ネタバレ?感想 江島絵里 『対ありでした。~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』6巻

対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~ 6 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~ 6 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

 大体の内容『魅せまくりんぐお嬢様』。対戦の理としては異常なことを、しかし決めまくる白百合さまVSAliceAliceA戦、決着の運びとなりました。どっちかについては出来るだけネタバレ回避しつつ、今回の巻について語ってまいりたいと思います。
 美緒さんVSアリス戦、白熱しまくりでした。単純な(?)読みあいを越え、異次元の選択肢をとりまくる両者によって、観戦者たちは盛り上がりまくりんぐ。美緒VSカフェオレ戦も大概盛り上がりましたが、美緒VSアリス戦は行動の一々が観戦者の慮外な為、なんだあれ!? が飛び交う一戦となりました。
 というか、この漫画の観戦者、動画勢とかプロとか解説者とか色々いますが、皆が皆驚愕している、というので異次元のことをしているという解説としている点が絶妙にうまい。格ゲーマーならちゃんとやべえって分かりますが、そうでない読者もちゃんといるのをきっちり理解した上で、観戦者の反応を密にすることでそこに訴求していくというテク。それでもなとこは解説ページでフォローアップだ! というのもしており、大変良き仕上がりとなっています。
 その中でプロゲーマーゲキドさんの、俺は分かってるぜムーブが素晴らしく決まります。プロゲーマーであり、その中でも屈指の実力ゆえに、美緒さんがバカなんだよ。だからヤバいんだよ。というのを理解していて、流石だな、と思わせるところがありました。ゲキドさんほどの人がそういうなら、という面もありますが、格ゲーオタならこの試合のムーブ全体が頭おかしいのが分かるので、そこに対してゲキドさんの台詞が得心いくとして持ってこられるわけです。
 この辺の色んな人からの視点と言葉で格ゲーの一戦というのもいい。動画勢、プロ、海外プレイヤー。色んな人がその一戦を見て、色んなことをいう。的外れなものから、核心に踏み込むものまで。これがまぜこぜにされて混沌としているもので、格ゲーを魅せる。テクい!
 この一戦、頭おかしいですが、特に下タメからの下がり上で対空するとこのアリスさんスキル高さが個人的にはとても響きました。確かに理論上は可能なんだけど、それをあのタイミングでちゃんと出来る、というのが素地としての格ゲー力高すぎだろ! 案件です。
 実際問題、実戦で出来るのは練習してきたことだけなので、アリスさんがそれを狙ったことはあるのは間違いないですが、それがこの試合で引き出された、というのが、この試合が異常な理由として顕著に表れています。女の子二人が鼻血を出しながら格ゲーで相対している、というだけで完全にヤバい試合なんですが、その内容も当然ヤバいという魅せ方です。やっぱポテンシャル尋常じゃないなこの漫画。
 この巻ではアリスさんの成長と言う部分がきっちり出ていたように思えます。美緒さんに対する遺恨をもって対戦していたアリスさんですが、それを一回ゼロにして、相手は強い。ガチ戦う価値がある。と意識を強制的に移していく様に、その切り替えが出来た、という成長を見ました。それを引き出すのが主人公の片割れである美緒さん、というので倒錯というか、こんがらがっている感じがして好きです。
 対して、綾さんが完全に蚊帳の外だったのも好きです。美緒さんのライバルはあたしなのに……! ってなってて、でも今の状態だと美緒さんの方が一つ頭抜けちゃったかもしれぬ、というので、今後どうなるのか。完全に当て馬になってしまうのか、美緒さんのライバルとして再起があるのか。大変気になります。
 さておき。
 この漫画の格ゲー部分が意外にしっかりしているのは今更ですが、しかし先述の下タメからの下がり上の、格ゲーのマニアックな仕様の部分もちゃんとある、というのが素晴らしくいい感じ。格ゲー分かっているとしか言いようがない。
 で、よくよく考えるとなんだよ下タメ下がり上! ですから軽く解説すると、格ゲーにおける下タメ技を出すには、当然上に入れなければなりません。
 しかしこの上に入れるまでの猶予、出来る時間が少なすぎると難度が高くなりすぎます。実際に刹那しかないと流石に人間に出せるレベルではありません。
 なのである程度上を入れるまでに時間が、数フレームある訳ですが、その数フレームを利用して少しだけ、ほんの少しだけ後ろに下がってから上、というムーブな訳です。
 これで、通常は対空として後ろに行かれてスカるタイミングの跳びを落とせた、という話なんです。ここまで書いてなんですが、ほんまマニアックなとこ攻めてくるな、この漫画。
 その細かさこそ、その格ゲーをちゃんと楽しそうにみえる素地、やりこみが出来るという部分として立ち上がっている訳です。ガチの競技シーンにも対応出来るだけで名作なのです! って面構えです。やはり、こういうゲームがちゃんと楽しそうに見えるのは必要だと思いました。
 さておき。
 大会編はこの巻で終了。またいつもの日常に戻るなどと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。ちょっと不可逆な部分が色々あるので、それがどのように処理されるのか。特に綾さんは次回予告でなんかキャラが違う! してたのでどうなっちまうんだ……。ってなります。新刊待ち遠しいですね……。
 とかなんとか。