感想 内藤泰弘 『血界戦線 5』

血界戦線 5 ─Zの一番長い日─ (ジャンプコミックス)

血界戦線 5 ─Zの一番長い日─ (ジャンプコミックス)

 大体の内容。「ザップの師匠現る! 他」。メインの話はザップ師匠がやってきた! ヤァ! ヤァ! ヤァ! です。こっちは最初バカバカ後真面目、締めは成る程やっぱりな。そんな雰囲気。最初にザップのバカさ加減を見事に見せつつ、そこに師匠到来。師匠の訳分からなさでザップがこき下ろされてたか、と思うと綺麗に締める、と思ったら本筋到来。そこから始まる特殊能力戦闘ガッチガチで、そしてそう来たか! と思ったらそう落ちますか! と納得させられる。なんともこの漫画の妙味全開過ぎて若干濃すぎるというか胸焼けすら起きる内容でした。ザップ、やれば出来る子なのはまあ今までそれなりに出番があって見せてはいるんですが、最近の回ではあんまり出番らしい出番が無くて、出てもギャグ調で、だからそういう部分がすっかり忘れられていただけに、今回のザップはザップらしさを満載しつつ、ちゃんと目立てたという珍しい回だったのかもなあ、とも。目立てたのが師匠とチェインさんのおかげだったのは確実でしたけれども。
 そして新キャラザップの師匠と弟弟子。師匠はザップが大変嫌がるだけあって大変気難しいと言うか無茶思考の持ち主で、今回のミッションの最終的な場面でかなり無理やりな方法を取る(ライブラがそれを出来ると踏んでではあるんだけれども)辺りや、足とかなくてもいいじゃない、血の力でなとなすれば、みたいな無茶な基本理念も合わさってザップはその修行時代とか大変だったんだなあ、良く足とか欠損しないで生きていれたなあ。と他人事してしまいました。いやホントキャラ立ってんなー。って思いましたよ。弟弟子? 実力者っぽいけどまだ出自とかしっかりしないからなんとも。というか師匠が無茶すぎて割り食ってるよな…。
 さておき。
 それ以外の小ネタ的一篇もありますが、これが今回の本編です。(断定) 内容はひょんな事から知り合った異形の者とのハートフルコメディです。(断定) 不可思議な子なネジの話から、じりじりとこの漫画の味わいが漏れ出てきて、伝奇でハートフルとはこうするものだ! とルビカンテ顔する内容へと転進していく辺りが肝。記憶と異形の能力とががっちりミキシングして、最後になんか胸に去来するものがありつつ、なんともハートフルに終わるという、良く考えなくても無茶苦茶な内容です。だが、それがいい。ちゃんと異形の能力を考えつつ、それを話としてどう駆動系に組み込むかを理知的に考えて、そしてそれゆえのハートフルさをかもし出す。チッ、呆れるほど有効な閑話だぜ…。ある意味、ザップ師匠話があるからこそ、こうやって出来た、というエアポケットな回でしたが、この漫画の奥行きを感じられて大変楽しい物だったと思います。こういうのがあるから、『血界戦線』は止められねえ!