感想 西園フミコ 『おみやげどうしよう?』1巻


おみやげどうしよう?(1) (コミックDAYSコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「おみやげ、いかんせん」。とある都立大学の入試広報課に席を置く基山トウコさんは、生真面目でしっかり仕事が出来るお人。素早く決断する彼女に、しかし即断出来ない問題がありました。それが、おみやげ問題!
ということで、おみやげを基点にあーだこーだする漫画。それが『おみやげどうしよう?』なのです。
この漫画の基本形というのは、素早く制定されます。1話目である『福岡のおみやげ』で完全にフォーマットが出来上がっています。出張の前に>おみやげどうしよう?>おみやげ発見>職場で振る舞う、という4つのシークエンスとしてはこれでほぼ完全といえる状態です。ならパターナリズム溢れているか、というとこれが中々バリエーションがあります。4つのシークエンスのどれを強調するかで、仕上がりが違ってくるからです。
とはいえ、出張前の段階で大体今回の積み型が決まってくるんですが、それでもおみやげどうしよう? の部分で混乱したり、おみやげ発見の段階で光るものがあったり、振る舞う段階で相手をずんどこに陥れたり、と、色々なパターンを見せ、それがワンパターンではない感じを出しています。個人的には基山さんの同僚の南条さんが、彼氏からもらったお土産が金平糖! と怒りをあらわにしていたけど、探ってみたらそれは超貴重、という回がこの巻で一番いいバリエーションであったかと思います。そういう部分も出来るんだ! やるやん!
さておき。
先に書いたように、この漫画の基礎はある程度固まっています。それを逸脱するか、それとも上手くパターンに乗るか、という部分で、パターン重視な面がそこそこあるのが、安定感に繋がっているといえましょう。しかし、それだけでは当然ありません。違うバリエーションをかましてきます。
それは、吉本マコトさんのメイン回。これが特に異彩を放ちます。なにせ、吉本さんはおみやげ反対派なのです! 一々大きくは言わないものの、公私混同はダメ! だからおみやげなど不要! と感じているのです。いきなりこの漫画の根幹を崩す発想! と戦きますが、そういう選択肢をきっちり残すということの妙味を、この漫画は見せてくれます。
それは、吉本さん登場二回目の第9話『栃木・日光のおみやげ』でのこと。
登場一回目の時は基山さんのおみやげに、ついつい舌鼓を打ってしまった吉本さんですが、その仕事ぶりは、気遣いとか分かんねえよ! という典型的仕事人間のもの。その中で、おみやげを買うことに抵抗感があった訳ですが、それが基山さんのおみやげに少し感化されたのか、この第9話ではおみやげを買う、ということはするんですよ。しかし、貰う相手のことを考えてないとしか言えない、パン一斤! こいつはダメだ! と思ったら基山さんと課長さんの発言でどうにかこうにか。それもあってか、少しだけ態度が軟化する、というお話でした。ここに、新たなおみやげ購入者軸が生まれた訳ですよ。基山さんはそこそこおみやげ買っているけど、吉本さんはそこはずぶの素人。この違いを、今後使ってくるか? という風に思う訳ですよ。新たな枠、イエスだね!
さておき。
おみやげということで当然食べ物系の漫画なんですが、お土産ということで千差万別な上に振れ幅がたくさん。個人的には博多あまびが大変気になります。あまおうの、わらびもち! ということで気になりまくります。これだけの為に博多に行きたいまでありますよ。後、岐阜のみずのいろも虹をイメージした配色らしく、見た目美しそうでよいです。みずのいろはどっかのテレビ番組に出ていた記憶がありますが、それだけ目を引くものであろうとも。これも一回生で見てみたい。そういうお土産を紹介する側面としてもきっちり立っている漫画なのです。出来ておる喃……。
とかなんとか。