祥人『日がな半日ゲーム部暮らし』についてカタリ

 祝電書化! もう新刊状態では買えない漫画でありましたので、これはめでたいですよ。グレートですよこいつは……。個人的に好きな漫画オールタイムベスト10に入る漫画ですので、この喜びが個人的に昂る……、溢れる……。と島田敏声を出させるほどなのです。だから、一体どういう漫画であったかと言うのを文章でつづっていきたいと思います。ということで、

いいか! もう一度祥人『日がな半日ゲーム部暮らし』の内容ついて説明しておくぞ!!(ホワイトボード打)

 『日がな半日ゲーム部暮らし』。どういう内容であるか。
 この設問に対する回答は簡単だから難しいものがあります。主としては主役のゲームバカみひろさんの、ゲーム部での高校三年間についての漫画、と書くと収まりがいいのですが、みひろさんが主体だった時期から後輩のあっきーさん主体になる時期というのがありまして、だからみひろさんが所属していた時期のゲーム部の話とした方がいいかもしれません。でも、最後はまた新たな部員が、という流れでもあり、つまりゲーム部自体の話だといういい方も正しい。成程、難しいじゃねえの。
 しかし、この漫画の内容の深淵、深奥はゲーム部の方たちが繰り広げるゲーマーあるあるです。そのあるある具合はあるある過ぎて鋭角に突き刺さる凶器めいているところが素晴らしいのです。それも、単発のネタを一本で終わらすのではなく、一つのネタをしつこく攻める業前でありまして、でもだからこそゲーマーには無闇に響くというものでありました。個人的にマストなのは1巻収録の授業中にちょっとうつらうつらしていたみひろさんがゲームが悪いんじゃないか? と先生に言われて、ゲームは悪くないんです! と力説するとことか、2巻収録の以後みひろさんの後輩となるあっきーさんがポケステ(略語で書いて現在で分かる人どれだけいるのか不明ですが)を落としてからのみひろさん達とあっきーさん達の相手へ気遣いとか、3巻収録ならあっきーが面白いってなんだ? って迷走するとこ、4巻ではあっきーさんがゲーム買う買わないで迷走して(迷走してばっかだなあっきーさん)、色々ともったいつけて最終的に買わない! となるとことか。と言う風に書こうと思えば大体の場面がゲームオタ、ゲーマーの悲しいサガが彩られている漫画であるのです。ゲームしてる人はどんなこと考えているの? というのに対する一つの回答ケースとして立ち上がっている、そんな漫画なのです。本当に、あるある、なんですよ。


3巻より混乱あっきーさん。面白いって本当に何なんでしょうかね。

 特に、上の一コマみたいにみひろさんとかあっきーさんとかのぐるぐるする思考というか、こいつらこんな面倒くさいこと考えてるのかよ! という部分は見所ですが、ここが本当に大変面倒くさいです。面倒くさいったらない。この面倒くささは祥人漫画の伝統芸でありまして、同じく電書化した『ユッカ』や次に電書化するという『ふーふ』にもきっちり受け継がれています。そちらの方はちょっと陰の気というか、面倒くさいをオーバークロックした感じですが、『ゲーム部』はそこよりも、面倒ながらもからっとした明るさがある面倒くささです。面倒なのは変わらないんですけどね!


基本的にみひろさんがゲームバカなのがいいんだろうか。

 キャラクターの話をすると、やはりみひろさんのゲームバカっぷりは清々しいです。先に書いたように思考がグルグルする為、気風のいいというアトモスフィアがある子ではないですが、でも妙にからっとしたこの漫画の作風への一助として存在しております。バカ、というものの持つ力というのを感じずにはいられません。後、後輩あっきーさんはゲームバカ度ではみひろさんに劣るものの、考えてしまう子としての存在感が強く、みひろさんと共にこの漫画のぐるぐるする思考の一因になっています。でも、基本的にいい子で応用的にもいい子なので、ゲーマーにとってクリティカルな部分を触ってくるとはいえ、可愛い子やなー、という感想が自然と持てる子であります。みひろさんはバカだな―ですね。この辺の違いが、ゲーム部のテイストの中に混在するのも、魅力の一つと言えましょう。
 後、時期的に何もないがある系というか、日常系の系譜の中にある漫画で、そのジャンルが明確化し始めた頃の一品でありまして、そう言う意味では電撃4コマで独自進化した日常系、いや、なんとなくゲーム系4コマの一つの粋、ベストコンディションの姿であるとして見ることも可能です。正直、単行本化するかどうかも分からぬ、おまけ誌にここまでの完成度のゲーマーあるある、そして日常系をぶっこんできた祥人先生には今思うと本当頭が下がります。その後の単行本化は大体続きでないパターン連打で、でもきっちり続きだしてくださいよ! 特に『ふーふ』! という状況からしても、やはり偉大な一作だったなあと、思うのであります。


最後に汎用性の高いコマを。コラ素材として使えそうですね?

 さておき。私事ですが、この電書化を境に、『ふーふ』の続刊と再開を祈らずにはいられないのです。『ふーふ』は百合ネットワークに乗せられる一品でありつつ、ゲーマーあるあるからオタあるあるへと深化した漫画で、特に主人公達から視点が後輩に移ってからの面倒くさい所が素晴らしく、祥人漫画のもう一つの粋なんですが、続刊してくれないんですよ。ぐぬぬ……。だから、先に書いたようにこの電書化でもりっと売れて、続刊の可能性が出るなら……。そういう気持ちもあって、この項を書いた次第です。でも、『日がな半日ゲーム部暮らし』自体も素晴らしい作品ですので、なんかピンときたらぽっちとしてあげていただきたい。とりあえず、自分は電書買いますよ。ここぞとね!
 とかなんとか。