大体の内容『ついに登場! 地獄の傀儡師、高遠遙一!』。ということで、金田一少年シリーズの中でも異彩を放つ殺人犯、高遠遙一が颯爽と登場するのが、『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』4巻なのです。
おそらく、金田一少年シリーズでも屈指の人気犯人’(人気犯人?)であり、実際犯人総選挙という意味不明のものでも一位を獲得したとのことである高遠遙一。その最初の犯罪が、今回のトップです。3巻の感想で、高遠の格が下がってしまうのでは? いつも犯人の不始末がギャグ要素になってしまうし、と危惧してましたが、その点は大丈夫でした。いつもならヒーコラヒーコラ言いながらトリックに東奔西走するところが、高遠にかかると全く困ることなく淡々と、しかし着実にこなす形に。あまりにその辺での笑い要素がないので、これつまらないですよね。と高遠が心配しだすくらいです。もうこの辺りで、流石高遠! という今までの高遠イメージからは少しずれた、でも確実に高遠の新たな存在感というものが立ち上がってきます。その後も、金田一との対決でどんどんボルテージがあがっていき、パッションが弾けるという方向にも突き進み、再び流石! と言いたくなるものがありました。人気キャラということでひいきもあったにしても、こういう格の作り方があるか、という印象です。
他に二編、魔神遺跡殺人事件と首吊り学園殺人事件もあります。その辺の内容については読んでいただきたい! で済ませます。
でも、面白いなあ、と思ったのは一つに犯人たちが基本ポジティブであるというのと、もう一つ、金田一運良過ぎじゃね? というのです。
このシリーズも4巻になり、事件も二桁に達しました。その中で感じるのは、犯人たちが全員ポジティブというか、この難局をどうにか乗り越えよう! という意志に満ちているところです。もう駄目だ、ならそのままお縄でエンドなので、当然っちゃ当然なんですが、この犯人たちの事件簿シリーズだと、よりポジティブさが際立っているのです。やることが多かったり、トリックが思いつかなかったりと苦労するけど、それでもトリックで自分を安全圏に、という意志が強い。個人的に一番好きな氷橋ネタの、実行の為なら命すら惜しまない、という一周回ったポジティブさは、だからこそ違うことしていれば……という思いにもつながります。この辺の金田一少年シリーズの持つそこまでするなら、という部分がよりクローズアップされているのでしょうか。この巻だと魔神遺跡殺人事件の、偶然で人が死んでしまったせいで泥縄、でもへこたれない辺りとか、この回のラストとかがその辺が際立っていたかと思います。
もう一つ、金田一運良過ぎる問題です。魔術列車殺人事件もですが、それがより表れているのは首吊り学園殺人事件でしょう。そのままならほぼ完全犯罪という事件でしたが、殺害対象が偶然金田一の解答をカンニングしていて、というのが鍵になって犯罪は露見します。というか、なんだその偶然。と犯人さんもりつ然としていました。魔術列車殺人事件でもこの手の偶然が金田一に謎を解かせるんですが、これもまた、この漫画が浮き彫りにする、辻褄を合わせる為の金田一少年シリーズの問題です。しかしそれをこういう形で露見させるのもまた、このシリーズの面白さであるなあ、とかなんとか。
次は「呪われろ!」が自分の兄弟の中で流行るきっかけの首狩り武者殺人事件がある! あれもかなりあれだったから、楽しみ!