ネタバレ?感想 森長あやみ 『みっちゃんとアルバート』2巻

 大体の内容「便利な奴だな、アルバート!」。永続トラップ並みの期間続くかと思っていた『みっちゃんとアルバート』もこの2巻をもって終了となります。でも、最終的にみっちゃんさんの懐の深さは劉備並みですぜ。というのを見せつける感じに終わるのもまた、『みっちゃんとアルバート』なのです。
 この漫画はアルバートで駆動する漫画ですが、それにしたってアルバートの駆動系としての機能の高さは尋常じゃありません。ある時は地球の生物に対しての無知からくる勘違いで、みっちゃんさんが九官鳥になったと勘違いしたり、ある時はチョコレートの食い過ぎでチョコレートになり、ある時などはヘリウムを吸って浮いていたらハイジャック事件を解決したりします。わりとちゃんと事実を書いているのに狂気を疑われそうですが、本当にそういう話なんだよ! と声をビック大にして言いたいところです。
 個人的にチョコレートを食い過ぎたアルバートがチョコレートになる回が大変マストなので語らせてください。というか、まずチョコレートを食ったらチョコレートの特性を得る、という段階で発想の勢いが違います。相手が宇宙人とはいえ、流石にそこまでのとちくるった発案というのは、生半には出てきません。
 だって、生きているモノが溶けて、固まって、ですよ。溶かしたのを型に入れたらその型通りに、というのは確かにチョコだからそうなんだけどそうじゃねえだろ! な案件です。
 しかも、型が小さかったから小さくなって、という段階まで付き合った正気に対し、だからもう三つ作っておいたよ、という回答をデススマイルでぶち投げてこられては、こちらの正気が融解せずにはいられないのも分かっていただきたい。それぞれにちゃんとアルバートとしての意識があるっぽいというのでも駄目。完全に常軌を逸してしまっているのです。コワイ!
 なのにそのトドメで、更にでかい型で四体のアルバートを溶かしたのを入れて元通りだよ! という元通りとは……、と透徹のまなざしで虚空を眺める以外の行為を許さないド級のオチ。遠く、遠く……。
 さておき。
 そんなアルバート超便利かよ案件を挟みつつ、ゆるキャラに扮した宇宙人を狩るぞ! というムーブメントが巻き起こっていくのが最終フェイズとなります。なりますが、その暴徒たちの暴挙に流石のアルバートもぶち切れ、となったところで空からUFOが! アルバートの星の軍勢が、地球に進行を開始したのです! というまたしても怒涛の展開をぶち込まれます。そのアルバートの星の軍勢と、みっちゃんさんは如何にして戦うのか、というのはまあ一話思い出せ。となる感じから、最終的にみっちゃんさんの懐の深さと、アルバートの星の残念さが絡み合って珠玉のオチへと向かうのですが、それはまあ、見てくださいですね。軽くみつアル難民になったので、他の人もその苦行を負うといいや! と言って、この感想は終わり!

 ネタバレ感想 柴田ヨクサル 『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』3巻

東島丹三郎は仮面ライダーになりたい(3) (ヒーローズコミックス)
東島丹三郎は仮面ライダーになりたい(3) (ヒーローズコミックス)

