているけど、これはこれで! となれる妙味があります。
 相対する鈴宮さんがメイン視点の漫画なので、鈴宮さんの中身は分かる分、黒鉄さんの中身は分からなくしている業前でもあります。上手いのう。
 しかし、本当に黒鉄さんの事情は込み入ってそうです。一人でドラムしばきたおしてた、ということに、なにかしらあるだろうとは思いますが、それはなんなのか。その辺明らかになるかなあ。
 とか考えつつこの項を終えたいと思います。したらな!