いいか! 次にくるマンガ大賞2023ノミネートきらら4コマについて説明しておくぞ!!(ホワイトボード打)

こういうのは思いついた瞬間からやらないといけないのさ

 いい加減毎年恒例になってきた次にくるマンガ大賞ですが、今回はきらら4コマの癖の強いのがノミネートされているので、それについての解説をカカッとやっていきます。きららオタからするとF-MEGA出された花京院典明レベルで今更? ですが、分かってない人もいらっしゃるでしょうから、出来るだけつぶさに語っていけたらなと思います。表紙の方は最新巻のやつになっていますので、そこはご了承下さい。
 それではいってみましょう。

ちうね『紡ぐ乙女と大正の月』

紡ぐ乙女と大正の月 3巻 (まんがタイムKRコミックス)
紡ぐ乙女と大正の月 3巻 (まんがタイムKRコミックス)

 令和から大正にタイムトリップ! そのトリップした先での出会いが、少女たちの運命を変えていく、というのがベタ基礎ですが、それよりも大正時代で百合の華が咲き誇る漫画、それが『紡ぐ乙女と大正の月』です。
 大正ロマンと百合です。大正ロマンと百合なのです! タイムトリップガール紡さんといいとこのご令嬢唯月さんとの百合。そこに更に色んな方向性の関係性矢印が絡み合います。当然、いいとこのご令嬢なので既に許嫁もいる唯月さんですが、それに抗いたいという思いもある。でも、時代は大正。そんなのが通る訳もない。それを分かったうえでの、紡さんと唯月さんの仲はどうなっていくのか。という感じをしつつその上でタイムトリップの要素もきっちり拾う、きらら出来息子の一つです。
 基本的にコメディタッチな部分は多いものの、要所で唯月さんの閉塞感や時代背景を感じる人間関係などがあり、そことコメディのバランスが大変な妙味として立ち現れています。きらら出来息子と書きましたが、それも単なる茶化しではなく実際出来息子、しっかりした作品であります。今回ノミネートの他のきらら作品が放蕩過ぎるんで、オートで出来息子になってしまう感すらあります。まあ、実際いい作品ですから、そういう方向に置かれるのはどうしてもそうなるよね、という感じもあります。百合の方がかなりガチというか、唯月さんの家とか時代背景を考えると大変危険なんですが、それでもしっかり百合をやっているのも良い点です。でも、カタストロフしたらやだなあ。

こかむも『ぬるめた』

ぬるめた 3巻 (まんがタイムKRコミックス)
ぬるめた 3巻 (まんがタイムKRコミックス)

 こかもむでもないし、『めるめた』でもない。こかむもで、『ぬるめた』だ! と初期の頃ガチで『めるめた』と思い込んでいた私が通りますよ。
 漫画としては女の子わちゃわちゃ系4コマ、つまりあずまきよひこあずまんが大王』から綿々と連なる正統派、日常系ストロングスタイルの漫画が『ぬるめた』です。
 ガイノイドで改造される元気っ子くるみ、改造するある意味天才ちあき、ダウナーだけどわりとボケのさきな、驚かされ役でも妙な立ち位置しゆきの4人を中心に、くるみちゃんが雑に改造されたり、ガチに改造されたりする展開で場を持たせるタイプのスタンド使いです。
 日常系ですが、わりとメイン面々の個性が尖っていて、特に再三再四言いますがくるみちゃんが改造されるのが大ネタですから、それに対するリアクションを求められる漫画でもあります。改造したネタのあるあるから、そうはならんやろまでのリアクション芸が堪能できる漫画、と言えましょうか。
 しかし、巻数を重ねるとそれだけではないこの漫画の味わいというのがじわじわと滲み出してきます。個人的にはちあきさきなペアのダウナー中学時代の話がすげえ好きだと今までも何回か言っているんですが、そこのなんというかの退廃感が好きな人とは友達になりたいまであります。実際のところ、ほんのちょっとしかその成分ないんですが、それでもその成分が好きな人にはクリティカルヒットすると思います。そういう妙な振れ幅がある漫画なのです。

肉丸『ばっどがーる』

ばっどがーる 2巻 (まんがタイムKRコミックス)
ばっどがーる 2巻 (まんがタイムKRコミックス)