 大体の内容「皆一生懸命生きているんやで!」。ということで、ショッカー強盗の頭目、中尾さんの話が大きすぎて、仮面ライダーになりたい人達の集まりが、その空気感のヤバさ以外特に印象に残っていないという、柴田ヨクサルマジックが発動し始めたのが、『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』3巻なのです。
 とりあえず、今回はなりたいライダー陣営の話は、V3の人とライダーマンの人ん家の長女さん登場し、実は兄妹で一番強いんだけど、ライダーに一切関係がない、というかむしろV3の人のせいでオール無視という地獄を見たという素性の持ち主で、それでライダーを嫌いにはならなかったというのが奇跡的なんですが、だからこそのライダー知らんなので、ショッカー相手の戦力にならないか? と東島さんが言っても駄目だとなるのもむべなるかな。諸々の、絶対ないを見たうえでそれでも、というのだから超強いんですよ。戦闘員を圧倒したV3の人を圧倒していたので。どんだけ強いんだよ。
 で、そんなガチャガチャしたところで、更にライダーマンの人こと三葉さんとショッカー戦闘員のユカタンさんが結婚式をしよう、となって更にガチャつきます。長女さんの仕事場でもある居酒屋で始まる、いきなりの結婚式! そこで兄妹喧嘩と式辞も絡まって、わちゃつきが止まらない! という感じで、なんか愛の儀式が成立した以上のことが何もなかったに等しい展開なのに妙な満足感だけはあるという、わりと意味不明の感覚を叩きこまれます。ヨクサル味!
 さておき。
 今回のメインイベントは、ショッカー強盗を思いついたやーさんの中尾さんが、ショッカー戦闘員になる話です。もういきなり脇の話をぶっぱなのかよ! と慄きますが、これはこれでショッカーの謎について接続する部分もあるので、ないがしろには出来ません。それを込みにすることでないがしろを回避する見事なジョブです。
 この中尾さん、色々あって今ではやーさんですが、そんな彼にも過去はあります。それが、走馬灯としてちらっと開陳されます。父親がたい焼き屋に失敗し、どっかのおばはんの愛人になる、と伝えて去る、という話なのですが、このだからその挿話いる!? 感が満点なのに、それがこの巻最後の展開に効いてくる、というのでもう駄目。好き。
 たい焼き屋に失敗して愛人となり消えた父が、そのたい焼きで再起を果たしていた! という、やっぱりこれその挿話いる!? なのに胸アツな展開! それを守るのが、ショッカー戦闘員となった中尾さん! 子が、父を、そうとは知られない形で救う! でも、この挿話あんま要らないですよね!? この振れ幅よ!
 そんな、ある意味入っていていいんだけどあんまり要らないのではという挿話ですが、怪人蜘蛛男が荒事系の仕事をしている、という話とも隣接しています。どうにもショッカーから資金がとかそういうのがないようで、荒事が最終的に怪人になって対処するようになってきて、結局仕事を変わらないと、とかよくやっている風でありました。
 そして、その荒事の過程で中尾さんは蜘蛛男に殺され、たはずなのに、なぜか生きていてショッカー戦闘員になる能力を持つにいたります。これがどういうやり方でそうなるのかは分からない、というマスキングをかましてきますが、それなりにショッカーになりたいという要望に応えることが出来るやつが、どこかにいるのでは? とも思わされます。あるいは、怪人が素養のあるのを戦闘員にしてまわっている、というのもありそうですが、どちらにしても、それを為す何かがあるはずで、そしてそれは誰かが作ったはずで、と考えてしまいますが、情報がないので答えは導き出せません。
 この辺がずーずーで終わるのか、ちゃんと種明かしされるのか。ある意味この漫画の成立はそこにかかっているよなあ、などと思いつつ、この感想を終えたいと思います。

 今回のまんがタイムきららキャラット三作取り上げ(2019年10月号)

まんがタイムきららキャラット 2019年 10 月号 [雑誌]

承前

 まんがタイムきららキャラットから三作を取り上げて、それぞれについて感想を書くという試みです。三作は中々に選ぶのが楽しいんですよ? 数ありますからね。
 選ぶのは好きな作品。とはいえ、号によって振れ幅がありますので、最大のゲインがあるやつ優先です。テンションが違いますよ、テンションが。
 それではいってみましょう。

伊藤いづも『まちカドまぞく』

 アニメ化して順風満帆の中、今回はアニメ1話から当然のように登場して小倉ァ! の声援を一身に受けた、小倉さんが面倒事に。しかし、その行動には不審があるよ! と良子ちゃんは言うのです。何かを狙っている小倉さんと、それをけん制する千代桃の間に妙なギスギスがあったとも証言し、ちょっと前に一枚岩になったようなアトモスフィアだったのが全くそんなことはなかったぜ! とするこの漫画の良心回路は結構なものだと思います。
 しかし、以前から勝手にこいつラスボスになるんやないけ? と思っていた小倉さんの思惑が思ったより早く露見しそうになっております。ラスボスではなく……、中ボス!? という形になり始めていますが、小倉さんの狙いとは一体何なのかで、そこの辺りも変わってきそうです。どこかを探っていたっぺれえのが前に提示されてましたが、そこがどこか、という情報は全く無いので、伊藤いづも先生も掌の上という状況です。早くはっきりして! アニメが好評な今しかないのよ! ←んなわけない

