ネタバレ感想 高橋慶太郎 『貧民、聖櫃、大富豪』5巻

貧民、聖櫃、大富豪 (5) (サンデーGXコミックス)
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 大体の内容「国家予算を削り取れ!」。などと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。と言わんばかりの展開を見せつつ、しかし方向性としては悪くなかったんだよなあ、とも思わせる、そんな状況へと変遷したのが『貧民、聖櫃、大富豪』5巻なのです。
 今回、アンマリちゃんというタイガーの尾を踏んだのは、モレー陣営の京司さん。アンマリちゃんの国がデカい銀行なら、知らないうちにヤバイ資金を洗浄しようとしたり、租税回避に使ってりしているところもあるだろう、というモレーの言から、その辺を突っついて、確かにその証拠は出て来たりするのですが、そこを使ってアンマリちゃんの国への信用不安を作り、ついでにその情報を売って金を、という一石二鳥作戦に出たら、アンマリちゃんが秒でその不透明だったり危ない金の関係口座をシャットダウン。それによって、価値下がり始めているけどその行動をとるならという、絶好を見逃さない投資家によって、アンマリちゃんの国の株は買い支えられ、元より大きい資金を得るに至るのでした。アンマリちゃん判断力の鬼か。
 そっちの方は、絶好が一瞬にして絶悪に切り替わってしまって、おっさんであるのも含めて生きて帰れたら不思議だろうなあ、という状況なのですが、そこで次の巻に! なので、なんとなく死んだな。という感想がまろびでてしまいます。作った新組織とやらがまだ何かしてくるなら、生き残れる可能性はあるんでしょうが、うーん。おっさんだしなあ。男をもりもり殺した『デストロ246』の作者だからなあ、高橋慶太郎先生。
 他方で、聖夜さんの方は順調の動き。まだ出だしなので、広告塔からの委譲も視野に展開する聖夜さんに対し、街の一区画にどでかいモールを、という策のフワさん。しかし、そこは安倍野さんが待ったをかける形。そこをどうこうするには、安倍野さんをどうにかしないと、ということでフワさんが動く、というのもこの巻のエポックです。
 今までもそれなりに見てきたように完全に居場所を隠匿出来るフワさんに対し、安倍野さん側は毒を使って制する、という手段に出ます。広域に毒ガスを! それなら位置が分からなく手も問題ない! つか、えげつないな! パラケルスス
 で、毒を食らいつつもなんとか逃走に成功し、この勝負は安倍野さんに結構な痛手を与えられましたが、そういう存在がいる、という事実が知られたのは結構デカいことかもなあ、と。知られていない、が一番強みだったのだから、このタイミングでそれを切ったのはどう出るか。その系統に強いモレー陣営にもその情報がもたらされてるっぽいので、フワさんはしばし試練の時かもしれません。
 しかし、フワさんの聖夜さんスキー具合が結構度を超しているというか、自分を彼女、そして正妻扱いしているというのでもう、本当に本気なんやなあ、と。聖夜さん側も、好きなんだろうけど、ここまでではないだるし、この温度差のある百合というのも中々見応えがあります。齟齬が出て崩壊してフワさんが自暴自棄になる、というルートもあるだろうし、案外上手くいって本当に正妻ポジに、という可能性もある。この辺の匙加減というのが高橋慶太郎先生の場合、大変読みにくいというか、予断を許さないので、さて、そこもどうなるか。
 とかなんとか書いて、この項を閉じたいと思います。