ネタバレ?感想 MOTO 『お姉様のVな事情』

お姉様のVな事情 (まんがタイムKRコミックス)
お姉様のVな事情 (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容「天は二物を与えてるけど与え方おかしない?」。飛ぶ鳥を落とす勢いの酒クズ系Vtuber、神酒シズク。酒は飲むわ、ギャンブルは打つわ、ガチャは買うわ。そんなクズ系の跳び抜けた存在の神酒シズクに対して、世の中の人は当然美少女はガワで中はおっさんだと思っていました。
 しかし、その実態は品行方正文武両道で美人の女性だったのです!
 ということで、まんがタイムきららMAX頭おかし好きかい? うん、大好きさ! というレベルで誌面を荒らしていた内の一角の単行本化となります。
 女の子におっさんの趣味をやらせると映える、という地点があるのはご存じでしょうか? 文字通り、おっさんがしていることを女の子にさせると、マイルド且つ可愛くなっていい、というもので、野球観戦から麻雀まで、幅広く施行されているものです。そしてこの漫画もその流れをくむ一作となっています。大体おっさんが中身のVtuberを美人がやれば、というのはいい着想です。実際、きらら系にも配信者系やV系が色々と出てきています。ただ、Vのガワの可愛さに対して、更に本人も、というのではあんまり意味がないのでは? という部分もあります。当然なのでは? という感じですね。
 そこに対して、この漫画が一歩踏み込んでいるのは、よりおっさんの可能性が高い部類、つまり酒クズ系Vtuberとした点です。より、おっさんである形を推し進めているのです。
 しかし、それによって現出したのは、美人の人が実際酒クズ、というむしろ今までのきらら系ではお見せ出来なかった側面でした。つまり優しい内臓『死神ドットコム』辺りからじわじわと出てきた、実生活やばい系の一角となったのです。マイルドにしていいのかそこ!?
 その神酒シズクの中の人、苦楽園ミユキさんは、現役大学生ながら先述通り飲む打つ買うの三拍子。その度合いの強さゆえ、実生活的にも学校は大丈夫なんだろうか。という老婆心がバキバキに立ち上がってきます。実際のところVtuber活動で得た資金をFXで溶かしてたりするので、大丈夫じゃないにも程があります。借金がないからマシまである。
 そんなミユキさんのあれな生活を、隣に住む高校生マリナさんが支えていく、というのが大体の筋となりますが、ここでマリナさんも意外とやばいのが浮き彫りになったりするのがこの漫画の宿痾です。描きおろしのカラーで、ミユキさんのストーカーの側面を見せていたりします。基本ミユキさん好きで甲斐甲斐しくミユキさんに尽くす子なんですが、そういう側面を出してこられるとね……。怖いよね……。
 さておき。
 とにかく美人のなんだけどVとしては酒クズの神酒シズク、というので、視聴者からは中身はおっさんだと思われているミユキさんですが、そのおっさんだろうというのに、ガチ恋勢が出てきてしまいます。それが、ミユキさんと同じ大学に通う花屋敷カンナさん。神酒シズクの中身がおっさん、だからこそだろうがっ!! というレベルに達しており、スパチャで最大限の金を連投したり(お嬢様なので家が金持ち)、自分と神酒シズクの中のおっさんとの夢小説を書いたりと、この子はどこに行くの……? というのを連打されます。
 ここで頭を混乱させるのが、神酒シズクがミユキさんである、という点です。中身がおっさんでいい、むしろ小汚いおっさんだからいい! までイっているカンナさんですが、それはそれとして事実としてはこの関係が百合になっているという訳の分からないものが生まれています。お互いがお互いのことをちゃんとは知らない、ミユキさんもスパチャの相手がおっさんが多いからカンナさんもおっさんだと思っているんだけど、というので、ここの関係性矢印がぐちゃぐちゃになっているのです。あまりにぐちゃなので整理したら、実質二人で三角関係を構築していていました。込み入り過ぎだろ! 更に、話が進むとあるアクシデントから関係性がもう一段変になる、主にカンナさんのメンタル面でおかしくなるのですが、その辺は読んで確認してください! としておきます。
 さておき。
 この漫画は1巻完結となっています。きららでも珍しい1巻終了作なのです。実際のところ、まだまだやばいネタを出していけるのでは? と思うのですが、これはこれで良かったかもしれないとも。これ以上いくと借金しないと嘘になっちゃうし……。
 とはいえ最終回のとってつけた感というか、超強引にオチをつけた感じがなんか切ないものがあります。全然この漫画のオチとしてふさわしくないじゃん! という感じの、上記したあるアクシデントの決着の話で終わってしまうのです。もうちょっと、ゆるゆるとやばいの出して!
 とはいえ、単行本でその辺はフォローが少し入っているので、それを見て私は留飲を下げたりはしました。下がらない人の方が多いでしょうが、私は下がったからいいの! と最後にぶっちゃけてしまいましょう。あの付け足し、私は嬉しかったのです、よ!
 とかなんとか。