感想 みずしな孝之 『いとしのムーコ 1』

いとしのムーコ(1) (イブニングKC)

いとしのムーコ(1) (イブニングKC)

 大体の内容。「ムーコとの日々」。この漫画は犬のムーコと飼い主のこまつさんの日常を淡々と紡ぐものです。過度な期待はしないでください。と、『みなみけ』アニメ無印の入りから入るくらい、ただの日常をムーコ主観でやるという漫画です。ただ、他の漫画との違う所はムーコが絶妙に頭が良くて頭が悪い所。普通の犬レベルから考えると格段に頭がいいのがムーコ。喋れないけど、こまつさんとかうしこうさんとか名前が理解出来ていたり、ボール遊びを開発したり、尻掻き防止の覆いを付けられた自分をかっこいいと思ったり、うしこうさんみたいにデブになりたくないとか考えたりと、なかなか頭のいい所を見せてくれます。でも結局は犬なのよね、という事で見える頭の悪い部分もあります。花火を遠くからしか見たこと無くて近くで見たら度肝を抜かれたり、ボールを屋根の上に投げたら落ちてくるというのが分からなくてこまつさん以外の存在を思ったり、水場があったら飛び込んだり。しかしそれがなんとも可愛い。頭の絶妙な悪さと純真無垢さが相まって、見事な愛玩動物っぷりを見せてくれます。
 対するこまつさんはそれほどキャラが立っているという感じはないんですが、それが逆にムーコの存在を際立たせているのも面白い所。基本、ムーコがこまつさんにかまって欲しかったり、かまってもらえたり、怒られたりがこの漫画の序破急、とは言いすぎですので、緩急と申しましょう。そういうものを担っています。こまつさん自体のプロフィールは謎というか、なんで山間部でガラス工房を開いているのかが全く語られないので、その辺の説明の無さ、語らなさがいつか埋められるのか、というのは期待したいですが、でもこの漫画の肝そこじゃないからまったくノー説明で漫画終わっても問題ないかな、とも思ったりもします。とりあえず、ムーコがこまつさんが好きで、こまつさんもムーコが好きならそれでいいじゃないか! という雰囲気が今の所は、ですが感じられて大変いい味わいになっていると思います。
 SNKG(そんな感じ)で、こまつさんとムーコのただの日常がつらつらと描かれる。それが『いとしのムーコ』なのです! 動物を飼っていた経験ありだと、自分とこの愛玩動物もこんな感じでじゃれたり考えたりしてるのかな、と思えて大変味わい深くなるかと思います。