あfろ『ゆるキャン△』を読み解く為の三つの言葉


ゆるキャン△ 1巻 (まんがタイムKRコミックス)


ゆるキャン△ 2巻 (まんがタイムKRコミックス)

 この項ではアニメ化するとなったあfろゆるキャン△』の紹介のような妄想文を垂れ流したいと思います。
 昨日はあfろ作品三作の紹介を書きましたが、『ゆるキャン△』については触れておりませんでした。それは、『ゆるキャン△』だけで紙幅が大変な量になると判断したからです。その判断があっているのかどうかは、このまま書いていくことで明らかになるでしょうが、とりあえず、『ゆるキャン△』を三つの言葉で紐解いていきます。それは、侘び、寂び、萌えの三つであります。それによって、『ゆるキャン△』が如何なる作品であるか、表していきたいと思います。

第一のワード『侘び』

 侘びとは、というのは中々難しいものです。色々なあわいがある。とはいえ、その意味合いの深さに対する考察はこのネタにおいてはあまり意味がないので、踏み込みません。単に、侘びという時のアトモスフィアを、飾り気のない飾り気、というものと規定します。
 その侘びがこの『ゆるキャン△』ではどういう風であるか。それは、一人キャンプという行為に現れていると思うのです。
 一人キャンプ、と聞いてぼっちの究極進化形という雰囲気で感じる方はいるかもしれません。それ程、他の<一人なになに>がぼっちの勲章めいているからでありましょうが、そんなちゃちな通俗など、一人キャンプの侘びぶりに比べれば塵芥の如きです。
 そもそものキャンプと言う段階で、一人で、と考える人はそれほど多くないと思います。実際、わたくしも一人でキャンプするということに考え至らない一人でした。キャンプと言うのは、複数人でわいのわいのきゃいのきゃいのするもの。義務教育での山の学校めいたのや、高校以後の学生でのサークル活動的なモノまで、大体において複数人でやるものであると思っていました。
 それが、一人でキャンプですよ。登場人物の一人、リンさんが、たった一人でキャンプをする。一話序盤序盤はただまきを拾って火をつけるというのを、たった一人だからそれも自分だけで、というのを見せられます。そこに規律めいたものはなく、ただ自然に火をつける為の行動を淡々とこなしていく。この、余分なものの無さ。だというのに、リンさんという人物の情報が過不足なく伝わってくる。飾っていない素のリンさんの、その存在がある。飾らぬ形で飾られているのです。
 つまり、侘びです。
 一人キャンプという行動によって、侘びが生まれているのです。これが、まず『ゆるキャン△』の特徴的な部分でありましょう。

第二のワード『寂び』

 寂びもやはりあわいの多い言葉です。やはりそこに突っ込むといつまでも話が進まないので、ここでは静然とした様、というくらいに意味をとどめておきたいと思います。
 さておき。この寂びについてはどこが『ゆるキャン△』で相当するか、というと、それはオフシーズンのキャンプ場という場です。サマーシーズンなどの繁忙期と違い、オフシーズンのキャンプ場は人がいません。貸し切り状態だ、とリンさんが言うのもうなずける、静かな場所なのです。その様がまさに寂びています。
 本来なら人がたくさんいるところが、しかしシーズンが違うと全く違う様相を見せて、それが堪らなく静かである。静謐ですらある。そんな部分が『ゆるキャン△』ではたくさん見られます。
 これも結構カルチャーショックでした。誰も居ないキャンプ場って、そんなのがあるんだ! という。この衝撃は結構大きいもので、それもそのはず一人キャンプという概念が無かったところに、更に静かに時間を過ごせるというオフシーズンでの利用を示唆された訳ですよ。ミックス! みたいな謎の言葉がするっと出てくるくらい、これは衝撃でした。
 そして、この静かな時間の使い方というのも寂びています。リンさんは、特にアウトドアることなく、静かに暗くなるまで本を読んでいたりするのです。
 ポエット! なんたる寂びた時間の使い方か!
 単に家で読めばいいのを、わざわざキャンプ場でやる、というこの静然とした時間の使い方! オフシーズンのキャンプ場でしか味わえない味わいが、そこにある。それが分かって、もうやられました。
 そもそもキャンプ自体、普通の生活の時間や空気とは違うものを味わうためにやるものですが、それがウェーイになり易いと勝手に思っていたんですよ。それなのに、このクールとすら言える静謐さ加減! 全く日常と違う場所で、それ故に味わえる時間を味わう。それは大変寂びたことだな、と思ったのです。この辺もまた『ゆるキャン△』の一つの側面です。

第三のワード『萌え』

 さあ、萌えだ! という大上段を振りかざしそうですが、ここでの意味合いは仄かに暖かい感覚、という謎ワードで一つお願いします。あまり掘り下げるとやはり終わらない部分ですので。
 さておき。萌え具合はどうか、というと、アグレッシブに萌え萌えー。という漫画ではありません。しかし、ちょっとしたことのちょっとしただけのことのちょっとした味わいが、またちょっとしたものなのですよ。
 この漫画のもう一人の主役であるなでしこさんというのが、大変味わい深い人物です。とても萌えるというタイプではなく、滋味深いというタイプですね。基本的にわんこタイプで天真爛漫な感じですが、相手への距離の詰め方が天性のものがあり、初対面の相手でも物怖じせず、リンさんにするっと近づくことに成功します。リンさんは結構人付き合いが苦手なタイプなんですが、それなのに、するっと、計算ではなく素で仲良くなるんだから、まさしく天性です。そして、この付き合いかたが大変萌えます。
 というのもまたアグレッシブタイプではなく、「いいな」「いい」というタイプの、ほんのちょっとしたことがツボにはいるタイプなのです。仲良くなるのに時間は必要ないんだ、と思わせるくらい、そんなにあって間もないのに仲の良い、リンさんとなでしこさんの二人なのです。お互いのことがまだ分かってないけど、一緒に楽しいことしたい。というのが関係性を細いながらも力強くしているのですよ。これがまあ、分かる人には分かる関係性萌えであります。
 また、造形面でも萌え度が高いと言えます。あfろ先生が漫画上手くなってるのか、昔はしゅっとした鋭利感があったのが、だいぶ丸い感じの絵柄になっていて、それでいてしゅっとしたところのアトモスフィアも残っているので、独特の可愛らしさがある絵になっています。その絵で、一心不乱にカレーラーメンをかっこむなでしこさんを1ページ使ってがっつり描くというのをやっていて、その所作とかがまあ萌える訳ですよ。この辺の萌えも、更に話が進んで関係性が進展する中でこの関係可愛いなあ、と思わせてくれる一助であるかと思います。

終わりに

 かように、『ゆるキャン△』は侘び寂び萌えが完全完備なのですよ。特に棘が無いけど、妙に読んで楽しいし、惹かれるものがある。そういう漫画になっています。その辺は、個人的には一人キャンプの衝撃が強いですが、他にも色々と響くところがあると思いますので、気になる方はお手に取ってみてください。外れじゃないですぜ!
 とかなんとか書いてこの項を閉じたいと思います。