浜弓場双『おちこぼれフルーツタルト』

 行くぜ、テレビ局! ということでドル園の為にテレビ局に到着した一行。初手からイノさんがテレビ局=可愛い女の子が日本一沢山いる! という理由で興奮で瞬時にお手洗いにGO! してて前途多難を画としてぶっこんできます。イノさん、ドル園とか出場したら興奮で小ではなく……。←それ以上いけない
 さておき、今回も衣装は中々にエロス。背中ぱっくり空いてます。しかし、それだとブラは……? というホホさんの疑問がなければ、我々はそこを考えることはなかったのに……。オブラートに包んでスルーしてたのに……。というぶっこみから、で、それ結局どうなっているの? という部分には触れられない格好になりました。また絆創膏が活躍するのだろうか……。絆創膏という言葉がもう卑しいものにしか聞こえてこない……! 罪深い漫画です。←お前の妄想の方が罪深いんじゃないか?

みらくるる『メイドさんの下着は特別です。』

 超美人のブロンド美女(重複表現)来たる! 彼女の目的は、ご主人様!?
 ということで、鳴り物入りで登場したその女性は、なんとご主人様の妹君、イリスさん! 色んな意味でベッタベタですが、しかし、高身長でナイスバディな妹に対してちんちくりんなご主人様、というので対比がすげえな! という印象がぶっこまれます。しかも、それで16歳というのだから! 日本人も欧米人っぽい身体になってきた昨今ですが、まだまだ西洋のデカさは違うんですね! ←何言ってんだお前
 それにしても、ご主人様、19歳というのがまた。若いとは思っていたけど、まだ未成年! 一体どういう経歴がそこにあるのか、というのが俄然気になってきます。豪邸に住んでいるランジェリー製作者ってだけで、成し遂げられるのそれ!? なのに19歳! 末恐ろしい人ですね、ご主人様。

 ネタバレ感想 椿いづみ 『月刊少女野崎くん』11巻

月刊少女野崎くん(11) (ガンガンコミックスONLINE)
月刊少女野崎くん(11) (ガンガンコミックスONLINE)

