[漫画]ネタバレ?感想 山口貴由 『劇光仮面』2、3、4巻

劇光仮面(2) (ビッグコミックススペシャル)
劇光仮面(2) (ビッグコミックススペシャル)

大体の内容「実相寺のキンキンな理由判明!」。1巻でテンションが異様な形で研ぎ澄まされていた実相寺ですが、2巻でその理由の一端が垣間見えました。半ばなし崩しから、とはいえ傷害事件を起こしてしまっていてのです。それがなくても鋭いテンションではありますが、それがあることで一気にガチ度が上がってきます。
 というか、劇光服の性能が単なるコスプレの枠を超え過ぎてて、そりゃ下手に触れたら危ないよ、というものになっています。オーバースペック過ぎる。そりゃ装着に署名もいるし、そりゃ目ん玉ポロンも起きるわ。
 こんな性能の装備、何に使うんだ? でもあります。対人に使うのははっきりただの暴。捕まるレベルなのは、実際実相寺が捕まって裁判まで受けたので、明確化されています。
 しかし、こんな力があるならどこかで使うことになるのは、お話ゆえに当然ある。所謂チェーホフの銃です。
 では何処で?

劇光仮面(3) (ビッグコミックススペシャル)
劇光仮面(3) (ビッグコミックススペシャル)

 大体の内容「突然代理戦争」。劇光服の過剰とも言える性能は何の為にあるのか。その一端めいたのが、架空円谷である一ノ谷と架空東映である東栄の代理戦争の様相を呈する3巻のバトルです。
 特に一ノ谷ファンと東栄ファンが戦争めいたことをしている訳ではないのですが、一ノ谷側の姿の実相寺と東栄側の姿の藍羽のバトルの構図は完全に代理戦争なのです。
 勝手に戦うな! ですが、このバトルは人間が強化服で戦うというものの中でかなり人間寄りのもの。
 せめぎ合いが人間の実行出来る、あるいは許容出来る範囲ギリギリのもので、かなり面白かったから無茶なとことか代理戦争だとかの突っ込みどころを不問にさせられます。
 とはいえ、やはり劇光服の性能は人相手では過剰。それは山口貴由先生も重々承知しているからか、3巻最後でいきなり物語の方向性がぐらっ、ときます。
 何が起きている!?

劇光仮面(4) (ビッグコミックススペシャル)
劇光仮面(4) (ビッグコミックススペシャル)

 大体の内容「本物」。ということで、本物が登場します。出るんですよ、本物が!
 ということで、3巻ラストで一気にこの漫画のリアルのラインが明確化しました。本物の怪人、ありの世界になったのです。
 これは少し虚を突かれました。3巻のあれ、なんか精神世界的なヤツだと思ってたのです。しかし、実際にそれが起きていたことであり、あのまま藍羽は爆ぜた、ということのようだ、となります。
 爆ぜて死んだのか、それとも生きている可能性があるのかは現段階では精査されていません。そこはどうなんだろうなあ、とはなります。普通に考えれば、爆発四散なんだろうし、そう思えるけど、なんか敵として登場もあり得るのかしら。
 そこはさておき、今回の巻で出る本物はまだいます。最終的にそれとの対峙でこの巻は終わりますが、人間相手だと強すぎる劇光服が、では本物に通用するのか。相手も相手で変な特殊能力がないっぽい。硬さとパワーだけパターンなのかしら。なのでワンチャンあるかもしれない。
 ですがそれより、怪人についてはなんか色んなことをよく知っている雰囲気でした。藍羽が成ったモノを生物の分類のような形式で呼んでたので、あれら怪人というのが組織立っているのかしら。とも取れます。
 あと、その怪人がわざわざ人間の皮を被って人間社会で生きている、というのも示唆するものがある気がします。
 人に紛れ、いつか来る日を待っているタイプなのか、単なる偶然でそう生きていくことを選んだのか、あるいは『フランケン・ふらん』のセンチネルの話のように、組織が目的を果たせず潰れてちゃったから野良怪人してます、なのか。
 その辺が結構気になります。皮に瞬きをさせる装置など、明らかに人間とは違うゆえに色々な仕掛けを皮の方に施してる段で、単体ではなく団体で何かしていた、あるいはしているのは間違いない。何かしらの組織の存在が匂います。
 となると、当然可能性が浮かび上がります。
 本物の変身ヒーローの存在が。
 仮面ライダーからセンチネルまで、怪人のいるところには数多変身ヒーローがいました。
 この漫画でもそういうのがいるのか。
 ここは結構思案のしどころです。実相寺がそのヒーローになるのもありなんですが、ここはそっちの方の本物の可能性もみてみたい。
 話の筋からすれば、ヒーローは実相寺とかになるのが自然といえますが、そう易々といくのか。というのもあります。生半な展開が待っているとは思えん。むしろ本物の変身ヒーローがいてこそ、実相寺の存在が輝く、みたいなことしてきそうです。
 そういう意味では、高性能人間、超人な漫画をよく描いてきた山口貴由先生が普通に毛が生えた程度の凡俗でどうヒーローするのか、というのもこの漫画の一つのやりたいことなのかなあ、とか思ったりするのです。
 そういうわけで、現在の実相寺は非常に危険なまま以下次巻! させられてやっきもきです。ヒーローという部分では凡百な実相寺が、この難局を乗り越えられるのか。
 ヒーローになれるのか、が気にならない、ヒーローにはなるんだろうけどそこが描きたいのではないのでは、逆に言うと山口貴由先生がある意味で今までで一番描きたい漫画はこれなのかしら? とも言える『劇光仮面』、どうなるか注目しておきます。