まずまず前回
この項について
この項は、不定期に江島絵里『対ありでした。~お嬢様は格闘ゲームなんてしない~』のワンワードを取り上げてそれについて言及していこう、勝手な言葉をつぶやこうという項となっております。ちゃんとワード解説になっていればお慰み。
ということでそれではいってみましょう。
第14回『荒らし』
だから荒らしますね
荒らしとは、荒らす行為です。殆どトートロジーですが、実際荒らしと聞いてどういう想像をされるでしょうか? わちゃわちゃ動いてその場でけたたましい奇声を発するようなことでしょうか? 一部ゲームにはそういう奇態をするところもありますが、格ゲーとは紳士淑女のもの。そういうものではありません。
画面の中、ゲームで整然としたものをぶち壊しにする。それが荒しです。
格ゲーの理性面では、フレームなどを密に考えたり、コンボを密に考えたりと言う、大変理論的、精緻的な側面があります。ですが、これは相手がある世界。相手が理知的に付き合ってくるだけではない。理知的にやって勝てるとは限らない。
だからこそ、荒らすのです。それが格ゲーの暴力面です。精緻なものを突き崩す、圧倒的暴力! それが荒しなのです。相手がフレームとかガチガチだろうがなんだろうが荒らすのです。
荒らしタイプ、というのはわりと格ゲーでは嫌われる要素です。精緻にやっているところにうるせーしらねー! ってやるので、わがまま! みたいに思う側面があるからです。
しかし、第13話で語られる、荒らしに対するこの漫画の、というか江島絵里先生の考えは、そこに対してネガティブなものではありません。勝ちたいから、荒らすんだろ! ということです。
こういう思考、格ゲーマーゆえの思考です。普通にいって荒らすというのはなんかネガティブに囚われがちです。こっちの思惑を、適当に崩してくるように見えるからです。実際、たまてゃ先輩がそれを悪いと思っていた節もあります。そして格ゲーやってない人は特にそう思うでしょう。プロの動画とか見て、理論によって精緻にあるのが格ゲーと言うものだと、考えてしまうからです。
しかし、荒らしには荒らしの理由があります。それが、勝つという意志力です。勝ちたいと考えた時、荒らすという選択肢に行くのが、悪いことなのか? というのが今回の対ありの着地点なのです。勝つ。その為ならなんでもやる。精緻にいかないといけない場面もある。でも荒らす場面もあっていいのだと。
そう考えると、たまてゃ先輩がその荒らしにまいってしまっていたのも、今回の展開への布石だったのかとも取れます。熱帯の荒らしで精神がてきめんに折れていたたまてゃ先輩。しかし、荒らしは勝ちたいから、という理路をぶち込まれ、あたしも! と、勝ちにどん欲に荒らしていくようになっていました。最初は勝つ気ありますまで言われていたたまてゃ先輩が、こんなに活き活きと荒らしていくなんて! それだけで、格ゲーっていいな、と思わされます。これで格ゲーがいいな、となるのは格ゲーマーくらいなのが難点ですが。たまてゃ先輩の起き攻めの練度とかも、格ゲーやってないとわりとはてな? やっているとやりますわね! となるので、やはり格ゲーマーとして江島先生が仕上がり過ぎているなあ、と感じるのでした。
ということで、荒らしとは、勝つためにする選択肢。勝つ為の意志力だと理解していただけると助かります。理路だけが格ゲーではない、という側面に切り込んだのが第13話だったなあ、と書いてこの項を終えたいと思います。