 大体の内容。「カップルできんと読者不安よな。瀬尾告ります」。というと、野崎くん読者クラスタならガタッ! と立ち上がるし、どっちが!? どっちが!? ってなるでしょうが。落ち着けどっちもだ。そんな内容なのが椿いづみ月刊少女野崎くん』11巻なのです。
 瀬尾の兄妹、つまり僚介さんと結月さんが今回告ります。とはいえ、前者は、馬鹿僚介! お前まだ積み立て無かろうが! ですし、後者は、えっ? わりとそういう気持ちあったの結月さん!? という状態です。それがうまくいくはずがないのは、この漫画なので当然と言える形です。
 もうこのまま永遠にこの話続けられてもいいんだぜ、俺はよお! という椿先生の顔が見えるようなのが今までの遅滞でしたが、そこにとうとう梃子が入れられたのです。ですが……。
 まず僚介さんの方は、都先生が自然な付き合い方とは、うごご……となっていたところでちょっとやってみよう、という話になる段階でお前に気持ちねーから! 今後は分からんが今は全く発生してないから! なのですが、それでも律義にやる辺りが僚介さんです。後、やっている最中がほぼ漫画のネタにしている都先生も都先生です。この関係性は、いつか発展するのか? というあわいは残しつつ、その回の流れで自然にフった感じになっているので、僚介さんの未来は暗いです。いや、逆に脈はあるのか!? って読者側は思う流れなんですけども。この辺のムーブの特殊さは堪りませんね!
 さておき。
 瀬尾若松ペアについても書いておきましょう。とうとう自分=ローレライという図式を若松に知らしめるべきか! となった瀬尾さんが、ある意味一世一代の告白をする回なんですが、ここで割とあり得ないと思っていた、告白でドキドキする瀬尾さんという絵が見られます。お前にそんな人間らしい感情が!? というわりと酷いことを思いましたすみません。
 しかし、瀬尾さんが照れるとはなあ。そういうのとは縁遠い、そもそも色恋に対して縁遠いタイプだと思っていたけど、こんなところで乙女な部分を見せてくるとは。個人的にはかなりのダメージがありました。←ダメージ?
 さておき。
 さて告白の方は、となりますが、これはかなり範囲の広い感じになりました。告白の結果が範囲が広い、という意味不明のワードが出るくらいな展開だったのです。すっげえ照れが入って笑え! お前がローレライかよって! とかされると踏んでいた瀬尾さんに対し、若松くんは確かに笑いましたが、嘲笑するようなそれではなく、受け入れる笑みだったのです。この笑みの許容範囲が広い、と命名したいと思います。
 つまり、ローレライなんですね、な笑みなのか、また馬鹿言って、という笑みなのか、どちらとも取れる、非常にあわいのある表情だったのです。瀬尾さんは後者と取ったようですが、前者の可能性も、読者としては持ち得る。そういう笑みだったのです。若松くんが腹芸をするとは思えないので、翻弄しようとしてしているのではない、と思えば、前者可能性は結構あるかと思います。まだ、作中では不明なので、妄想ですが!
 さておき。
 そういう爆弾があるからなのか、「誰が主人公か提示しないと読者不安よな。佐倉動きます」する場面が多かったのがこの巻のもう一つの特徴でしょう。千代ちゃんが幸せならそれでいいけど、それでいいの? という場面が多かったという意味でもありますが。特に二人羽織のとことか、本当にお前それでいいのか? おいぃ? な展開でした。
 サイン会かあ、でもそもそも顔ばれするとまずいよな。なら千代ちゃん代役に、という野崎の発想自体はわりと穏当なんですが、それが二人羽織に到達した時点で異常な展開へと突き進みます。最終的に二人羽織だから食べる系しようとしだす辺りで、お前ネタ職人じゃないんだから……。という感想しかでない事態に。二人羽織楽しかったです、じゃねえんだよ野崎! 千代ちゃんも唯々諾々と受け入れない! ちゃんと落とすところは落とさないと! という、ある意味いつも通りなところもあったり、後、鹿島掘ペアが進展したのかしてないのか分からない位置にまたぶっこまれたりもしたのも、『月刊少女野崎くん』11巻なのでした。一番カップルに近いように見える鹿島掘ペアが亜空のムーブしだした……!
 とかなんとか。

 ネタバレ?感想 小林銅蟲『めしにしましょう』8巻

めしにしましょう(8) (イブニングコミックス)
めしにしましょう(8) (イブニングコミックス)

