(多分ネタバレありの)アニメ映画『ゆるキャン△』の良さについて語れる分だけ

大体の内容

 そりゃもう、『ゆるキャン△』アニメ映画見てきたわけですが、あまりに期待し過ぎてもう無茶苦茶駄目映画ならいいのに! という錯乱を、映画館の中で上映を待ちながらするくらいだったのですが、蓋をオープンしたらマジ名作じゃないですかモーターヤッター! だったので、どこがどう良かったかについて言語化して楽しもうと思います。

どこがどう良かったかについて その1 ちゃんと大人になっている意味がある話である

 今回の映画、話が原作より未来に跳躍し、そこで大人になった5人を見ていく、という側面があります。ここは、なンで大人にしたのよーッ! と、なンでエレクチオンしないのーッ! レベルの怨嗟はあるのは全然理解出来ますし、自分としてもそこはかなりのハードルだぞ、だったんですが、始まってみればちゃんと大人になった意味がある、という仕様となっております。
 それは、5人娘がきっちり大人になり、自分の仕事をしているというのが折々に挟まれ、それが有機的に話に寄与している、という形で示されます。この辺りの仕事と、今回のミッションであるキャンプ場作る話がきちんと互いに関与していて、この辺の無駄のなさには舌を巻きました。あおいさんの仕事の関係から、遊具を手に入れる展開になるのはマジでそこちゃんと使うか! ってなりましたよ。
 この大人になった意味がある、と言う部分は更にお仕事話という側面も持っています。このお仕事話としては、りんさんの出版社仕事としても今回のキャンプ場設立に関わっていたり、その作るのの元プランが大垣が立てた青写真からで、そこの話としてきっちりプレゼンを通す話も描かれたりするのが特に目立ちます。
 お仕事話要素、これは高校生では出来ないことですから、これがちゃんと出来ただけでも、大人になった意味がある、と言って問題ないのです。

補記

 この大人になったから出来た、と言う部分に、まだ青二才だけど任せてくれたんだな、というので仕事の連環というか、持ちつ持たれつである、という話も出て来て、そういう意味でも大人になった意味があるお話になっていたんだな、と印象に残っています。

どこがどう良かったかについて その2 ちゃんと『ゆるキャン△』である点

 皆様方におかれましては、『ゆるキャン△』とはどういう漫画でしょうか。様々あると思いますが、個人的にはやはり肩肘張っていないキャンプ模様が核にあるという印象です。
 その点においても、この映画『ゆるキャン△』はしっかり『ゆるキャン△』しています。数こそ多くはないですが、ちゃんとキャンプして飯も作って、という部分は入っています。
 捻じ込んでいる、という言い方になる人もいるかと思いますし、それについては、あ、理解可能。ではあります。でもそこはちゃんとテストとしてそこから色々フィードバックがあった、というのできっちり意味を持たせているので、捻じ込むにしてもきっちり意味のある捻じ込みでありました。
 それ以外で『ゆるキャン△』を象徴するのはSNSというかLINE的なやつの使い方。今回の『ゆるキャン△』映画でも、そこが発信源となって、話は推移していきます。そしてやはり効果的な使われ方をしていて、そこで繋がる、というのが『ゆるキャン△』だなあ、という印象が持てました。
 そういう意味では、ここぞはちゃんと『ゆるキャン△』だったな、というのが個人的な結論になります。

どこがどう良かったかについて その3 ストーリーラインの無駄のないタイトなつくり

 今回の映画『ゆるキャン△』は映画です。普通のアニメ放映と違って、話として一つは核になる話がないと、しっかりとした映画と言う感じにはならないのが、定説といったところでしょう。特に元々の『ゆるキャン△』は話の軸、ストーリーラインというものが明確にある話ではないので、そこについてこの映画『ゆるキャン△』はどうしてくるか、キャンプ場作るがちゃんと核になるのか、と見る前は散々っぱら不安と期待のダブルアタックだー! という状態だったのですが、それはちゃんとしていたので、不安は杞憂でした。
 で、このストーリーライン、非常に融通無碍にみえて、タイトな仕様となっております。お話として成立させる建前があるので、一回波乱があったりしますが、その波乱要素が進行する中でもタイトに色々起こります。そしてそれが、キャンプ場を作る、という点にもう一段のゲインを生じさせ、話が大きく転回することとなります。
 ちゃんと2時間の映画とする為に核をきっちりしつつ、周りの枝葉も核に回帰する形をとる。あるいは遊具の件だったり、あるいはりんさんの仕事の見つめ直しだったり。それがちゃんと核を基点にしているので、話がブレないんですよ。このストーリーはマジいい仕事だった。と褒めますよ。声高らかに。

