ネタバレ?感想 鴻巣覚 『きららファンタジア』5巻

きららファンタジア 5巻 (FUZコミックス)
きららファンタジア 5巻 (FUZコミックス)

 大体の内容『カルダモン戦が意外ッ!それはめ(略)!』。結末の流れも意外ですが、そもそもリンちゃんさん(『ゆるキャン△』)が狙撃兵扱いなのがもっと意外だったのが、『きららファンタジア』5巻の持ち味なのです。
 この漫画に特異な点があるとすれば、それはまんがタイムきららキャラが戦うという一点にすべて集約されます。
 きららキャラが、戦う! このワンフレーズの無茶苦茶さが、しかしこの漫画では十分に主題として立ち上がっています。
 今までも3巻で気弾ぶっぱ系の粋の一つとして勝手に称揚してましたが、5巻はそれよりギアを上げてきた感じです。きららキャラで殴り合いはできない。なので気弾ぶっぱ系だった訳ですが、5巻ではゲーム内容の再解釈を盛り込むことで、その気弾ぶっぱ系に更なる進展を見せています。
 その部分というのがなるちゃんさん(『ハナヤマタ』)のとっておきの描写。舞を起点として、舞うごとに速度や威力、ついでに回復力が上がっていく、という解釈がぶっこまれました。ゲームではそれらバフが速攻終わるものが、ずっと継続するとどんどん強くなる、という厄介技へと変貌を遂げることに。
 これに対してカルダモンさん側は自慢の速攻でなるちゃんさんを潰せないとジリプアー。なのにその盾に花小泉杏(『あんハピ♪』)が! 原作の精神性由来の超硬度の盾となってなるちゃんさんを守る、という形に。その上で更にリンちゃんさんの魔法狙撃がかみ合って、これをカルダモンさんがどう攻略するのか、という視点に移っていったので、主人公側のするムーブじゃねえんだこれ。
 ここでのカルダモンさんの主人公メンバーへの攻略もささっと済ませちゃうのもこの漫画がバトル漫画として優れた点でしょう。持久戦になりそうなところで奥の手を出してカカッとそうならないよう動きを見せるのが見事なんです。持久戦は戦争とかならありですが、パーティレベルの戦闘ではあまりなることを推奨されないやつです。その点をこの漫画というか鴻巣覚先生もわかっているので、カカッと処理してくる訳ですが、その流れから勝敗を決するところでリンちゃんさんにきららさんが自身に芽生えたとっておきを付与する、という流れが美しいのです。ちゃんとそれを引き出す言葉が、この回のメインである『がっこうぐらし!』のはなさんから出る、というのも美しい。そして、リンちゃんさんのとっておきも凌がれたか!? となったところで最後はまさかのあの人が、という展開で終幕に向かっていきます。この形にもっていったのが本当にいい仕事。『がっこうぐらし!』を展開するならこうなるよな、という理屈がすとんと落ちてくるものでした。出来ておる喃、鴻巣覚は……。
 さておき。
 5巻序盤でカルダモン戦、そして『がっこうぐらし!』編は終わり、中盤からソルト戦、そして『Aチャンネル』編へと話は移行します。
 『Aチャンネル』編は結構ゆるい展開を続けてきます。『がっこうぐらし!』編が元ネタがシリアスなのでどうしてもシリアス雰囲気が強かった、5巻序盤でもくるみさんがなりかける、という展開があり、それが戦闘のシリアスさを更に増す要素として使われていました。
 そういう意味では、元がゆるい『Aチャンネル』ではシリアスな雰囲気は出しづらい、という感じがあります。ソルトさんの姦計、るんちゃんさんの偽物大乱舞でトオルンがぶち切れ金剛とかはしてましたが。あの漫画の暴の部分をかっちり使っては来るんよな……。
 とはいえゆるめの『Aチャンネル』編。そこにシリアスのアクセントを入れるのがソルトさん。計画性を持つタイプだ、というのが示されつつ、きららさんのきららキャラを見つける能力、パスについて考察していくという流れを見せてきます。
 これでアルシーヴさん側にきららさんのパスについて知れ渡る形になる、のかはまだ分かりませんが、その考察をもとに、きららさんと『Aチャンネル』側を分断し、きららさんに指定したクリメイトで戦いますか? と提示してくるソルトさん。その真意は一体? という感じで6巻へと橋渡しされます。気になるわ!
 さておき、この漫画がどうなるのか、というのはファンであれば一様に思うことです。なにせゲーム版『きららファンタジア』はサ終しております。サ終したゲームの漫画が、どこまで続けられるのか? 流れで今すぐに終わっても不思議ではない。ですが、もうちょっとは出来る、というのがあとがきで記されており、とりあえず第1部完くらいまではやってくれたらいいな、とは思うものの、その辺は流動的なんだろうなあ、とか思ってしまいます。いやほんと、第一部完まではやってくれなさい。それくらいにはいい漫画なんだから!
 とかなんとか。