 大体の内容「まあ、なんやかやありますが、めしにしましょう!」。ということで、剛毅豪徹のご飯作るよー系漫画、『めしにしましょう』、堂々の完結となりました。オチとしては「よし落ちた! 終わった!」という古の古語がよく似合う、9人の戦鬼と人の言う感じですが、きっちり終わったのでその点をまずは褒めるというか、感嘆するというか、とにかく感情を発露しないといけないんですよしゃらー!
 それというのも、この漫画が、終わる……? と惑乱するくらい、オチがどこにあるのか不明だったのです。一応、マダレ先生の連載終了と、青梅川さんの連載開始というターニングポイントがあったので、そこに向かって終わっていくのだろう、という見当はそれなりにはついていました。しかし、なんかそこに行くのか行かないのか、とにかくそれより飯だろ! という腕使いで進んでいくため、このまま剛毅な料理作り続けていくだけで永遠に続くのでは? という錯覚に陥ってしまいました。なので、この巻で終了と言われても? え? 冗談? ってなってしまったのです。
 しかし、この漫画はここで終わります。色々と無茶苦茶なところが多々ある中で、終わっていく寂しさ、というのをきっちり見せて、しかしやっぱりめしだろ! というムーブで終わっていくそのらしさ! 最終回の料理が子豚の丸焼きというある意味究極のものだったのも、最後だから、全てを、振り切るぜ! という照井竜顔になってくるこの漫画らしい〆で、これ本当に作ったんだろうからすげえなあ、としか語彙が発露出来なくなりました。
 そもそもこの漫画は飯系漫画としては常に極北であり続けたといえるかと思います。常に美味いことのみ、あるいは思考の発露を実現することのみを目指し過ぎて着地点を見誤ることも多々あった、というのが既に極北です。ひたすらコンソメを追求し過ぎて謎の液体が出来た回とか、極北なこの漫画でも特に極北でした。そこまでする精神性!
その、美味いを超えるくらいに美味い追求する姿勢は、ライフタイムでリスペクト出来るもの。ある意味ではなんたる狂人の戯言! なんですが、しかしあまりに姿勢が極端すぎるのでリスペクト以外の行動がとれないというか、リスペクトという言葉が持つ抑止力を活用しないといけないレベルだったのは事実です。それがいいんですが、でもそこがなあ、という発言をしたくなってしまう、それもまた魅力的でした。
 この、作ってみたいとか食べてみたいとかを次元レベルで超越した料理群というのは、思い起こしてみるとやっぱり俺はもうヤバいと思う。そんな世界にある料理でした。食いたいとかじゃなく見てみたいという感想を持ってしまう料理。それを何年も作り続けた、と思うとこれは人類史に残る異形なのでは? と正常な思考をしてしまいます。そのせいで太ったので次の連載はダイエットだ! という展開も含めて、強度のネタ漫画でもあったんだなあ、と今大悟しました。そうか、ネタ漫画だったんだ! と書いて、この感想を終えようと思います。ネタ漫画だったんだ!←リフレイン

 ネタバレ感想 野上武志 『ガールズ&パンツァー リボンの武者』12巻

ガールズ&パンツァー リボンの武者 12 ガールズ&パンツァー リボンの武者 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
ガールズ&パンツァー リボンの武者 12 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

