ネタバレ感想 九井諒子 『ダンジョン飯』7巻

ダンジョン飯 7巻 (ハルタコミックス)
ダンジョン飯 7巻 (HARTA COMIX)

 大体の内容。「仲間も増えて、核心にも触れて」。でも、ライオスはいつも通りおのれの欲求に忠実なのが、『ダンジョン飯』7巻なのです。
 前の巻で仲間になったイヅツミ。ちょっとトラブルメーカーというか、まだ面々と上手くいってないので色々問題を引き起こします。特に結構偏食なのが問題で、その為に一悶着あったりも。しかし、結局飯食えば仲間という感じでそれなりに順応していきます。これがもうちょい悶着するのでは? と思っていたので中々の不意打ちです。そこをぐだぐだとはしない、という辺りと、そもそも偏食の理由が魔物、魔の物だからという解釈だったのが大変面白かったです。穢れを食う、って発想は成程、ですよ。ライオスがあんまりに自然に魔物食するから、すっかりそういうのっておかしいんだという気づきが遅れました。
 さておき、今回のメインは二つ。黄金郷についてと、センシの過去話。どちらもベールに包まれていたの話なので、大変興味深く楽しめました。
 黄金郷の方は、狂乱の魔術師のせいで不老不死となった、黄金郷の人たちが登場し、どういう経緯か、というのが語られます。というか、あの黄金郷の王であるデルガルらしき人が本当にデルガルだったのかよ! という今更の驚愕があったり。本人が言ってたじゃん! なんですが、風体があれだったので騙りだと思ってたんですよ……。という間違いはさておき、どうにも黄金郷の人たちは死んでも霊魂となって生き続ける、というのと、狂乱の魔術師があたまおかしだというのが個人的に成程と。
 前者についてはやっぱりそれがダンジョン内で霊魂が残りやすくて復活させやすくさせているのか、という納得して成程と。これは前からそういう因果関係があるのか? だったのが実際にその通りと判を押された格好です。
 後者は、狂乱の魔術師が霊魂達に語り掛けてたの、あれあたまおかしだから勝手に解釈してたのか、という納得をして成程と。なんか霊魂の表情が切なそうだったので、何かあるのか、と思ったらそういうことねと。勝手にした事ではあるけど、気持ちは分かるんだろうなあ、黄金郷の人たちにも。でも相手狂ってるから更に切ないんだろうなあ。
 さておき
 センシの過去については、今まで謎だったことがほぼ全体的に氷解したのが大きかったです。10年以上というのと、食事用の装備が充実し過ぎている点を、どうまとめてくるかと思ったらあのダンジョンに初めて侵入した者の一人だった、ダンジョン自体が地下にあり、それを採掘していて偶然発見した、という流れ。そしてあのダンジョンが、徐々に地表へと向かっていっていた、というのも分かったり。元々地下にあった訳じゃないだろうから、何かしらがあって地下にもぐってしまったんだろうか。その辺は狂乱の魔術師が何かがあって何かした、ということなんだろうか。まだ全然謎いですね、このダンジョン。
 さておき。
 センシの過去の話から、あの食べたグリフィンのスープは、もしかしたら……。というグロい話を持ってくる、と思ったらじゃあグリフィンのスープ、丁度グリフィン倒したから作って食べてみよう。となんのてらいもなく言いのけるライオスが、今回のハイライト。デリカシー! と思いますが、そこはセンシは大人だし当事者なので、食べてみるべきか、と重苦しく承諾します。このまま、全くそのことに決着をつけない、というのは確かにない選択肢ですが、それでもそれに踏み切るのは、なんとも重かったです。で、この味じゃ、ない! で一瞬場がざわつきますが、そこでライオスが更にも一とんち。グリフィンがチェンジリングでヒッポグリフになっていたんだよ! な、なんだってー!? となり、実食で解決しました。ライオスの観察力と推理力が証明される形でしたが、そこをシュローとの関係とか対人に使えない辺りがライオスだなあ、とも。
 さておき。
 今回は地上の方にも動きがありました。アレなダンジョンの対策チームが、島にやってきたのです。今すぐにでもダンジョンを破壊しつくす! という意気が強いので、今後どうなるやらですが、それでもこのままだと今ダンジョン奥地にいるライオスが一番この状況を打破できる、という事実はわりと大丈夫なのかと。だってライオス魔物のことしか考えてないようなところがあるじゃないですか。カブルーもこのダンジョンをどうにか出来るのはライオスだけ、だけどあいつ魔物バカだぞ、という評価してて、それが正答過ぎて噴きましたよ。まだ広くはないですが、徐々にライオスのヤバさが人々に浸透し始めているのだなあ、と感慨深く。そして、それなのにこのダンジョンをどうにかするのかはライオスに託されている点がもうヤバい。どうするんだろう、この話。
 ということで、新しく要素が積まれても、きっちり面白くしてくれつつ、でも最終的にライオスがどうするか、という点もまた積み重ねてくるという全体的にハラハラ加減がきっちり残っているのが嬉しい、7巻なのでした。