感想 狐古さやか 『穂高輪花のチャリと飯。』1巻

穂高輪花のチャリと飯。 1 (ヤングチャンピオン烈コミックス)
穂高輪花のチャリと飯。 1 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

 大体の内容「高坊の気持ちが分かりみ過ぎる」。穂高さんは官能系小説家。その趣味は、サイクリングと食べ歩き! ということで、穂高さんがサイクリングしながら食べ歩くというシンプルな中にも穂高さんの爆食具合に、あれ、この人食う!? と慄かされる漫画。それが『穂高輪花のチャリと飯。』なのです。
 基本としては、サイクリングをしつつ食べ歩く、という成程ね? という程度にはいい位置を突いた漫画です。確かに、サイクリングの後の飯はクソタレ美味い。一時期手王ったように自転車でうろうろしていた、正確には川口から池袋にチャリで通っていた経験上、それは大変分かる。だが、それだけでやっていけるのか? そういう考えも浮かびます。食漫画は既に飽和状態。ちょっとした程度では生き残れないぜ? と謎目線をもってしまうのも致し方ないと思っていただきたい。しかし、この漫画はもう一段、つまり食とチャリの上にもう一段、大食いという切り札を、わりとぱぱっと見せてくれます。
 大食い。穂高さんは本当に食べます。一話目からピザ二枚と揚げポテトをぺろり、と食ってしまいます。その後も、美味しい物をたくさん、パクパクと食べるのですが、その様が素晴らしく映えるのです。実際、その映えにやられてしまった高校生も登場する辺り、そういう部分をちゃんと意識した手管だったと言えるでしょう。やっぱり大食いだよな、穂高さん!(イマージナリー高校生の肩をバンバン叩きながら)
 個人的に良く食うなあ、と感じたのは5話目の九十九里で地魚定食とロブスター丼を、というチョイスのとこでしょう。結構色々ついてる定食の上に更に丼を! 丼も結構多いぞ。それ全部食えるの!? となるところですが、食えちゃうから穂高さん健啖。美味しそうに食べてくれます。
 さておき。
 こういう、美味しそうに全部食べる、という部分は大変気持ちがいいものがあります。大食いというファクターが現代の飽食時代をとかそういうのもありますが、それ以上に、やっぱり気持ちよく食べる、完食するという行為が他人にとっても癒しになる、なってしまうかもですが、というのがあるのではないか、などと考えてしまいます。この境地を開いた谷口ジロー孤独のグルメ』はやはり頭おかしかったんだな、という地点にも辿り着くのですが、でも、あんまり無理そうなのだと、逆に見てて気持ち悪くなるので、その辺の線引き、というのは結構あるのかな、とも。ゴローちゃん、そう言う意味でもちゃんとギリこいつならいけるのでは? ライン攻めてるもんなあ。そう言う意味では、定食と丼、というのは中々なギリギリなラインではないか、とも思います。そのラインなら、穂高さん食えるんだ!? とも、その辺のところがちゃんと信頼出来る、食べられる人だと感じさせられている、とも言えましょうか。
 さておき。
 この漫画は、グルメネタと自転車ネタが渾然一体としている訳ですが、自転車ネタの方も忽せではありません。漫画の方では普通に流されているところもありますが、そこはコラムでフォローアップという形をとっていたり。現世においてはチャリ=ママチャリしか乗ってないので、とめるのがないのってそういう、吊るすみたいなのを使うんだ! という知見が得られたりも。そういうのもあるのか。自分の家の周りではそういうオシャンティなのがない地域なので、見た時無かったですが、あるところにはあるんだなあ。とか、そういうのが。
 そう言う意味では有難い漫画であるなあ、と。この路線が突き進めば、全国展開みたいな話も可能では……!? という気もしますが、その辺の発掘とか大変なんだろうなあ、とも。東京だけで飯が食える、両義的に、だろうしなあ。でも偶には出張めいた動きも見たい、とも思ったりもします。ゴローちゃんも時折出張するし。なんでもゴローちゃんを基準にしてもいけないでしょうが。
 な訳で、グルメネタと自転車ネタ、に更にもうワンプッシュの大食いネタも絡めた漫画。それが『穂高輪花のチャリと飯。』なのです。