 大体の内容「ヤイカ、将たるに値するか」。という部分を見せつつ、しかし肝はしずか姫と鈴さんの間に横たわる西住みほ解釈問題。それが『ガールズ&パンツァー リボンの武者』12巻なのです。
 11巻でタンカスロン大会<大鍋>が尻切れトンボで終わり、まずいですよ! と思っていた我々ですが(突如の主語巨大化)、12巻ではヤイカさんがとうとう西住みほに戦車道で戦いを挑む方向に。
 だからこそ、一緒にやらないか。としずか姫を焚きつける、のですが、焚きつけられたしずか姫の方が、ヤイカに「御身では勝てぬ」と焚きつけ返しをかまします。それを証明する為に、名寄にて、一手御指南、というので、フラッグ戦でヤイカさんをはめころころそう、という展開がなされます。
 しかし、それは言ってしまえば些事です。次のことを話す前にちゃっちゃか片づけるくらいに。それに、焚きつけ合いになるというダージリンの予想通りの展開でもあります。ダー様、本当に自分の戦車道を見切ってるからプロモーター業に余念がないなあ、というのはさておき。
 今回の巻で重要なのは、しずか姫と鈴さんの間に勃発した西住みほ解釈問題です。
 西住みほ解釈問題とは? その名の通り、西住みほをどう解釈するかという問題です。今まで我々(今再び、クソデカ主語にて)は西住みほさんを近い位置で見てきました。それゆえに彼女に対する解釈、というのはそこまで多岐にはわたっていません。しかし、他の人の視点を介せば、それが全く違うように見える、その視点からすると、西住みほという存在はどういうことか? というのを、この漫画や吉田創ガールズ&パンツァー プラウダ戦記』などが示してきていきます。
 そういう意味において西住みほ解釈問題というのは、視聴者が近くに見過ぎていた西住みほという存在が、同世代にどれほどの効果をもって提示されたのか、というのを確認出来る、あるいは確認させるものとなっています。
 で、しずか姫と鈴さんの西住みほ解釈、これは違いがあります。この漫画の初期から、その部分にずれがある、と感じてはいたんですが、やっとここの巻にてそれが顕在しました。どうか、というと、しずか姫にとっては同じ修羅として戦いたい相手、というものです。
 しかし、しずか姫のそれは、この巻での西住みほさん登場によって瓦解します。自分のように、あるいは自分以上に戦車道にという運命に翻弄されたのに、西住みほさんは試合外では普通の女の子でした。それが、戦車道の頂点になり、修羅の道を進んでいるのに! ということが、運命に翻弄されて屈折のあるしずか姫には大打撃だったのです。故に、しずか姫は、戦いたい、から討ちとられたいという方向へと、西住みほ解釈を変転させます。
 しかし、鈴さんは違います。ただの女子高生ゆえにのある意味での屈託のなさで、あの中にいたい、という気持ちから西住みほ解釈に入った鈴さんですが、しずか姫と共に戦うことで、あの西住みほを超えたい、という地点へと到達しました。負ける為に、戦ってきたんじゃない! 戦うなら超えたい! という駒の一念! 黄金の精神!
 その精神性により、しずか姫の西住みほ解釈も更新された、というので、大変百合な、と言える巻になりました。ついでに遠藤さんも二人の輝きを近くで見せて欲しい、と吐露して、三人合わせての百合もありなのか! という大吾がある巻でもあります。ふつくしい……。
 さておき。
 メイン二人+一人の腹がくくられた訳ですが、それより個人的にはダー様の今後が気になります。この漫画を読む3割くらいの理由付けがそれですが、今回のダー様は先のヤイカVSしずか姫戦のプロモート以外では<大鍋>の後始末に奔走していた模様です。まあ、あれだけのことやったらそう簡単にはまとまらないよな、というのは理解可能かと思います。イギリス圏の癖をそこまで履修しなくてもいいのよ?
 と言って、しっかり西住みほVSヤイカの方もプロモートし始めている辺りの余念のなさは流石すぎます。その延長戦上で、ヤイカVSしずか姫もやっているので、本当にプロモーターを生業とする気になったんだなあ、という感想をもつばかりです。本気でそれがしたい、という理由からできるガチ具合です。
 この漫画が正史に付帯するなら、ガルパンは西住みほ時代から進んで、次世代の話も出てくるかもしれない。そうなると、本当に息の長い、みなに愛されるコンテンツになる! と妄言を垂れ流しつつ、この項を閉じたいと思います。

 ネタバレ感想 吉田創 『ガールズ&パンツァー プラウダ戦記』2巻

ガールズ&パンツァー プラウダ戦記 2 (MFC)
ガールズ&パンツァー プラウダ戦記 2 (MFC)

