ネタバレ?感想 TYONE 『謎のリリリス』1巻

謎のリリリス 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
謎のリリリス 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「謎だ!謎になるのだ!」。高校入学初日に、唐突に拉致られたさわじまさん。一緒に拉致されたあいまりさんと一緒に相対するのが、謎の存在、リリリス! ということで、始まる謎なやべえ漫画。それが『謎のリリリス』なのです。
 唐突ですが番組を変更して、今のきらら問題児三傑について語りたいと思います。きらら問題児三傑を前にして、リリリサーが謎の番組変更で対抗するは因果。
 という冗談はさておき、そんなことを言い出すくらいの、きらら問題児三傑の一角が、『謎のリリリス』です。好き者をリリリサーと自己呼称させる(させません。お前だけだ。)だけのパワーがある漫画なのですが、その辺が何故生まれるのか、という謎について語って行きたいと思います。
 きらら問題児三傑の一つ、みくるん『はなまるスキップ』はゆるゆるした中にゆるゆるしてなかったら処理しきれないダメさ加減を内包していることで、はなまるスキッパーを狂乱のるつぼに叩き込みますし、同じくきらら問題児三傑の一つ、子野日『きゃすとおふ!』はメタとネタがごちゃごちゃしまくり過ぎてきゃすとおふぁーを混乱の洞穴に誘います。
 ではその三つ目たるTYONE(てぃーよね)『謎のリリリス』はいかなる手管を使ってくるのか。
 それについては、簡単に答えると、謎、と言ってしまえばいいでしょう。謎というモノが生み出す鋭敏さや怪しさ。そういうものでコーティングして、えと、すいません結局どういうことですか?! としてくる。それが『謎のリリリス』の手管なのです。
 謎の多い漫画、というのはよくあります。あるいは、謎こそ話、物語の推進力かもしれません。ですが『謎のリリリス』に関しては、おためごかし! なんと聞こえの良い言葉かーーーー。という漫画版『スクライド』台詞もじりが出るくらいに、謎と言うモノを都合よく使いまくってきます。つまり、謎の乱用です。
 まず、リリリスという、見た目美少女がただただ謎の塊。女の子の見た目だけど本当にそうなのかは不明だし、さわじまさんとあいまりさんをさらって獲物だ、といいつつ捕食行動がホホすりすりだし、色々なんでも出来るけど何で出来るかは分からないし、記憶もあいまいなのに変なとこの知識は残っているし、何でも出来るけど何も出来ないしと、とにかく謎だけで出来ている、という亜空のキャラ造形なのです。
 そのリリリスに関して起こることも、だから当然謎。さわじまさんの友達のゆいなさんは超直観力持っていたり、くぜちゃんさんは赤面すると周りを爆破したりするし、あいまりさんのリボンが実はリボンじゃないし生命体だし、リリリスを狙ってやってくるやつら、隕石を使うやつまでいるし、で本当にすべからくべし。この辺もなんでだ、という部分に対しては、謎だ! で押し通る。
 これが『謎のリリリス』がきらら問題児三傑の一つに上がる最大の理由です。リリリサー(感じとしては古の言葉ライフライナーみたいなのをイメージするといいだろう。)がその偉容に叩きのめされて信を誓うのも、そこの手つきがあまりに大胆かつ繊細だからです。
 普通に考えるとただの訳の分からん漫画なんですが、そこを女の子の可愛さとかゆるさとかで強引にねじ伏せる、という風にリリリサーには見えてしまい、それが結果としてダイレクトブレインシェイキング、ダイレクトに脳を揺らすのよ、とアヤ・エイジア台詞のようにされてしまうのです。謎の整合性とか、脈絡とか一切不明ッッ!! なとりあえず謎にしとけばいいだろうという、ある種の雑さすら、この漫画の味を受け入れたもの、リリリサーには堪えられないものとなるのです。うん、やっぱりこの漫画頭おかしい。
 さておき。
 個人的に1巻で好きな話は11話。リリリスほぼかけらも出てこない、くぜちゃんさんとその妹さん回です。この、一番の謎のリリリスをほぼ放置して行われるのが、唐突なルート分岐ネタ。この漫画だからルートが分岐してるのもそういうもんだろ、と完全に油断があったようだね。していたら、実はこのルート分岐はくぜちゃんさんの妹さんの特殊能力で、というのが明らかにされた時には、もう既に戻りようのないリリリサーであった私を、一生どこへでも、ついていきます! とユリア顔させるに十分な体験を得た思いでした。こんな訳の分からないことする漫画、ついていくしかねーべ! 模造刀の先制攻撃だべ! って脳が完全にあらぬ方向を開いた格好になりましたよ。そして、これと方向性は異なるとはいえ同レベルの問題児が、あと二つきららにはある。後は、分かるな? といいたいですね。今のきららおかしいです。カテ公に訴えるレベルで。
 さておき。
 でもね、本当に女の子可愛いんですよ、この漫画。その部分、女の子が活き活きと可愛い漫画、というきららの不文律からは全くはみ出していない。そこに関して言うと、本当にど真ん中ストレートなんです。さわじまさんもわりとベタなキャラ造形だけど、基本変な人の多い漫画なので逆に新鮮。もう一人のメイン、あいまりさんも眼鏡にリボン、と思ったらリボンは知的生命体が擬態したもので、とかいきなり情報量が多くなるのでこっちもある意味新鮮。そしてリリリスもちまい子感のある姿で基本的には可愛く見える。
 この辺の、とにかくかわいい感は、謎があってもちゃんとかわいいです。
 でも、そこがちゃんとしていれば後はどう扱ってもいいんだろう? という強者の笑みでやってるが、『謎のリリリス』なんです。あいまりさんのリボンの件とか、その最たるものです。その設定いる!? ってやつです。この辺り、ある意味ではきららを研究しつくした後みたいなムーブなんですよ。きらら初連載でこれをしてくる、という段階できららの仕上がりが如何にヤバいかってことでもあるかと勝手に思っています。斯様、活き活きの方向性が間違っていますが、それでも『はなまるスキップ』も『きゃすとおふ!』もこのきららの輪にある作り方をされています。そして当然、『謎のリリリス』も。
 そういう意味で、きららとは既に相当研究された地点にあるのだ、というのを勝手に想像して慄きつつ、この項を閉じたいと思います。きららガチ勢こえー。