感想 森繁拓真 『となりの関くん 1』

 大体の内容。「遊べ!男の子!」。でも、遊ぶタイムは遊ぶタイムとしてきちんとしましょうね? という言葉が出てきそうなタイミング、つまり授業中に遊ぶ男の子、関くんと、その隣の席にいるがゆえに関くんの遊びを見てしまう女の子、横井さんが織り成す、特にハートフルでもバイオレンスでも感動でも爆笑でもない地味な雰囲気がする漫画。それが『となりの関くん』なのです!
 つまり、どういうことだってばよ! という方に向けてもう少し詳しく説明すると、横井さん(女子)の隣の席の関くん(男子)が、授業中にチャレンジブルにも色んな遊びをして、それに対して横井さんがリアクションしていく、という漫画であります。これだけ聞くと大変地味に聞こえますが、この関くんの遊びと言うのがなかなか奮っており、その初手である第一話からしてドミノ倒し(ギミック満載)を机上で敢行するというチャレンジブルっぷりであります。そのチャレンジブル且つ奮った発想の遊びを、見ない振りしたいのに見てしまう横井さんの葛藤とツッコミが、その関くんの遊びと両輪となって、この漫画を牽引していきます。
 この漫画の奮っている所は勿論関くんの遊びのバリエーション。毎回違った遊びを生み出し、一人孤高に授業中をワンダーランドにしてしまう関くんの遊びに対する貪欲さと発想力は、畢竟作者側の貪欲さと発想力に他ならないわけでありまして、それが毎度違う遊びをどう作っていくか、そしてそれに対して最高の視聴者である横井さんをどう反応させていくか、というどんどん道が狭くなる発想チキンレースを如何に走りきるのか、というのに視点を持ちつつ読むとなかなかハラハラ出来てお勧めです。
 さておき。
 この漫画の基本は日常系と言える性質です。ですが、ゆったりとした物はそこには無く、あるのは漫画ではなかなか表現されない授業中、という要素を授業ぶっちして遊ぶ、というフューチャーで一気に漫画として成立させてるというのは実際スゴイワザマエ。それによって一大遊びパノラマが開かれております。授業中という窮屈とも思える時間をここまで開放的にした、というのは古今例が無いように思ったりしなかったりあったりなかったりするのではないでしょうか。それだけで、日本の漫画世界の成熟ぶりというのを肌で感じる一冊となっております。まあ、そんな妙な勘繰りしなくても、関くんの弾けた発想の遊びに目が離せない横井さんがカワイイヤッター! で見るのも問題ないというかそれが本道でしょう。
 さておき。
 この巻で一番好きな関くんは遊びは編み物。というより、関くんの遊びっぷりに対して編み物上手であるがゆえに上から目線で入り、そして最後に敗北する横井さんが輝きすぎてうおっまぶしっ! な回なので、実際には関くんの遊びが好きなんじゃないんですが、まあそれはいいじゃないですか、熟練者の視点丸出しにして関くんを見つめる横井さんが可愛くて。そして敗北してしまう横井さんのうらぶれた姿が可愛いじゃないですか。このわざとらしいアップダウン! 嫌いじゃないですよ。この回もだけど、基本読者視点なのに、高い解説力のおかげで見事なツッコミキャラになってるんだよなあ。横井さん。それがいいんだ。
 とかなんとか。