感想 田口雅之 『ブラック・ジョーク 6』

ブラック・ジョーク 6 (ヤングチャンピオンコミックス)

ブラック・ジョーク 6 (ヤングチャンピオンコミックス)

 大体の内容。「ランオーバーは自重しない」。というよりは田口せんせが自重しないんですけれども。
 この巻は大枠の話は二種類。ランオーバーが自重しない話と、謎の暗殺者パペット編。パペット編は最後まで入るかと思ったら何故か次の巻に持ち越しになってモニョる。パペット編は最後まで読んでるからオチ分かってるだけに、再読すると吉良とかの吹かしが凄い事になってるなあ、と変な笑いがこみ上げてきます。あまりにも漫画漫画した設定をリアル(笑)に見せかけて漫画漫画した漫画で語るという変な入れ子構造は、何度見てもこの漫画の良くもあり悪くもある場面であるなあ、と思わされます。あまりにも漫画イズムに満ちている漫画、とでもいいましょうか。漫画であるがゆえに漫画、と言う言葉が適切な、そんな漫画漫画しいのが田口漫画の真骨頂です。その中では『ブラック・ジョーク』最初はややリアル系、あるいは一応リアル系に見える漫画だった、のに、原作の人が協力になってからというもの田口せんせ力が高まりすぎてなんかおかしい事になってるが大丈夫か? と思う瞬間も毎度です。それでもこの漫画が好きな御仁なら大丈夫だよ、と言ってくれるでしょう。そんな妙な信頼関係、どんなな玉でも残さず拾うぜという気概がこの漫画を読むには必要な気がします。つまり普通に読むと変な漫画だったりしますが、でも、漫画である事を自負してる感じが好ましいんですよ、変な気概を持って読むと。単に絵でもなく、単に文でもない。単に静止画ではなく、単に動画でもない。そういう事が漫画の一分節なわけですが、そういうのを、この巻だとP53のランオーバーを讃えてる場面の一枚絵、車椅子のランオーバーがガラス破って宙に、そして何故かワインを持って、とかを読んでると再確認できるんですよ。そういうわけでなんだか凄い漫画のような気がするのです。多分に気のせいですが。
 さておき。ランオーバーの話は毎度この漫画の無茶振りする部分であったりするわけですが、今回もランオーバー伝説に新たな一ページが刻まれます。田口せんせはこの御仁がよっぽどお好きらしく、ゆえにどんどん強キャラ設定が積み重なって狂キャラと化しており、正直これで下半身が大丈夫だったら人間じゃなくね? とも思えてしまいます。欠けたる部分があるがゆえにそれをどうにかしようと他の部分を発達させた、と見るのが普通なら常道なんですが、この漫画の場合、単にランオーバーが最初から無茶だったように思わされるから困ります。上半身を発達させただけで出来る芸当なのそれ? とか、支柱があるにしても異常精神力じゃね? とか。そんな無茶キャラランオーバーでも、下半身の自由を失った時には酒に溺れて海に、って話や、道の邪魔してる奴らに一方的に主義を通す無茶な所とかが出た時は少しほっとしました。超人ってだけじゃないんだなあ、と言う風に。まあ、今後思い出されることの無さそうな設定ですが…。
 次の巻はある意味驚愕のパペット編終了と、ある意味驚愕のジョニー編か…。今までで一番カオスになるな…。