 大体の内容「カチューシャの改革は続く!」。この漫画は地吹雪のカチューシャの戦車道大会優勝を勝ち取るまでのタイポグラフィとして、マジで西住みほ時代前史をこの地に確定しよう、という術策を張り巡らしてきている作品となっています。マジでここまでやる気があったのか! という、自分が持っていた侮りを認識させられるくらいに、この漫画はマジです。そんなとにかくマジな漫画。それが『ガールズ&パンツァー プラウダ戦記』なのです。
 この漫画が、TVシリーズへと時間が向かっていくがゆえに、こなさないといけないプランというのは実は沢山あった、というのもまた確認させられます。何があるって? 様々ですよ。
 まず軽めの二つは、カチューシャの基本ムーブ、ノンナ肩車と、お昼寝です。この漫画を読むと、あそこまで不退転戦鬼だったカチューシャがそういうことする!? と思うのですが、未来である原作ではしっかりしているので、そこに対してやっていかなければなりません。ならばどうする? 解はあるのか?
 ここは素晴らしい解が出ます。つまり、カチューシャ主導ではなく、ノンナ主導だった、と。どちらも理路はしっかりしています。
 肩車についてはカチューシャ、当然あのちんちくりん。それが普通の人たち、それも戦車道の為に鍛えている、それに追いつくには普通では間に合わない。なのでノンナオンなのです。そうすれば間に合います。というのです。理路!
 ノンナオンと書いているのにいくらなんでも、と思われるかもしれません。しかし、この巻でノンナがカチューシャを肩車したシーンで、1P1コマで行われたそれの擬音がブッピガンだったのです。本当にブッピガンだったので一瞬何をされたのか分からなかったですよ。分かった後は噴出しました。もう、そう合体するのが当然起きることだった、もうちょっといえばその合体が私の完全体だまである、至極当たり前の特別なことだったのだ、って呈なのです。噴くしかない。
 それが、ちょっとおかしくない? 笑われない? というカチューシャに対して、そんなことはないですよ。と言いつつ、実際皆の所に行ったら笑われそうに、というのを、ノンナの所十三ビキッ顔で一瞬にして黙らせた辺りに、ノンナの本気を見ました。お前がしたかったのかよ!
 もう一つのお昼寝もノンナ主導です。どうしてもちみっこな為、エネルギーの絶対量が他の人より少ないカチューシャ。そのエネルギーを回復する為に、お昼寝をするべきだ、とノンナが主張して、ついでにシエスタは大人の女の作法ですよ、まで言っていいくるめるのです。その効果もカチューシャが理解したので、原作でもお昼寝している、という解なのです。理路! ついでに子守唄も最初からやっていたのも判明し、ノンナ好きにやり過ぎじゃねえか? という気持ちにも。ある意味原作のノンナと地続きなんだなあ。
 そういうコメディな部分だけではなく、何故カチューシャが2年生でプラウダのトップになったか、という部分の解答も行われます。これは3年がいなくなって、楽しく戦車道! を標榜する2年がトップになる、というので上下関係を、と2年生が1年生をシメる練習試合が行われるのですが、これに1年が勝ってしまう、というので2年の隊長がへこまされる形になるのです。
 しかも、この練習試合、カチューシャとノンナがいない中で行われるという、本当にガチで叩き潰す気だったんだな、案件なんですが、それに負けて失意の隊長に、カチューシャが代替案を示して、実質的にトップを取る、という形になっていきます。お互いにとっていい方向に、2年隊長は戦車道の普及の為に頑張ってほしい、というカチューシャの案は実際図に当たるんですが、それはさておき、そういう訳で、カチューシャはプラウダのトップに立ちます。
 さておき。
 そもそも、の所を話していないのにお気づきでしょうか。そもそも、なんで1年はカチューシャとノンナ抜きで勝てたのか? という部分です。これはこの漫画の根幹の部分です。簡単に言うと、カチューシャとノンナだけが不退転戦鬼では、ダメなのです。
 どういうことか。つまり、プラウダの戦車道チーム全てが、不退転戦鬼にならないといけないのです。戦車道は、二人でするのではない。チームで、大人数でしないといけない。そして勝つには、チーム全体が強く、不退転戦鬼になる必要がある。
 その為に、ノンナのつてで、リアル軍人、おそらくPMCでしょうけれど、が特別な教官として招聘されます。その地獄のしごきを受け、プラウダ戦車道チーム1年は、精強になり、2年をカチューシャとノンナ抜きで撃退できるまでになったのです。
 この地獄を通過したチームの面々は、強くなるというのが楽しくなる、という地点に到達しました。楽しく戦車道する、という2年の方針に、違うアプローチながら到達してしまったのです。2年生の面目丸つぶれまではあります。しかし、だからこそ、2年の隊長はカチューシャにその隊長職を譲ったのでありました。
 さておき。
 そういう地盤堅めをしたカチューシャは、戦う相手の調査へ向かいます。そう、黒森峰に潜入だ! カチューシャはあのナリなのですぐばれる、ということでノンナが中から、カチューシャは外から、という役割分担で黒森峰を探りますが、これはどうなるやら。本当の怪物というまほさんの力量話とか、みほさん登場! とかまだまだ前史として見所があるので、カカッとそれらが見たいなあ、と思うのでした。