『ゲームの歴史』について思ったことなどをつらつらと

ゲームの歴史 1
ゲームの歴史 2
ゲームの歴史 3

どうしても吐き出しておきたい

 岩崎夏海・稲田豊史『ゲームの歴史』に関して、
hanhans.hatenablog.com
hanhans.hatenablog.com
hanhans.hatenablog.com
 と三部作めいて書いたのですが、格ゲーマー視点以外でこの本がどこかおかしい、と感じた点をつらつらと書いていかないと、いい加減頭の中で残り続けているので面倒なのです。ということで、今回は変に感じる点を縷々綴っていきます。
 吐き出したい点は三点。用語の用途について、ダブルスタンダードめいたとこについて、そしてゲーム選択のアトモスフィアがおかしいことについてです。
 ゲーム関連の事実の誤り、嘘、大げさ、紛らわしいに関しては岩崎啓眞氏のブログ
www.highriskrevolution.com
 を参照していただいた方が早いのでそっちを見てください。ここではそれ以外でなんか変やなあ、という部分について言及していきたいと思います。
 さておき、それではいってみましょう。

壱:用語の用途について

 まず、この本で気になる点は用語の使い方、用途が変に感じるところです。もっと言えば、用語の使用半径がガバガバとでもなりましょうか。
 例えば、この本で頻出するワード、つまり著者が力を入れている部分のワード、「ハッキング」の適用範囲がガバガバです。単純に世に広まっている「ハッキング」の、コンピュータに侵入して、とかいうのではなく、何かあって、それをもとの用途と違う方向で使う、ということを「ハッキング」と、この本では言っています。
 言いたいことは分かるんですが、「創意工夫」とかでもいいとこを、逐一「ハッキング」とするので、とりあえず「ハッキング」って言いたいだけやろ。という疑念がふっと沸いてきます。
 それだけならまだしも、ここに横井軍平氏の「枯れた技術の水平思考」に対しては、「ハッキング」で置き換えないのです。この本において「枯れた技術の水平思考」はリスペクト対象なのだ、ということの表れです。さっきまでそういうのを「ハッキング」で済ませてきたのに、いきなりそこだけ「枯れた技術の水平思考」が出てくるので、そこにはやはり横井軍平氏リスペクトが根底にあるんだろうなあ、と感じました。
 他にも「箱庭」の範囲が現実世界にまで発生する為、ガバガバ過ぎて変やなあ、という状態です。

弐:ダブルスタンダードめいたとこについて

 世の中にはあっちでいったこととこっちでいったこととで話が違う、というダブルスタンダード事案は油断するとあるものですが、この本もそのダブルスタンダードめいたとこがちょいちょいあります。
 一番気になる点は、初代ドラクエのホスピタリティ、おもてなし精神は肯定しているのに、PS期のゲームのホスピタリティ、おもてなし精神は否定するとこです。
 初代ドラクエの最初のシークエンス、つまり城の中にいる状態から、話すことやアイテムを取る、鍵を使うなどの基礎の動きをすることでチュートリアルというホスピタリティについては、大変高評価をしています。
 しかし、PS2期の辺りの話になると、最近はなんでもおもてなしする、と低評価をしています。PS2期のチュートリアルはそれはそれで現代的ホスピタリティだと思うのですが、初代ドラクエの頃のRPG初心者と現代のRPG初心者に何か差があるとかいう言及などもなく、とにかく悪いみたいな文章が載っていました。
 初代ドラクエの頃と現在とではゲームの質が違うから、ホスピタリティの質とかも変わってきているし、そういうのに対して色々なアプローチもある、と思うのですが、その辺はにべもなく、であります。
 こういう細かいダブルスタンダードがちょくちょくあるので、変やなあ、という状態になるのです。

参:ゲーム選択のアトモスフィアがおかしいことについて

 この本、ゲームの歴史と銘打っているので当然ゲームの歴史の話をするわけです。しかし、その時に取り上げられるゲームの選択、そのアトモスフィアがおかしいのです。
 具体的に言うと、ゲーセン系、つまりアーケードゲームとPC系、特にエロゲと同人ゲーの分野が非常に手薄なのです。他のとこもチョイスが微妙ですが、ことアーケードとPCは特に弱い、あるいは杜撰とも言えます。
 アーケードは初期のインベーダー辺りはいいんですが、その後のシューティング、格ゲー、音ゲーは全くアウトオブ眼中。『ドルアーガの塔』とか『グラディウス』とか『ストリートファイター2』とか『ビートマニア』とか、一時代を作って、未だに影響力のある作品について全く紙幅を割いていません。セガの大型筐体とか『バーチャファイター』とか、あと『鉄拳』とかは出るんですが、どちらかというとPSとサターンの違いについての言及だったりします。そこでも『バーチャファイター』はレバガチャで戦えない。それに比べて『鉄拳』は初心者でもガチャプレイで、とか言い出すので雑なので、色々お察しではあります。
 PCゲー、同人ゲーはどうしてもエロゲの文化圏について話さないと、なのでそこは仕方なかったのかもしれないんですが、日本にインディーが生まれなかったという言説が出てきて同人ゲーは? という疑問がすっくと立ってきます。上海アリス幻樂団から自転車創業まで、色々あったやろ! と憤りが出るのもむべなるかな。洋のインディーズとはまた違う層ですが、ない訳じゃないのでは……。となります。
 こういうチョイスがやたら弱いところが頻出するのも、変やなあ、という思いを持つところです。

まとめ

 とりあえず、事実誤認の点以外でも、変な点は色々ある本だ、というのが実際のところだ、という話でした。どうにも力が足りてないというか、ちゃんと配慮がないというか、そもそもダブスタは気をつけろとか、それより唐突に脳の話はやめろというか、とにかく言いたいことはありますが、とりあえず今回書いたので本当にさぱっとしたので、これでもう関わり合いにはなるまい、とけりをつけて、今回は終わりとします。したらな!