 意中の風紀委員長に不良になってアタックなどと、その気になっていた優さんの姿はお笑いだったぜ。というたれ!(バカ)漫画。それが『ばっどがーる』です。
 基本的に風紀委員長水鳥亜鳥さん厄介オタ優谷優さんが、認知されたいという欲をもって雑を越えてガバの不良になったら、亜鳥さんに実際認知されて勝ちまくりモテまくり。なんだけどそこまで一気に来るとは思わない優さんが亜鳥さんの過剰なファンサに過呼吸をする、というのがテンプレな漫画です。いまいちピンとこないかもですが、いきなり意中の人に認知されると混乱する、と言う部分がしっかり描写されて、且つ更に仲良くなっていけるけどちょっと許容量越えちゃってますねえ!? という困惑の部分をコメディに仕立てている、という感じでしょうか。
 これも日常系でストロングスタイルですが、意外と人間関係構築の部分がテクニカル且つ美味い。とりあえず亜鳥さんは厄介オタに好かれる性質を持つ、2巻までにメイン格の登場人物中の三人が厄介オタですし、幼稚園児の厄介オタを大量に抱える形にもなります、んだけど、本人はそこを気にしないで詰める場合が多くて困りもの。
 ファンサしまくるので耐性のない優さんとかはやたら過呼吸するし、これも厄介オタで亜鳥さんの実の妹水鳥水花さんも肉親ゆえの無自覚のファンサで脳をやられているしで、この漫画の人間関係大丈夫か!? ってなります。
 でも、優さんの親友の涼風涼さんと亜鳥さんとの距離感は段階をちゃんと踏んでいたりするので、この変な人間関係の詰め方は意図的にやられている、とも言えます。それゆえにコメディとして立ち上がる、というのが巧みですが、でもやっぱこの漫画ちょっとおかしいよな、という感じの作品です。

はも『マグロちゃんは食べられたい!』

マグロちゃんは食べられたい! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
マグロちゃんは食べられたい! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 マグロ。ご笑覧ください。
 内湾での低い可能性に賭けたマグロ釣りに成功したみさきさん。それを友達に見せるべ! と友達を呼びに行って帰ってくると、そこには人間になったキハダマグロの姿が! という完全に出オチの漫画が、『マグロちゃんは食べられたい!』なのです。
 本当にこの出オチだけで話を構築していくからこの漫画は侮れません。なぜか人間の姿になったマグロさんですが、それでも釣られたからには食べられたい! という謎の欲求でみさきさんに詰め寄ります。でも流石に人間の姿をしたのを食える訳ねえだろ! という感じでわちゃわちゃしていきます。
 姿形は人間の女の子だけど、精神性はマグロ、という謎の仕上がりの中、マグロは当然人間ではないので人間の様式を習っていくとかする漫画でもあります。その辺のずれを楽しむ漫画、だけと思えるかもしれませんが、みさきさんも魚類を食べることに対する熱量が異常で、学校に小型冷蔵庫を持ち込んだりする完全にあかん子だったりもします。そもそもマグロを釣ろうとした理由が丸一尾食いたいから、というのでレベルが違います。
 そんなメイン二人(?)があかん子で大丈夫か? となりますが、普段は魚を食うことが好き過ぎるみさきさんが、マグロなんだけど人間の姿をしている相手にはちゃんと人魚間関係を結ぼうとしたりするのがなんか変に面白いところです。人外人情物としては意外ときっちりした作りだったりするのです。出オチなのに!
 という感じで出オチをどこまで維持できるのか、という点では昨今では中々お目にかかれないやつだったりします。どうとでもなる為、むしろどうなるんだ、という惑乱するタイプです。

西畑けい『きもちわるいから君がすき』

きもちわるいから君がすき 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
きもちわるいから君がすき 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

 彼女はきもちがわるかった。
 司さんと依子さんは親友同士。なんだけど、どうにも依子さん側からの感情矢印が友情のそれとは明らかにベクトルと強度が違うな? という中での、依子さんのあれやこれやする話。男なら1発退場レベルのレッドカードを横紙破りしまくる依子さんの明日はどっちだ!
 実際問題、百合というのはこの漫画にも当てはまる適切な言葉なんですが、依子さんのムーブが一々、女の子のすることにしてもきもちわるいという、地味に中々お目にかかれないラインを攻めています。先述通り男ならレッドカード一発退場級ですが、依子さんはそれを如何に気取られないようにするか、と言うのに腐心して、一発退場をギリギリセウトしていきます。
 行動はヤバ、気持ちは純。美しさすらあるのに、でも女の子でも駄目なレベル。それを毎度見せられる感覚の面白さというのがこの漫画の土台でしょう。本当に好きなんだな、というのが理解できる、でもきもちわるい。好きな人に対して一直線の気持ちがあるのに、それから生まれる行動を他人からしてきもちわるいと言ってしまえる。明らかにラインを越えています。でも、繰り返しになりますが純なのもわかる。なので、俺に、どうしろというのだ……。というポルナレフ顔を毎度させられる。この辺がちょっと次元を超えた良さになっています。このきもちわるさを許容できるかできないか。試されます。

まとめ。そうねえ。

「きも君とマグロをノミネートに上げた人には慧眼! って言いたい。ってことでいいんじゃないの?」
「そうですね」
 というのはさておき、この中で次にくるのは普通に考えると『紡ぐ乙女と大正の月』と『ぬるめた』なんですが、『マグロちゃんは食べられたい!』と『きもちわるいから君がすき』が来たら日本が変わる気もするので、その間を取って『ばっどがーる』が次にくるのではどうかなッ! とサンタナ名づけしたシュトロハイム顔をしながら今回は終わりたいと思います。
 したらな!