感想 服部昇大 『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』3巻

邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season3 (ホーム社書籍扱コミックス)
邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season3 (ホーム社書籍扱コミックス)

 大体の内容「相変わらずのぶっこみ映画漫談!」。「はぁはぁ、どうやら邦キチのぶっこみにも慣れてきたみたいだ!」などとその気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。というくらいに、3巻ともなれば慣れる部分はあるものですが、それで高頻度で噴出してしまう場面に出くわしてしまう映画語り漫画。それが『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』なのです。
 今回の巻では、とうとう洋一にライバルな奴が現れます。特撮を語ろうという部活を立ち上げた御影特則がそれです。特撮、というと邦画では一時期の栄華を極めたもの。今でも特撮ヒーローものの映画は毎年作られています。つまり、映子さんとの親和性が大変高い。それでなくても、妙な愛で語られる範囲であるというのだけで、映子さんがほいほいと付いていってしまうのでは? と洋一は危惧するのです。お前、それどういう矢印が生まれているか分かってのであろうなあ!? 案件ですよ。そんなものまで、この漫画は出してしまうのか。基本映画語り漫画なのに、その辺すら抜き差しならなくなるのか!
 そういう危惧はさておき、今回の巻で語るべき部分、と言うのは全部ですが、それでは散漫になるのでググっと絞り、ゴジラ回について見ていきたいと思います。
 ゴジラ回は都合二回あり、先述の特撮部も絡んでくる、この巻のメインイベントといえる部分です。ゴジラ映画は様々にありますが、その中で映子さんが一位に選ぶのが、よりにもよって『ゴジラ FINAL WARS』! ゴジラに疎い人が見ても無茶苦茶だった、あの!
 そして、良かった部分はいつものインパクト重視です。ドン・フライが真っ先に出てくるのです。確かにドン・フライの圧強かったし、一人だけ吹替玄田哲章だし、死にそうな配役なのに全くそんなことはなかったし、と、インパクトで語るとそこと、あと人対人の尺長すぎ! に目が行って、ゴジラについての記憶が飛ぶという謎の仕上げだったのを、読んでて思い出してしまいました。
 ちゃんとゴジラも頑張ってたんですが、X星人のノリがどんどんおかしくなって「ガイガーーーン! 起動!」で振れ幅最高潮に達したりしてたのが記憶に残り過ぎるんですよね。地味に妖星ゴラスまで出てくる東映特撮オールスターなんですが、ネタな記憶ばかり残る。そういう映画だったと、再確認させられました。
 一位があれば二位もある。ヘドラゴジラ飛翔体がGOOD)やメガロ(ゴジラドロップキックがGOOD)もいいけど、やっぱりエメゴジでございまする! と、邦キチは言います。珍しく洋画ですが、どこの国のファンでもこれはなあ、というのを、しかし良かったと言い出すのです。NYの摩天楼を走り回るゴジラ! どんどんジュらしくパークのノリになる! 好物はマグロ! やっぱマグロ食ってるような奴じゃ駄目だな! までやって完全にお前好きなのはいいんだけどもうちょいオブラート包まない? という案件でした。殆どの人が、特部のマネジの言ったように「エメリッヒとは解釈違いなんスよ!」なのに、解釈あったというか、その解釈も楽しんでしまった映子さんの邦キチ具合が際立つ回となりました。
 後、他の人はそれほどでもないかと思うんですが、ヤンヤンのトラウマキョンシー映画回は大変良かったです。どこがいいかと言うと、ヤンヤンキョンシーにトラウマがある、という話だったはずなのに、ヤンヤンのトラウマ部位が全部映画ファン的な意味でのトラウマで、キョンシーに恐怖していた訳じゃない点です。そして、そこについて最後まで誰もツッコミをいれない! 最後に、あれ、これトラウマ意味違うんじゃね? ってなってもそれが正解なのか全く分からないまま終わってしまう! あまりといえばあまりの所業なので、ここで、それヤンヤン、トラウマの位相違うやん! とつっこんで、この気持ちを浄化しつつ、この項を終了したいと思います。こういう技巧があるか、服部先生……。