感想 原案・あぶぶ:漫画・りしん 『姫騎士「姫には死んでいただきます。」』1巻


女騎士「姫には死んでいただきます。」(1) (電撃コミックスNEXT)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「逃げろ!」。フォルティーヌ王国の第三皇女ルカは危機に瀕していた。城の周りを魔王の手によって集められたオークに取り囲まれていた、のは半分の理由。もう半分は、その状況において、女性騎士団長クリンフリートが下した決断である。
曰く、汚されるくらいなら死を選ぶ! もちろん姫も!
びーくれいじー。ということで殺害されそうなその場からは脱したものの、さてこのままでは殺される。となった時、ルカ姫の前に現れたのは、なんとセーブポイント! なので、ここからやり直せるよ! という形で死に戻りの地獄が始まるのが、『姫騎士「姫には死んでいただきます。」』なのです。
死に戻りものは、リゼロからカマタリさんまで振れ幅多めに存在する既存ジャンルとなって久しくはありますが、その中にあってこの漫画がどういいのか、というと、姫君ルカさんが基本ステータスが酷い点にあります。こういうの基本悪くても普通レベルのステータスがあるか、バランス悪いけどどこかが秀でているという中でなんとか、ですが、ルカさんは姫君なので身体的ステータスは弱く、精神面も弱く、知能も弱く、と三重苦となっています。
身体面ではデブの一般兵から走って逃げられない程度。精神面は逃げきなかった時に卑屈になり過ぎて誇りとか品性とか食べ物ですか? とか言ってしまうほど。知性は今のタイミングでセーブポイント移動させたらやばいかもしれん、と言うのに後先考えずに移動してしまうレベル。どれもお粗末です。
その為、ルカさんは死にます。このタイプでは死ぬのが展開のベースではあるんですが、それにしたって死に過ぎです。帯を信じるなら、この巻で97回死んでいます。一部の場所で死に過ぎて回数稼いだところはあるんですが、それでもそこまででも結構死んでいるから可能な数です。なので、無茶苦茶すぐ死ぬ、『吸血鬼すぐ死ぬ』レベルで死ぬと理解していればいいかと思います。
その死にざまの中でも、都合二度あるVS魔法使いは凄絶です。魔法使いは長いこと牢に繋がれていたせいで、性格がドSとなっており、姫を見つけて殺すのにやたらじっくりといたぶるターンを入れるようになってしまっています。ギリギリ長く生きるレベルの火あぶりとか、生きたまま食べられるとか、笑い死にさせようとか。とかくここでの死はかなり苦しかったらしく、クリンフリートが痛みもなく殺してくれたんだ……(最初の死は捕まってクリンフリートに斬首)。ってむしろ感謝を覚えたりする辺り、どこまでサドってたのか分かろうものです。
その上で、このVS魔法使いは短くまとめられてはいるんですが、作品内の実質時間では長丁場。1戦目は様子見で死にまくりながらもどうにかスルーできましたが、2戦目はセーブポイントを移動した後でいきなり外に魔法使いが、ということで避けることがほぼ不可能。最終的に土下座までしたけど殺されてしまいます。しかし、ここでいい加減どたまに来て殺る気を出し、死にまくりながらも撃退する流れに。ここの、死に戻りで運命をつかみ取る、という部分はかなり熱かったです。単に身体能力が伴ってないせいで無駄死にな部分が多かったとはいえ、それを死に数の暴力でねじ伏せる。この爽快さ! もともとゲームらしいので、成程そうだと分かる。と言えます。
さておき。
この漫画、基本バカ話ではあるんですが、細かいところで正答を選ぶ為でのルカさんの精神性はいいなあ、と思ったりするんですよ。騎士団が跋扈する階で姫らしく毅然と王道を示したりとか、先に書いた魔法使い戦第二回でぶっ倒したらあ! となってからのきっぱりと死にまくることを決断したりする辺りとか。先に精神性は酷いといいましたが、ここぞではもしかすると皇族のそれが出ているのでは? と思ったりもします。この辺が、どういう結実になるのか、色々伏線もありますし、というのがちょっと気になるので、もっと続刊ください。
とかなんとか。