どこがどう良かったかについて その4 泣き芝居なんていらないんだよ夏

 今回の『ゆるキャン△』映画の波乱要素のところで、あおいさんの仕事関係で湿っぽい展開になりそうになる場面があります。あおいさんのお仕事が学校の先生なので、それに関係したことなのですが、しかし、ここでこの映画は泣き芝居なんてさせません。
 泣きが入る可能性は確かにありましたが、そこはあおいさんが嘘やでー、で混ぜっ返し、聞いていた大垣がダイレクトアタックして泣きの雰囲気をかき消していました。あるいは、ちょっと泣いてたのかもですが、そういう芝居はなかったのです。
 そもそも、そのシーンは雨が降っていたので、涙はその雨が代用だ、と言わんばかりだったのが個人的には好印象です。ここで泣き芝居をしない、というのは『ゆるキャン△』だからこそ、涙は要らないのだなあ、と勝手な解釈をしたのでありました。

どこがどう良かったかについて その5 細かすぎて伝わらないタイプの細かいこだわり

 この映画、非常に細かいところで細かすぎるこだわりが結構あります。個人的に気づいたのはりんさんが枝をのこぎりで切るとこ。途中で切り方を教わるんですが、その教わる前と後で、確かにのこぎりの使い方が変わっているんですよ。のこぎりは引く時に切る工具なので、その引く、というとこをちゃんとやっているんですよ。正直微差なんですが、そこは油断なくやっていこう、という細かいこだわり具合を感じました。
 他には最初のシークエンスで、りんさんがキャンプ地予定の場所を早朝に歩いてみる、というとこの、じりじりと明るくなっていっているとことか、細かすぎるので勘違いかもしれないレベルで細かく、少しずつ明るくなって、最後日の出で一気に、というのをしていました。勘違いかもしれないんですが、たぶん俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

どこがどう良かったかについて その6 劇伴の圧倒的パワー

 『ゆるキャン△』の劇伴、BGMはTV版でもいつも効果的でしたが、映画になってそれは際限なくパワーアップ! もうこのアニメの盛り上がりは劇伴が作っていると言っても過言ではないレベルで、非常に効果的に音の出入りがある状態になっていました。
 映像から逆算して曲作っているか、合わせる予定で映像の時間を決めているんでしょうけど、マジ効果的過ぎて君は劇伴アニメだな! ってせがさん口調になるのもしょうがないレベル。ぴったしに劇伴が決まっています。正直、この劇伴の上げ下げを味わうためにスクリーンで見るのが正解! と言ってしまえます。後半慣れてくると、あまりに劇伴が展開に合わせすぎているのでこの劇伴の展開からはここで溜めて、くるな? って理解する謎の逆算をしてました。ある意味では欠点かもしれない(?)。

どこがどう良かったかについて その7 お仕事している君は美しい

 とりあえず大垣が可愛すぎるんですよ。開幕から勢いで飛ばしていくけどちゃんと配慮もあったり、自分が率先して裏方の面倒臭いところをやっていたり、波乱要素で曇るとこでもそこを隠さずちゃんと話は通していたり、波乱要素から一転攻勢のとこでの行動だったりと、大垣ゲーか。という様態をしていました。
 他の4人もそれぞれお仕事をしているとこがちゃんと描かれているのも、お仕事話として立ち上がっていますが、大垣はその中でもこの話の核と深いつながりがあるので、余計に仕事している感と、それゆえに美しいという感覚がありました。
 この辺の、なんのかんのきっちりと段取りは付けるとことか、野クルの頃から変わってないんだな、という地続きさを感じるとこでもあります。大垣が大垣している……。
 他の4人も、成長した姿である、というのがちゃんと仕事ぶりから感じらます。大垣がメインストーリーと近い、あとりんさんも、なので、そこが目立ちますが、例えばなでしこさんの仕事ぶりとかもちゃんとしていて、印象に残ります。アウトドア用品店の社員として話の大筋と直接的に関係しないとこですが、その後に心情理解に繋がる点でもあるので、そのくだりはありですね。

どこがどう良かったかについて その8 隙があれば入れてくるギャグな要素

 『ゆるキャン△』にあって欠けざるものとして、ギャグ、コメディ要素があります。元々明確にモリモリ入れられてはいませんが、しかし細かいところでコメディタッチとして出されるそれは、『ゆるキャン△』のアイデンティティと言っていいでしょう。
 映画の方もその辺はきっちりされております。隙があれば、きっちりそうした要素をいれてくるとこは、やはりこのアニメスタッフは信頼できるな、と思わせるに足るものです。
 映画で一番コメディの要素だったのが某ロボ激似のじゃんけんロボですが、これの十重二十重の扱い方は熟練の域です。あfろ先生エミュレートのレベルがダンチと言ってもいいでしょう。

それではまとめ

 キャンプ場作りを一つの核として、それに直接的、間接的に寄与する話をきっちり描いていく、というある種王道という作りのストーリーが見所。大人になった5人が見れるのもありますが、大人になったという点はマイナスにも振れかねない。しかし、そこがちゃんと意味ある作りとなっているので、個人的には全然オッケーでした。
 ぶっちゃけ、もっとダラダラした映画になるかと思ってましたが、きっちりタイトに作りこまれている内容で、この作品のファンだからこそ、大人になった、をこういう形として落とし込んできた点には脱帽です。
 ここまで書いて、特に惜しむらくがないので、私としては100満点中5000点くらいの作品です。こんな素晴らしい作品を、ありがとう制作陣! と書いて終わりとします。